[PH42] 学校・教育現場でのセクシュアルマイノリティとカミングアウト
キーワード:LGBTQ、セクシュアルマイノリティ、学校教育
問題と目的
性別二元性や異性愛中心主義が根付く社会において,セクシュアルマイノリティが自己の性アイデンティティに向き合う時期に,学校等において周囲からどのような情報を得られるかは,他者との関係性の中においてアイデンティティクライシスに直面する場面に重要な課題となる。本研究ではセクシュアルマイノリティが抱える心理的・社会的な困難が,成長過程の中でいつ頃どこから生じるものなのか,カミングアウトの視点から考える。かつて同性愛は病気と診断され治療を試みられていたが,現在は性の多様性として,LGBTQ (性自認・指向に関するセクシュアルマイノリティの総称)が認められつつある。
2012年「自殺総合対策大綱」が閣議決定され,「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて,無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて,教職員の理解を促進する」と明記され,セクシャルマイノリティの自殺を防ぐには,教職員の理解が重要であることが指摘されている。2015年,法務省人権擁護局及び公益財団法人人権教育啓発推進センターより『あなたがあなたらしく生きるために:性的マイノリティと人権』が発行された。2010年文科省による性同一性障害の子どもに配慮を求める内容の通知の支援の対象が,2015年,セクシュアルマイノリティ一般へと拡大された。しかしながら2016年周知資料におけるQ&Aの12項目中11項目が性同一性障害に関わるものになっている現状がある。学習指導要領の改定に伴い,道徳が2019年度から中学校で正式の教科となり,いくつかの道徳教科書の中で「公平・公正・社会正義」や「友情・信頼」の項目等においてセクシュアルマイノリティについて記載されている。
人間の性の多様な状態に関する理解をすすめるため学校等の教育現場での教授の仕方が課題となっている今日,家や地域社会において社会全体で課題を検討していく姿勢が求められている。
方 法
(1)アンケート調査
調査対象:女子大学生71名(平均年齢20.36 歳)本研究は,調査協力者に研究趣旨および情報の取り扱い等について同意を得て行った。
調査内容:①同性愛や性同一性障害の認知度②印象③回答者の性自認と性志向について
(2)個別デプスインタビュー調査
調査対象:7名(レズビアン10代1名・20代1名・バイセクシュアル30 代1名・パンセクシュアル20代1名・FTX20代1名・異性愛者10代1名・セクシュアリティ不明10代1名)
調査内容:①性のあり方について,②セクシュアルマイノリティへのイメージや存在の程度,情報源へ,③ライフヒストリー等
結果と考察
アンケート調査の「セクシュアルマイノリティになるのは育てられ方の影響がある」という設問では,そう思う14%,そう思わない・どちらかといえばそう思わない85%,そのうち「セクシュアルマイノリティは生まれつきのものであり育てられ方の影響ではない」と考える人は全体の37%であり,48%は個人の経験やその他の価値観からセクシュアルマイノリティになったと考えている。
インタビュー調査において自身の性自認と性指向を軸に置いたライフヒストリーを追う中で,世の中には男と女の二つの性別だけが存在するという性別二元論や,男はこうあるべき・女はこうあるべきという考えの似た家庭環境の傾向があった。
また当事者からはセクシュアルマイノリティの話題が持ち出しにくいと感じており,自身のセクシュアリティについて話す機会がないため,カミングアウトができないという意見もあった。セクシュアルマイノリティに対する理解や認知はメディアやSNS等の媒体から広がりをみせているが,自分の周りにはいないが世の中にはいるだろうという“フィクション感”があるように思われる。
個々のセクシュアリティを尊重し,自己決定に対して情報を得られる環境の整備,二次的精神状態に注視する必要があるといえよう。学校教育現場では,専門家との情報共有をはじめ,当事者が直面している現状をよく知りセクシュアリティ情報を理解し,多様性を受け入れた上で社会への啓発教育を地域社会との連携において行うことが求められる。
参考文献
