日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

2019年9月16日(月) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG51] 援助要請が過剰な児童に関する調査研究

通級指導教室の教員に対する調査を通して

杉岡千宏1, 橋本創一2, 熊谷亮3, 三浦巧也4, 廣野政人5, 日下虎太朗6 (1.東京学芸大学大学院, 2.東京学芸大学, 3.福岡教育大学, 4.東京農工大学, 5.東京都立中央ろう学校, 6.東京学芸大学大学院)

キーワード:援助要請、過剰、通級

目  的
援助要請が過剰な児童について現状や,その児童に対する指導の実践内容について明らかにすることを目的とする。
方  法
調査対象者
 関東地方の公立小学校446校の情緒障害等通級指導教室及び特別支援教室の教師を対象とした。回収した質問紙は197部(回収率44.2%)であった。
調査時期
 2017年7月に実施した。
調査内容
 担当している児童を援助要請の頻度によって,「ほぼ援助要請出来る」,「ときどき援助要請出来る」,「全く援助要請出来ない」,という3つに分類しそれぞれの人数について回答を求めた。また,「ほぼ援助要請出来る」児童の中で1名(以下,対象児)を任意に抽出してもらい,以下の項目を尋ねた。
1.援助要請の程度
 対象児は,(1)状況に関係なく自分で出来ることでも過剰に援助要請する(以下,過剰に援助要請する),(2)自分で試行錯誤してできない場合に援助要請する(以下,試行錯誤の上援助要請する)(3)できることできないことがわかっていて適切に援助要請する(自分の実力を鑑みて援助要請する),という3つの中から選択式で回答するように求めた。
2.対象児に対する指導の実践内容
 指導の実践内容について自由記述で回答を求めた。
倫理的配慮 調査にあたり,調査内容に関する説明や個別情報保護や研究倫理等に関する事項,調査結果を発表にて公表する可能性がある旨などを記載した文章を添付した。また,得られたデータは統計処理し,学校名や個人が特定されることはないということを明記した。そして,調査の参加に同意できない場合は,参加を辞退し調査用紙を廃棄することが可能であることを記し,調査用紙の回収をもって調査への同意が得られたものとした。
結  果
 通級教師が回答してくれた担当又は担任する児童数の総計は5070名で,その児童らの援助要請の状況は,「ほぼ援助要請出来る」児童は1880名(37.0%),「ときどき援助要請出来る」児童は2137名(42.1%),「全く援助要請出来ない」児童は1053名(20.8%)であった。
 援助要請の程度については,「(1)過剰に援助要請する」対象児は37名(22.2%)「(2)試行錯誤の上援助要請する」対象児は75名(45.2%),「(3)自分の実力を鑑みて援助要請する」対象児は54名(32.5%)であった。
 対象児に対する指導の実践内容についてKJ法で分析を行うと,環境設定,状況把握を促す支援,適切な判断を促す支援,援助要請行動の表現方法に関する支援,その他,という5つに分類された。
考  察
 「ほぼ援助要請出来る」児童は全体の4割弱であることが明らかとなった。その内訳は,(1)過剰に援助要請する児童が約2割,(2)試行錯誤の上援助要請する児童が約5割,(3)自分の実力を鑑みて援助要請する児童は約3割であった。また,過剰な援助要請を行う児童に対する指導の実践内容についてKJ法を行うと,杉岡(2017)で明らかとなっているような援助要請ができない児童の要因と類似したニーズに対する支援を実施していることが明らかとなった。援助要請を過剰にしている児童は,出現する行動は異なるが,適切に援助を求める行動ができない点では同様なのかもしれない。
 以上を踏まえると(援助要請の程度に関しては,1名を抽出して回答してもらっており,人数比がことなるため,割合を用いて捉える),適切な援助要請を行っている児童は全体の3割程度であることが示唆される。残りの7割は,ときどき援助要請する児童(約4割)や,全く援助要請しない児童(約2割),過剰に援助要請する児童(1割)である。児童が困難場面で示す行動は異なるが,行動の背景を捉えて支援していくことが求められるのではないか。