日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

T4.[トピック]二次改変された過去の弧-海溝系の復元:日本およびその他の例

[1ch401-07] T4.[トピック]二次改変された過去の弧-海溝系の復元:日本およびその他の例

2021年9月4日(土) 08:00 〜 10:30 第4 (第4)

座長:磯崎 行雄、青木 一勝

08:00 〜 08:15

[T4-O-1] 甲府花崗岩中のジルコン微量元素組成:堆積物混入指標の確立

*澤木 佑介1、坂田 周平1、大野 剛2 (1. 東京大学、2. 学習院大学)

キーワード:甲府花崗岩、ジルコン、微量元素

砂岩中に含まれる砕屑性ジルコンの年代分析は、既に消失した地質体の年代も提供しうるため、日本列島の構造発達史の解明において大きな役割を果たしてきた(Aoki et al., 2012; Isozaki et al., 2017など)。これに加えて、ジルコンを供給した母岩組成などに関する情報も得る事ができれば、日本列島形成史の理解のさらなる深化が期待できる。ジルコンの酸素同位体比やHf同位体比などから、ジルコンを晶出したマグマ(母岩)が取り込んだ堆積物量などを見積もる手法が提案されている(Valley et al., 2005など)。この原理を砕屑性ジルコンに応用して、21億年前頃から堆積物を取り込んだ花崗岩マグマの比率が増加した事などが主張されている(Iizuka et al., 2013)。私たちはジルコン中の微量元素濃度からも、同様に母岩に関する情報を引き出したいと考えている。ジルコン中のREE濃度をマグマが取り込んだ堆積岩種の指標とすべく為された先行研究もあるが(Hoskin and Ireland, 2000など)、現状ではその有用性は確立されていない。これは分析に用いられた各々の花崗岩において初生メルトや取り込む堆積岩の組成、晶出鉱物が多様であることに一因があると考えられる。そこで初生メルトが似通っており、堆積物混入量が少しずつ異なる花崗岩を用いて、堆積物の混入量に応じて増加する微量元素を特定したいと考えている。 甲府花崗岩体は伊豆-ボニン-マリアナ弧(IBM弧)の北延に位置し、白亜紀から古第三紀の付加体である四万十帯に貫入している。甲府花崗岩体を構成する花崗岩は芦川-藤野木、笹子、塩平、三宝、広瀬、瑞牆、昇仙峡の7つ程度に細分され(Saito and Tani, 2017)、15~10Maの形成年代を持つ(Sawaki et al., 2020)。甲府花崗岩体の花崗岩はIBM弧下で形成された初生マグマが四万十帯の堆積物を取り込んだ混合マグマから形成されたと考えられている。各岩体における堆積物混入量は全岩の放射性起源Sr同位体比から見積もられており、おおよそ上述の順に堆積物の混入量が増加し、瑞牆岩体や昇仙峡岩体が最も堆積岩を取り込んで形成された花崗岩と見込まれている(Saito and Tani, 2017)。そのため甲府盆地周縁に産する花崗岩は本研究目的に対して最適である。 採取した花崗岩から粉末試料を作成した後にガラスビードを作成し、主要元素の全岩組成はXRF(RIX2100)にて測定した。また、ガラスビードを用いて全岩の微量元素濃度をLA-ICP-MSにて測定した。また、花崗岩から分離したジルコンをEpo-fix樹脂に埋め込み、学習院大学のLA-ICP-MSを用いて各ジルコン内の微量元素濃度を測定した。本発表では堆積岩混入指標としてよく使用されるNbやTa, Thなどの元素について、薄片内に見られる副次成分鉱物の晶出状況などを加味しながら有用性を議論する。砕屑性ジルコンに応用する際の鍵はジルコンの晶出温度とゼノタイム置換の度合いである事も明らかになりつつあり、これらが弧-海溝系の復元研究の一助となれば幸いである。