石丸径一郎(2004).性的マイノリティにおける自尊心維持-他者からの受容感という観点から-心理学研究75巻3号, 191-198
性別二元性や異性愛中心主義が根付く社会において,セクシュアルマイノリティが自己の性アイデンティティに向き合う時期に,学校等において周囲からどのような情報を得られるかは,他者との関係性の中においてアイデンティティクライシスに直面する場面に重要な課題となる。本研究ではセクシュアルマイノリティが抱える心理的・社会的な困難が,成長過程の中でいつ頃どこから生じるものなのか,カミングアウトの視点から考える。かつて同性愛は病気と診断され治療を試みられていたが,現在は性の多様性として,LGBTQ (性自認・指向に関するセクシュアルマイノリティの総称)が認められつつある。
2012年「自殺総合対策大綱」が閣議決定され,「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて,無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて,教職員の理解を促進する」と明記され,セクシャルマイノリティの自殺を防ぐには,教職員の理解が重要であることが指摘されている。2015年,法務省人権擁護局及び公益財団法人人権教育啓発推進センターより『あなたがあなたらしく生きるために:性的マイノリティと人権』が発行された。2010年文科省による性同一性障害の子どもに配慮を求める内容の通知の支援の対象が,2015年,セクシュアルマイノリティ一般へと拡大された。しかしながら2016年周知資料におけるQ&Aの12項目中11項目が性同一性障害に関わるものになっている現状がある。学習指導要領の改定に伴い,道徳が2019年度から中学校で正式の教科となり,いくつかの道徳教科書の中で「公平・公正・社会正義」や「友情・信頼」の項目等においてセクシュアルマイノリティについて記載されている。
人間の性の多様な状態に関する理解をすすめるため学校等の教育現場での教授の仕方が課題となっている今日,家や地域社会において社会全体で課題を検討していく姿勢が求められている。
方 法
(1)アンケート調査
調査対象:女子大学生71名(平均年齢20.36 歳)本研究は,調査協力者に研究趣旨および情報の取り扱い等について同意を得て行った。
調査内容:①同性愛や性同一性障害の認知度②印象③回答者の性自認と性志向について
(2)個別デプスインタビュー調査
調査対象:7名(レズビアン10代1名・20代1名・バイセクシュアル30 代1名・パンセクシュアル20代1名・FTX20代1名・異性愛者10代1名・セクシュアリティ不明10代1名)
調査内容:①性のあり方について,②セクシュアルマイノリティへのイメージや存在の程度,情報源へ,③ライフヒストリー等
結果と考察
アンケート調査の「セクシュアルマイノリティになるのは育てられ方の影響がある」という設問では,そう思う14%,そう思わない・どちらかといえばそう思わない85%,そのうち「セクシュアルマイノリティは生まれつきのものであり育てられ方の影響ではない」と考える人は全体の37%であり,48%は個人の経験やその他の価値観からセクシュアルマイノリティになったと考えている。
インタビュー調査において自身の性自認と性指向を軸に置いたライフヒストリーを追う中で,世の中には男と女の二つの性別だけが存在するという性別二元論や,男はこうあるべき・女はこうあるべきという考えの似た家庭環境の傾向があった。
また当事者からはセクシュアルマイノリティの話題が持ち出しにくいと感じており,自身のセクシュアリティについて話す機会がないため,カミングアウトができないという意見もあった。セクシュアルマイノリティに対する理解や認知はメディアやSNS等の媒体から広がりをみせているが,自分の周りにはいないが世の中にはいるだろうという“フィクション感”があるように思われる。
個々のセクシュアリティを尊重し,自己決定に対して情報を得られる環境の整備,二次的精神状態に注視する必要があるといえよう。学校教育現場では,専門家との情報共有をはじめ,当事者が直面している現状をよく知りセクシュアリティ情報を理解し,多様性を受け入れた上で社会への啓発教育を地域社会との連携において行うことが求められる。
参考文献
石丸径一郎(2004).性的マイノリティにおける自尊心維持-他者からの受容感という観点から-心理学研究75巻3号, 191-198