日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

2019年9月16日(月) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH40] 親密なグループ内でのいじめに対して現職教員が考えているいじめ発見方法の実態

KH CoderとRを用いたネットワーク分析から

石田俊樹1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

キーワード:いじめ、現職教員、テキストマイニング

問題と目的
 いじめは人を傷つけ,時に生命を脅かす重大事案を引き起こす。親密なグループ内でのいじめを発見することは困難であると考えられ,実際にそのような部類の事案が報告書によって報告されている。そこで本研究では,児童,生徒のグループ内で発生するいじめについて,教師がどのように発見しようと考えているのかを明らかにする。
調査及び分析の方法
調査対象:小学校,中学校,高等学校,特別支援学校に勤める現職教員19名。
調査時期:2018年12月中旬に実施。
調査手続き:関東地方A市のいじめ事案報告書を一読してもらい,「本事案のように,仲の良い生徒グループ内での様子は教師が把握しきれないことが多いと考えられます。このような時,あなたならどうすれば気づくことができると考えますか。」という質問に対しての自由記述を求めた。
分析方法:収集した記述データを分析対象とし,KH Coderを使用して共起ネットワークの作成を行った。ここではネットワークが煩雑にならないよう,名詞,サ変名詞,動詞,名詞Bを抽出して作成している。また,次数中心性の数値化を行うため, Rを用いて分析を行った。Rの分析においては,樋口(2009)より,1,共起ネットワークのR Source形式での保存,2,KH Coderフォルダーより,「Rgui.bat」の起動,3,保存したファイルを開き,次数中心性得点の抽出用コードの打ち込みという手順で行った。
結  果
 収集した記述データから総抽出語1026語,69文を分析対象として抽出した。作成した共起ネットワークをFigure1に示す。現職教員は,生活ノートやグループの観察,面談,定期的な教育相談,アンケート,家庭とのコミュニケーションから,グループ内でのいじめを発見しようと考えていることが読み取れる。次に各用語の次数中心性得点をTable1に示す。ここでは,注目すべき点として「観察」,「定期的」,「面談」といった用語が上位に出現したことが挙げられる。いじめを把握する様々な方法がある中で,現職教員は観察や定期的な面談に特に重きを置いていることがわかる。
考  察
 いじめ発見の具体的な方法の中で,観察の得点が最も高いことについて,現職教員は児童・生徒がいじめについての相談,援助の要請をすることが難儀であると感じていることが考えられるのではないだろうか。また,アンケートはいじめ発見の手段として考えられていながらも得点は低いことから,今後いじめの発見に効果的なアンケートの開発がなされることが求められると考える。