128th JGS: 2021

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Oral

T1.[Topic Session]New perspectives of subduction zone earthquake dynamics through experiments across-scales

[1ch101-04] T1.[Topic Session]New perspectives of subduction zone earthquake dynamics through experiments across-scales

Sat. Sep 4, 2021 8:00 AM - 9:00 AM ch1 (ch1)

Chiar:Masa Kinoshita

8:30 AM - 8:45 AM

[T1-O-3] 3D rheological heterogeneity of northeastern Japan from postseismic deformation following the 2011 Tohoku-oki earthquake by dense geodetic observations and nonlinear rheology of rocks

*Jun Muto1, Sambuddha Dhar1, James D. P. Moore2,3, Yusaku Ohta4, Takeshi Iinuma5, Satoshi Miura4 (1. Dept. Earth Sci., Tohoku University, 2. Earth Observatory of Singapore, Nanyang Technological University, 3. Inst. Geophysics, Victoria University of Wellington, 4. Dept. Geophysics, Tohoku University, 5. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (Jamstec))

Keywords:2011 Tohoku-oki earthquake, post-seismic deformation, rhelogoy, dense observations

2011年に発生した東北沖地震(Mw9.0)は、稠密な観測網下で起こった超巨大地震であり、様々な変動が詳細に記述された。その中でも、地震後の地殻変動である余効変動は、稠密GNSS観測網によって現在も詳細に記録されている。余効変動の主要なメカニズムは以下の3種である(Wang et al., 2012Nature):地震による応力変化が上部マントルの流動を引き起こす粘弾性緩和、震源断層の浅部・深部などのゆっくりすべりである余効すべり、次の地震につながるプレートの固着。粘弾性緩和はアセノスフェアの流動特性を、余効すべりはプレート境界の摩擦特性を反映する。観測される余効変動において両者を丁寧に区分することで、地下の流動・摩擦(レオロジー)特性の評価に加え、次の地震への備えとなるプレート固着の評価が可能になる。 これまでの測地学的観測では、本震1年後に観測された海底西向きの変動が、おもに粘弾性緩和によって説明できること(Sun et al., 2014Nature)や、福島・岩手沖での余効すべりが本震の大すべり域と棲み分けていること(Iinuma et al., 2016Nat. Commun.)が明らかになってきた。また、東北大学は、震源直上を通る宮城―山形に、GEONETを上回る、観測点距離が10 km以下の超稠密な東西2次元観測網を有している。これらの観測網は、余効変動初期における鳴子火山での局所的な沈降を観測(Muto et al., 2016GRL)するなど、稠密観測と岩石の変形特性(べき乗流動特性および速度状態依存摩擦構成則)に基づく数値解析から東北日本弧の不均質なレオロジー構造を解明することに貢献し、震災後の石巻の隆起が深部での余効すべりに起因することが明らかになった(Muto et al., 2019Sci. Adv.)。 1964 年アラスカ地震(Mw9.2)では現在も明瞭な余効変動が継続しており、東北沖地震の余効変動も今後数十年は続くと予想される。しかし、現在、日本海溝周辺において余効変動の影響が弱くなり、2021年3月には1978年宮城県沖地震(Mw7.2)の固着域西部を破壊するような中規模地震(MJMA 6.9)も起こっている。震災時に沈降した太平洋沿岸部は、隆起を続けているものの、本震時の沈降量の大きい宮城や岩手沿岸部は未だに震災前の地盤高さを回復しておらず、中規模地震でも津波の被害が想定される。したがって、3次元の稠密余効変動解析による将来の詳細な隆起過程の評価が必要となっている。 本研究は、実験岩石学的に報告されているカンラン石のべき乗流動則(Karato and Jung, 2003Philos. Mag.)および速度強化摩擦則を含んだ応力依存の余効変動モデルを構築し、稠密観測から得られる2016年までの3次元余効変動場およびその時系列を統合的に再現することを目的とする。このモデルは、境界積分法を用いて余効変動の主要機構である粘弾性緩和と余効すべり、さらにはそれらの力学的相互作用を評価することができる手法を採用している(Barbot et al., 2017BSSA)。観測を再現するために得られた地下の粘性構造およびプレート境界の摩擦特性は、島弧に沿って不均質性を持つ。特に、2測線での稠密観測から、宮城および福島での前弧の粘性構造とプレート境界での余効すべりの発生状況の違いが明らかになった。宮城では、前弧側の顕著な隆起は震源深部延長での余効すべりによるが、福島周辺では浅部での余効すべりと厚い前弧の高粘性領域での変形が緩慢な隆起を引き起こしている。前弧の高粘性領域(コールドノーズ)は宮城より福島の方が厚く、より内陸部まで前弧域の粘性は高い。宮城と福島の粘性構造の違いは、両地域の地質構造(白亜紀阿武隈帯と新第三系堆積岩類)だけでなく、地温構造(Muto et al., 2013GRL)や地震発生層の下限深度(D90: Omuralieva et al., 2012Tectonophysics)などの空間変化とも調和的である。S−netによる地震波異方性の観測から、前弧マントルウェッジには、全域において、異方性を持たず流動しない高粘性領域があることが知られている(Uchida et al., 2021Nat. Commun.)。本研究では、稠密な余効変動観測と岩石のレオロジー特性を考慮した3次元解析により、そのようなマントルウェッジの対流パターン(コールドノーズの形状)が島弧にそって不均質性を持つことを明らかにした。このような粘弾性構造と余効すべりのパターンは、観測される余効変動場だけでなく、沿岸部の今後の隆起予測にも影響を及ぼす。発表では、これらの3次元余効変動解析と沿岸部の隆起予測についても紹介する。