[PH25] 集団的自尊心と社会的比較志向性がネガティブな結果フィードバック後の自尊心に及ぼす影響の検討
キーワード:状態的自尊心、集団的自尊心、社会的比較志向性
人のパフォーマンス成績に影響を及ぼすものは,個人の能力だけではない。その人の属する集団のレベルも同様に影響する。レベルの高い集団に属すれば,低い集団に所属するよりも,周りの優秀な人間との比較のために,成績が下位となってしまう。自分が集団の中で劣っているというフィードバックを受ければ,自尊心が脅威に晒されると考えられるが,必ずしも全員がそうなるとは限らない。本研究では,そのような人の特性について明らかにしてゆく。
研究1 ―集団的自尊心に関して―
McFarland & Buehler(1995,study2)において,集団的自尊心の高い人(自分の所属集団と心理的結び付きが強く,その集団を誇りに思う人)は,「集団内で自分が劣っている」というフィードバックを受けてもネガティブな感情を抱かず,コンピテンスが低下しないことが示された。そこで,研究1では,同様に集団的自尊心に着目し,集団的自尊心の高い人は集団内で下位に位置付けられても自尊心が低下しないのか,調査を行った。
方 法
調査対象者
大学生を対象に質問紙調査を行った。185名から回答を得た(男性56名,女性129名)。
手続き
①渡辺(1994)の日本語版集団自尊心尺度への回答を求めた。
②1分間時間を取り,回答者に,大学生を対象にした学力テストを受けそのフィードバックを受けた場面の想像を求めた。半分の回答者には,「自分が集団の中で良い成績だった」という場面,もう半分の回答者には,「自分が集団の中で悪い成績だった」という場面を想像してもらった。
③結果を見た直後の自尊心を測定する,阿部・今野(2007)の日本語版状態自尊心尺度への回答を求めた。
分析方法
集団的自尊心(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行った。
結果と考察
集団的自尊心(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行ったが,フィードバックの主効果のみが0.1%水準で有意であった(F(1,181)=138.19,p<.001)。交互作用は見られなかったため,集団的自尊心の程度に関わらず,周りが優れていて自分が劣っている状況では自尊心が低下すると考えられる。
研究2 ―社会的比較志向性に関して―
周りとの比較である社会的比較をあまり行わない人は,レベルの高い集団に所属しても,他者と自分をあまり比較しないため,自尊心が低下しにくいのか,調査を行った。
方 法
調査対象者
大学生を対象に質問紙調査を行った。173名から回答を得た(男性32名,女性141名)。
手続き
①外山(2002)の社会的比較志向性尺度への回答を求めた
②と③に関しては, 研究1と同様に行った。
分析方法
社会的比較志向性(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行った。
結果と考察
交互作用が0.1%水準で有意であったため(F(1,169)=23.92,p<.001),単純主効果の検定を行ったところ,否定的フィードバック条件において,社会的比較志向性の低い人は高い人に比べて,有意に状態的自尊心得点が高かった(F(1,169)=46.07,p<.001)。この結果から,優れた集団内で自らが劣っている状況においても,社会的比較志向性が低い人は自尊心が低下しにくいと考えることができる。
全体考察
研究1の結果より,先行研究の結果とは異なるが,集団的自尊心の高さはあまり影響を及ぼさないと考えられる。一方,研究2の結果から,集団内で下位に位置付けられても,周りとの比較をあまり行わないことで自尊心の低下を緩和できると考えられる。
研究1 ―集団的自尊心に関して―
McFarland & Buehler(1995,study2)において,集団的自尊心の高い人(自分の所属集団と心理的結び付きが強く,その集団を誇りに思う人)は,「集団内で自分が劣っている」というフィードバックを受けてもネガティブな感情を抱かず,コンピテンスが低下しないことが示された。そこで,研究1では,同様に集団的自尊心に着目し,集団的自尊心の高い人は集団内で下位に位置付けられても自尊心が低下しないのか,調査を行った。
方 法
調査対象者
大学生を対象に質問紙調査を行った。185名から回答を得た(男性56名,女性129名)。
手続き
①渡辺(1994)の日本語版集団自尊心尺度への回答を求めた。
②1分間時間を取り,回答者に,大学生を対象にした学力テストを受けそのフィードバックを受けた場面の想像を求めた。半分の回答者には,「自分が集団の中で良い成績だった」という場面,もう半分の回答者には,「自分が集団の中で悪い成績だった」という場面を想像してもらった。
③結果を見た直後の自尊心を測定する,阿部・今野(2007)の日本語版状態自尊心尺度への回答を求めた。
分析方法
集団的自尊心(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行った。
結果と考察
集団的自尊心(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行ったが,フィードバックの主効果のみが0.1%水準で有意であった(F(1,181)=138.19,p<.001)。交互作用は見られなかったため,集団的自尊心の程度に関わらず,周りが優れていて自分が劣っている状況では自尊心が低下すると考えられる。
研究2 ―社会的比較志向性に関して―
周りとの比較である社会的比較をあまり行わない人は,レベルの高い集団に所属しても,他者と自分をあまり比較しないため,自尊心が低下しにくいのか,調査を行った。
方 法
調査対象者
大学生を対象に質問紙調査を行った。173名から回答を得た(男性32名,女性141名)。
手続き
①外山(2002)の社会的比較志向性尺度への回答を求めた
②と③に関しては, 研究1と同様に行った。
分析方法
社会的比較志向性(高,低)×フィードバック(肯定的,否定的)の2要因分散分析を行った。
結果と考察
交互作用が0.1%水準で有意であったため(F(1,169)=23.92,p<.001),単純主効果の検定を行ったところ,否定的フィードバック条件において,社会的比較志向性の低い人は高い人に比べて,有意に状態的自尊心得点が高かった(F(1,169)=46.07,p<.001)。この結果から,優れた集団内で自らが劣っている状況においても,社会的比較志向性が低い人は自尊心が低下しにくいと考えることができる。
全体考察
研究1の結果より,先行研究の結果とは異なるが,集団的自尊心の高さはあまり影響を及ぼさないと考えられる。一方,研究2の結果から,集団内で下位に位置付けられても,周りとの比較をあまり行わないことで自尊心の低下を緩和できると考えられる。