[PG48] 大学の相談室における学習支援に関する研究(1)
学習支援が大学生に及ぼす効果
Keywords:学習支援、認知カウンセリング、学生教育
問 題
学習に苦手意識がある児童を対象に,認知カウンセリングの手法を用いた個別の学習支援活動を,徳島文理大学において開始した。認知カウンセリングとは,認知的な問題のある学習者に対して,その原因を探り,解決の支援を与える方法である(市川,1993)。ここでの認知カウンセリングの手法を用いた学習支援活動は,子どもへ学習支援を行い,つまずきを解消するという目的に加え,教職を志望する学生に学習支援を実習として行わせ,学習支援の力量を育成する目的もある。この認知カウンセリングによる学習支援は,大学1年生ばかりでなく,すべての学年の学生にとり初めての経験である。そこで本研究では,初めて本活動に参加した学部生の最初の4ヶ月における変化の検討を試みる。
方 法
調査方法 学習支援活動に参加している学生(1年2名,2年7名,3年8名)に対して調査を実施した。調査は,学習支援活動の開始前(2018年11月)と終了後(2019年2月)の2回実施した。
質問紙 質問紙は,7件法で回答を求める教職への志望度に関する項目(2項目),大学での学習に関する項目(12項目),学習支援に関する項目(10項目)および,自由記述での回答を求める項目 (学習支援の目標,学習支援を行う上での注意点,困難な点) から構成された。
学習支援に関する質問項目は,一般的な学習方略に関する項目,動機づけに関する項目及び,認知カウンセリングに関わる学習方略に関する項目の3つのカテゴリーから構成されていた。
結果と考察
ここでは,学習支援に関する質問項目について報告する。また,本研究における分析では,1年生は2名しかいなかったため,子どもを担当した2,3年生を分析対象とした。そのため分析対象としたのは2年5名,3年6名であった。
Table 1-3にカテゴリーごとの平均評定値とSDを示した。カテゴリーごとに,学年×時期の分散分析を行った。その結果,それぞれのカテゴリーにおいて,学年の主効果のみ有意であった(一般的な学習方略:F(1, 9)=18.82, p<.005;動機づけ:F(1, 9)=9.24, p<.05;認知カウンセリングに関する学習方略:F(1, 9)=6.82, p<.05)。Table 1-3に示されているように,3つのカテゴリーに関する力量が2年生と比べ3年生の自己評価が高いという結果であった。
この結果については1つ注意を要する点がある。それは,終了後の調査において,開始前に考えていた自分の力量は,自分が思っていたより低かったと回答した学生が,2年生については5年中4名,3年生については6名中4名であった点である。これは,当初の自らの学習支援についての力量の評価が適切にできていなかったことを示唆している。つまり,学習支援を経験することにより,力量のなさに気づいたものと考えられる。したがって,本活動を通して子どもの個別支援に必要な力量を育成していくためには,学習支援そのものに対する指導に加え,自己評価に関する指導も必要であるといえよう。
学習に苦手意識がある児童を対象に,認知カウンセリングの手法を用いた個別の学習支援活動を,徳島文理大学において開始した。認知カウンセリングとは,認知的な問題のある学習者に対して,その原因を探り,解決の支援を与える方法である(市川,1993)。ここでの認知カウンセリングの手法を用いた学習支援活動は,子どもへ学習支援を行い,つまずきを解消するという目的に加え,教職を志望する学生に学習支援を実習として行わせ,学習支援の力量を育成する目的もある。この認知カウンセリングによる学習支援は,大学1年生ばかりでなく,すべての学年の学生にとり初めての経験である。そこで本研究では,初めて本活動に参加した学部生の最初の4ヶ月における変化の検討を試みる。
方 法
調査方法 学習支援活動に参加している学生(1年2名,2年7名,3年8名)に対して調査を実施した。調査は,学習支援活動の開始前(2018年11月)と終了後(2019年2月)の2回実施した。
質問紙 質問紙は,7件法で回答を求める教職への志望度に関する項目(2項目),大学での学習に関する項目(12項目),学習支援に関する項目(10項目)および,自由記述での回答を求める項目 (学習支援の目標,学習支援を行う上での注意点,困難な点) から構成された。
学習支援に関する質問項目は,一般的な学習方略に関する項目,動機づけに関する項目及び,認知カウンセリングに関わる学習方略に関する項目の3つのカテゴリーから構成されていた。
結果と考察
ここでは,学習支援に関する質問項目について報告する。また,本研究における分析では,1年生は2名しかいなかったため,子どもを担当した2,3年生を分析対象とした。そのため分析対象としたのは2年5名,3年6名であった。
Table 1-3にカテゴリーごとの平均評定値とSDを示した。カテゴリーごとに,学年×時期の分散分析を行った。その結果,それぞれのカテゴリーにおいて,学年の主効果のみ有意であった(一般的な学習方略:F(1, 9)=18.82, p<.005;動機づけ:F(1, 9)=9.24, p<.05;認知カウンセリングに関する学習方略:F(1, 9)=6.82, p<.05)。Table 1-3に示されているように,3つのカテゴリーに関する力量が2年生と比べ3年生の自己評価が高いという結果であった。
この結果については1つ注意を要する点がある。それは,終了後の調査において,開始前に考えていた自分の力量は,自分が思っていたより低かったと回答した学生が,2年生については5年中4名,3年生については6名中4名であった点である。これは,当初の自らの学習支援についての力量の評価が適切にできていなかったことを示唆している。つまり,学習支援を経験することにより,力量のなさに気づいたものと考えられる。したがって,本活動を通して子どもの個別支援に必要な力量を育成していくためには,学習支援そのものに対する指導に加え,自己評価に関する指導も必要であるといえよう。