11:00 〜 11:15
[R6-O-2] コロナ禍のジオツーリズム~フィールドの強み:山陰海岸ジオパークの例~
キーワード:ジオパーク、観光、新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中のツーリズムに大きな影響を及ぼしている.ジオパークにおいても,様々な活動が制約されており,観光業の多くも,様々な対応に迫られている.一方で,山陰海岸ジオパークのいくつかの活動団体では,その入り込み数が大きく減っていなかったり,増えていたりすることが分かった.また,客層にも変化が見られた.なぜ観光客数が減らない,あるいは増えるサイトや団体があったのかを議論する.
<日本海拡大を記録した山陰海岸ジオパーク>
山陰海岸ジオパークでは,構造発達史を主に3つのステージに区分して説明しており,エリア内には,大陸の時代,日本海形成の時代,日本列島形成後から現在までの地層や岩石が分布し,各所でそれらが美しい景観を形作っている.これらを舞台に,各地で,フィールドでのガイドや自然を生かしたアクティビティがガイド団体や企業等によって提供されている.特に,海岸部や山間部の渓谷などを利用したアクティビティが盛んなのが特徴である.
<コロナ禍のジオツーリズム~フィールドの強み>
コロナ禍に見舞われた2020年度は,各地で入り込み客数の減少がみられた.例えば山陰海岸ジオパークの世界的価値である豊岡市玄武洞公園の案内者数を見ると,2019年度17470人から2020年度には5359人と31%まで落ち込んだ.玄武洞の地域別案内者数を両年度について比較すると,2020年度の関東からの来訪者は前年の18%,近畿からの来場者が前年の49%に減少している.玄武洞公園のある兵庫県内からの来訪者数を見ると,前年の63%と,ほかに比べると小さい.案内者の「個人旅行」「団体旅行」を比較すると,2020年度の団体客は前年の18%に減少している.一方で,個人客は前年の52%と,団体客に比べると減少が小さい.観光客が団体旅行や県境をまたぐ移動を敬遠した可能性がある.次に,海で行われているアクティビティに注目すると,例えば兵庫県豊岡市竹野町で行われているジオカヌーのうち,海の家メリ(株式会社マザーアース)が提供しているカヌーの利用者数は,2か月間自粛により営業を停止していたにもかかわらず,2019年度2333人から2020年度2448人と増加している.これは,ジオカヌーが野外であるのに加え,個人間の距離は基本的に3m以上離れており,加えてカヌーという乗り物の性質上基本的に個人客のみであり,安心感につながった可能性がある.さらに,兵庫県内からの来訪者が増えた(最も多いのは大阪府),今まで海外や沖縄などでカヌーをやっていた方がここに変更した,などの証言(海の家メリ宮崎氏へのヒアリングより)もあり,近距離移動の安心感が利用者を増加させた背景にあることが考えられる.同じく船の大きさによる制限で個人客がメインターゲットになる,小型漁船を利用した海上タクシーでは,新温泉町三尾の但馬御火浦海上タクシーで2020年度は2019年度の85%,香美町香住区のかすみ海上GEO TAXIでは,2020年度は2019年度の70%と,減りが少ない.これも,個人客利用の安心感により観光客数の減少が小さかったものと考えられる.このように,ソーシャルディスタンスが確保され,また個人や家族,友人など個人旅行で楽しめるフィールドでのアクティビティは,観光客に安心感を与え,コロナ禍,そしてwithコロナの中で観光客の維持や増加に寄与できる可能性がある.ジオパークで行われるジオツーリズムの多くは野外の地質資源や風景,自然,人の暮らしをその対象としており,ジオパークでのツーリズムは工夫次第で持続的に継続できる可能性がある.
<日本海拡大を記録した山陰海岸ジオパーク>
山陰海岸ジオパークでは,構造発達史を主に3つのステージに区分して説明しており,エリア内には,大陸の時代,日本海形成の時代,日本列島形成後から現在までの地層や岩石が分布し,各所でそれらが美しい景観を形作っている.これらを舞台に,各地で,フィールドでのガイドや自然を生かしたアクティビティがガイド団体や企業等によって提供されている.特に,海岸部や山間部の渓谷などを利用したアクティビティが盛んなのが特徴である.
<コロナ禍のジオツーリズム~フィールドの強み>
コロナ禍に見舞われた2020年度は,各地で入り込み客数の減少がみられた.例えば山陰海岸ジオパークの世界的価値である豊岡市玄武洞公園の案内者数を見ると,2019年度17470人から2020年度には5359人と31%まで落ち込んだ.玄武洞の地域別案内者数を両年度について比較すると,2020年度の関東からの来訪者は前年の18%,近畿からの来場者が前年の49%に減少している.玄武洞公園のある兵庫県内からの来訪者数を見ると,前年の63%と,ほかに比べると小さい.案内者の「個人旅行」「団体旅行」を比較すると,2020年度の団体客は前年の18%に減少している.一方で,個人客は前年の52%と,団体客に比べると減少が小さい.観光客が団体旅行や県境をまたぐ移動を敬遠した可能性がある.次に,海で行われているアクティビティに注目すると,例えば兵庫県豊岡市竹野町で行われているジオカヌーのうち,海の家メリ(株式会社マザーアース)が提供しているカヌーの利用者数は,2か月間自粛により営業を停止していたにもかかわらず,2019年度2333人から2020年度2448人と増加している.これは,ジオカヌーが野外であるのに加え,個人間の距離は基本的に3m以上離れており,加えてカヌーという乗り物の性質上基本的に個人客のみであり,安心感につながった可能性がある.さらに,兵庫県内からの来訪者が増えた(最も多いのは大阪府),今まで海外や沖縄などでカヌーをやっていた方がここに変更した,などの証言(海の家メリ宮崎氏へのヒアリングより)もあり,近距離移動の安心感が利用者を増加させた背景にあることが考えられる.同じく船の大きさによる制限で個人客がメインターゲットになる,小型漁船を利用した海上タクシーでは,新温泉町三尾の但馬御火浦海上タクシーで2020年度は2019年度の85%,香美町香住区のかすみ海上GEO TAXIでは,2020年度は2019年度の70%と,減りが少ない.これも,個人客利用の安心感により観光客数の減少が小さかったものと考えられる.このように,ソーシャルディスタンスが確保され,また個人や家族,友人など個人旅行で楽しめるフィールドでのアクティビティは,観光客に安心感を与え,コロナ禍,そしてwithコロナの中で観光客の維持や増加に寄与できる可能性がある.ジオパークで行われるジオツーリズムの多くは野外の地質資源や風景,自然,人の暮らしをその対象としており,ジオパークでのツーリズムは工夫次第で持続的に継続できる可能性がある.