[PH46] 大学生活における自己効力感尺度作成の試み
キーワード:大学生活、自己効力感、退学予防
問題提起と目的
大学生活には単位取得や対人関係だけでなく,キャリアの決定,アイデンティティの確立など,多くの課題が存在しており,大学を中心にそれらの課題に取り組んでいるのが大学生活の全体像である。それらの課題に適応できず大学を退学してしまう学生もいる。退学傾向のある学生の中には,早期に介入すれば再適応できた学生もいただろう。
これまでキャリア・セルフエフィカシー尺度(小野・斎藤,2009)など,課題別の自己効力感尺度は作成されてきたが,大学生活全般に関する自己効力感尺度は作成されてこなかった。そこで本研究では大学生活における自己効力感尺度を作成する。
方 法
(1)調査協力者
関東および関西の大学生合計163名(男性57名女性106名)
(2)項目の選定
高校生活自己効力感尺度(斎藤,2018)を参考に,この分野に詳しい臨床心理士3名により30項目を選択した。基準関連妥当性としてSTAI-T,大学生活不安尺度を使用した。なお,大学生活版自己効力感尺度は5件法で測定された。
結 果
因子分析結果
天井効果と床効果を確認したところ,項目3と項目24に天井効果が見られた。これらを削除した28項目で,主因子法バリマックス回転による因子分析を実施した。
因子寄与率0.35を基準とした因子分析の結果,1因子27項目の大学生活版自己効力感尺度(累積寄与率38.91%)が作成された。以上の結果をTable 1に示す。
信頼性と基準関連妥当性
大学生版自己効力感尺度の信頼性を検討するため,α係数を求めた。その結果,α係数は0.933であった。したがって,本尺度には高い信頼性が認められた。基準関連妥当性を検討するため,大学生版自己効力感尺度とSTAI,大学生活不安尺度との妥当性係数を求めた。STAIとの妥当性係数は-.35であり,大学生活不安尺度との妥当性係数は-.56であった。したがって,本尺度には十分な妥当性が認められた。
考 察
大学生版自己効力感尺度の標準化について
因子分析の結果から,信頼性と妥当性を備えた大学生版自己効力感尺度の作成は成功したと考えられる。ただし男女差に偏りがあることと,やや調査人数が少ない点は本尺度の限界である。
本尺度の展望
大学生活に不全感を覚えている群への対応は大学の担任や学生相談室が担当していたが,それに先立つスクリーニングや効果研究に役立つ質問紙は乏しかった。
本尺度は27項目と簡便で,学生相相談室のスクリーニングデータ,そして介入効果を確認する質問紙として有効と考えられる。
そこで,今後の展望として,大学生活の自己効力感尺度を応用し,学生相談室と連携して,自己効力感が低い学生に介入し,効果を検証することが考えられる。
大学生活には単位取得や対人関係だけでなく,キャリアの決定,アイデンティティの確立など,多くの課題が存在しており,大学を中心にそれらの課題に取り組んでいるのが大学生活の全体像である。それらの課題に適応できず大学を退学してしまう学生もいる。退学傾向のある学生の中には,早期に介入すれば再適応できた学生もいただろう。
これまでキャリア・セルフエフィカシー尺度(小野・斎藤,2009)など,課題別の自己効力感尺度は作成されてきたが,大学生活全般に関する自己効力感尺度は作成されてこなかった。そこで本研究では大学生活における自己効力感尺度を作成する。
方 法
(1)調査協力者
関東および関西の大学生合計163名(男性57名女性106名)
(2)項目の選定
高校生活自己効力感尺度(斎藤,2018)を参考に,この分野に詳しい臨床心理士3名により30項目を選択した。基準関連妥当性としてSTAI-T,大学生活不安尺度を使用した。なお,大学生活版自己効力感尺度は5件法で測定された。
結 果
因子分析結果
天井効果と床効果を確認したところ,項目3と項目24に天井効果が見られた。これらを削除した28項目で,主因子法バリマックス回転による因子分析を実施した。
因子寄与率0.35を基準とした因子分析の結果,1因子27項目の大学生活版自己効力感尺度(累積寄与率38.91%)が作成された。以上の結果をTable 1に示す。
信頼性と基準関連妥当性
大学生版自己効力感尺度の信頼性を検討するため,α係数を求めた。その結果,α係数は0.933であった。したがって,本尺度には高い信頼性が認められた。基準関連妥当性を検討するため,大学生版自己効力感尺度とSTAI,大学生活不安尺度との妥当性係数を求めた。STAIとの妥当性係数は-.35であり,大学生活不安尺度との妥当性係数は-.56であった。したがって,本尺度には十分な妥当性が認められた。
考 察
大学生版自己効力感尺度の標準化について
因子分析の結果から,信頼性と妥当性を備えた大学生版自己効力感尺度の作成は成功したと考えられる。ただし男女差に偏りがあることと,やや調査人数が少ない点は本尺度の限界である。
本尺度の展望
大学生活に不全感を覚えている群への対応は大学の担任や学生相談室が担当していたが,それに先立つスクリーニングや効果研究に役立つ質問紙は乏しかった。
本尺度は27項目と簡便で,学生相相談室のスクリーニングデータ,そして介入効果を確認する質問紙として有効と考えられる。
そこで,今後の展望として,大学生活の自己効力感尺度を応用し,学生相談室と連携して,自己効力感が低い学生に介入し,効果を検証することが考えられる。