[P199] グループ文化としての教育機会確保法
権利と葛藤の行方
キーワード:グループ文化、逸脱メンバー、教育機会確保法
「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下,教育機会確保法,2017年施行)の意義と課題を精神分析的な観点から明らかにする。教育機会確保法は,不登校児童生徒に対して「休養の必要性」及び学校外での多様な学習活動を認めている。一方で,不登校はいまだ中心的な教育的課題であり続けている。ビオン,W.R.(1961)による精神分析的集団論の立場からみると,教育機会確保法は,公教育と「逸脱メンバー deviant member」としての不登校当事者との間で高められた葛藤を緩和する「グループ文化 group culture」の役割を担っていると考えられる。グループ文化の目的は逸脱メンバーの抑制とグループへの統合にある。この観点からみれば,教育確保法の今後の課題は,学校教育と学校外教育とを,公教育の目的を共有する異なる達成手段として再度明確に位置づけることにあるといえる。