08:15 〜 08:30
[T1-O-2] 高知県四万十帯興津メランジュで発見された沈み込みプレート境界断層
キーワード:付加体、フロアスラスト、断層岩、沈み込み帯
【はじめに】付加体深部における底付け付加作用は大規模なデュープレックス構造を成すことで特徴づけられ,そのような深部では堆積物が岩石化し,地震発生帯を成すと考えられている.そのため,陸上付加体におけるプレート沈み込み帯の断層の調査はいくつか行われており(Rowe et al., 2005など, Geology),デュープレックス構造の上部のルーフスラストではシュードタキライトを含む震源断層の報告がされている(Ikesawa et al., 2003など, Geology).一方,活動的プレート境界そのものであるフロアスラストは震源域であるにもかかわらず未調査のままだった.これはフロアスラストの陸上断層露頭が未発見であったことに起因した.本研究では,興津メランジュの下位の地層境界付近にプレート境界のフロアスラストの断層露頭を発見することができたため報告する.
【地質概要】本断層露頭は四国四万十帯興津メランジュの下位地層境界に露出し、興津メランジュは黒色頁岩基質中に玄武岩やチャートなどの遠洋性堆積物のブロックを含むテクトニックメランジュであり,玄武岩層は側方延長を追うことができ、シート状の海洋底層序を複数回繰り返しており,興津メランジュが大規模なデュープレックス構造を持つ底付け付加体であることを示している.ビトリナイト反射率から求められた最高被熱温度は240~270℃(Sakaguchi, 1996, Geology)であり,地震発生温度領域を経験した地質体である.また興津メランジュの上位の地層境界であるルーフスラストからはシュードタキライトが報告されており,震源断層であったことが示唆されている(Ikesawa et al., 2003, Geology).
【結果と考察】断層コアの厚さは約15mであり,平均方位はN17°E79°Wであり,興津メランジュの一般的な方位であるN50°E71°Wとやや斜交するが、興津メランジュの黒色頁岩の劈開面の方向は,フロアスラストに近づくにつれて断層の方位と平行になる.これは断層近傍のメランジュ面構造はフロアスラストの断層活動の影響を受けているものだと考えられる.断層コアの外側にも変形が及んでおり、上盤側である興津メランジュでは,フロアスラストの走向と平行に幅 50 cm 未満の小断層が断層変形帯の境界から約10mまでに多数見られる.一方で下盤側の中村層ではこのような小断層はみられない.これは断層の剪断作用による変形は上盤と下盤で非対称であり,上盤側の興津メランジュでのみ被っていると考えられる.
断層コアの変形様式の違いからHigh sheared shale zone,Cataclasite zone,Ultra cataclasite zoneの三つの破砕帯に区分した.High sheared shale zoneは興津メランジュの一般的な頁岩に比べて,断層の剪断作用により層がより細かく剪断された頁岩から成る破砕帯である.その他見られる特徴として,層平行剪断に伴う微褶曲が多く確認できたが,頁岩の劈開面を保っているHigh sheared shale zoneは三つに区分した破砕帯の中で破砕の度合いは最も小さいと考えられる.
Cataclasite zoneは幅5cm未満の黒色のカタクレーサイトとブーディンやピンチアンドスウェルが発達した砂岩が互層を成している破砕帯で,黒色頁岩基質起源のカタクレーサイトには丸みを帯びた砂岩岩片を多く含んでいる.この破砕帯は,地下深部で剪断応力を被る以前は母岩の興津メランジュは黒色頁岩と砂岩ブロックが互層を成しており,断層の剪断作用が生じた際に比較的破壊強度の弱い黒色頁岩の部分にのみ破壊が集中した結果,砂岩は破砕をほぼ受けず,特徴的なカタクレーサイトと砂岩の互層を形成したと考えられる.
Ultra cataclasite zoneは石英脈や方解石脈を多く産する強変形帯であり、ウルトラカタクレーサイトに含まれる岩片は円形~亜円形で0.1mm未満の粒径であり,断層摩擦により細粒化したものと考えられる.また緑泥石や沸石などの低温鉱物を多く含み,これは断層沿いの流体による変質作用によるものと考えられる.SEM-EDS観察の結果,外形が湾曲した石英粒子が確認された.これは石英が摩擦熱によって溶融して変形したためであると考えられる.石英は1730℃で融解するとされており(前原, 2002, 電学論),フロアスラストが高速すべりしたものと考えられる.
震源域のプレート境界であるフロアスラストは,厚さ15m程度とメランジュ等に比べて非常に薄く,地震性高速剪断をした断層であることがわかった.
【地質概要】本断層露頭は四国四万十帯興津メランジュの下位地層境界に露出し、興津メランジュは黒色頁岩基質中に玄武岩やチャートなどの遠洋性堆積物のブロックを含むテクトニックメランジュであり,玄武岩層は側方延長を追うことができ、シート状の海洋底層序を複数回繰り返しており,興津メランジュが大規模なデュープレックス構造を持つ底付け付加体であることを示している.ビトリナイト反射率から求められた最高被熱温度は240~270℃(Sakaguchi, 1996, Geology)であり,地震発生温度領域を経験した地質体である.また興津メランジュの上位の地層境界であるルーフスラストからはシュードタキライトが報告されており,震源断層であったことが示唆されている(Ikesawa et al., 2003, Geology).
【結果と考察】断層コアの厚さは約15mであり,平均方位はN17°E79°Wであり,興津メランジュの一般的な方位であるN50°E71°Wとやや斜交するが、興津メランジュの黒色頁岩の劈開面の方向は,フロアスラストに近づくにつれて断層の方位と平行になる.これは断層近傍のメランジュ面構造はフロアスラストの断層活動の影響を受けているものだと考えられる.断層コアの外側にも変形が及んでおり、上盤側である興津メランジュでは,フロアスラストの走向と平行に幅 50 cm 未満の小断層が断層変形帯の境界から約10mまでに多数見られる.一方で下盤側の中村層ではこのような小断層はみられない.これは断層の剪断作用による変形は上盤と下盤で非対称であり,上盤側の興津メランジュでのみ被っていると考えられる.
断層コアの変形様式の違いからHigh sheared shale zone,Cataclasite zone,Ultra cataclasite zoneの三つの破砕帯に区分した.High sheared shale zoneは興津メランジュの一般的な頁岩に比べて,断層の剪断作用により層がより細かく剪断された頁岩から成る破砕帯である.その他見られる特徴として,層平行剪断に伴う微褶曲が多く確認できたが,頁岩の劈開面を保っているHigh sheared shale zoneは三つに区分した破砕帯の中で破砕の度合いは最も小さいと考えられる.
Cataclasite zoneは幅5cm未満の黒色のカタクレーサイトとブーディンやピンチアンドスウェルが発達した砂岩が互層を成している破砕帯で,黒色頁岩基質起源のカタクレーサイトには丸みを帯びた砂岩岩片を多く含んでいる.この破砕帯は,地下深部で剪断応力を被る以前は母岩の興津メランジュは黒色頁岩と砂岩ブロックが互層を成しており,断層の剪断作用が生じた際に比較的破壊強度の弱い黒色頁岩の部分にのみ破壊が集中した結果,砂岩は破砕をほぼ受けず,特徴的なカタクレーサイトと砂岩の互層を形成したと考えられる.
Ultra cataclasite zoneは石英脈や方解石脈を多く産する強変形帯であり、ウルトラカタクレーサイトに含まれる岩片は円形~亜円形で0.1mm未満の粒径であり,断層摩擦により細粒化したものと考えられる.また緑泥石や沸石などの低温鉱物を多く含み,これは断層沿いの流体による変質作用によるものと考えられる.SEM-EDS観察の結果,外形が湾曲した石英粒子が確認された.これは石英が摩擦熱によって溶融して変形したためであると考えられる.石英は1730℃で融解するとされており(前原, 2002, 電学論),フロアスラストが高速すべりしたものと考えられる.
震源域のプレート境界であるフロアスラストは,厚さ15m程度とメランジュ等に比べて非常に薄く,地震性高速剪断をした断層であることがわかった.