13:45 〜 14:00
[R5-O-4] 長野県東部、東信地域の地質・地質構造と新たに見出された活断層について
キーワード:活断層、第四紀地質、地質図、歴史地震
長野県東部、フォッサマグナ地域に含まれる東信地域では,層序に関する研究,火山活動とそれに伴う砕屑物に関する研究は蓄積されてきたが,詳細な地質構造に重きをおいた研究は少なく,活断層をはじめとする活構造の議論もされてきていないことが課題のひとつである.渡邉ほか(2019)での上田盆地,渡邉ほか(2020)での八重原・御牧ケ原台地と佐久盆地を対象とした地表地質踏査から作成した地質図を本発表において統合・再編集した. 東信地域の地質体の分布および構造について報告するとともに, 第四紀に形成された地質構造,とくに活断層について議論する.
研究地域には,中生界および新第三系以降の地質体が存在する.研究地域の基盤岩として,中生界の秩父帯付加体および中新統の火山岩・火砕岩・堆積岩・貫入岩が分布し,それらを第四系が覆う.第四系は,陸成層および火山砕屑物からなる小諸層群,周囲の第四紀火山が起源の火山岩・火山砕屑物・山体崩壊堆積物などによって構成される.また,平野部には上記地質体を覆う上小湖成層および段丘堆積物などの上部更新統以降の地層が分布する.
研究地域において第四系に変位を与える18例の断層および断層群,2例の褶曲,1例の撓曲について構造を検討した.見出された第四紀断層の多くは盆地や台地の縁辺部に沿って見出され,現在の地形が第四紀の構造運動を強く反映していることが浮き彫りになった. さらに,第四紀断層のなかには,段丘堆積物などの後期更新世以降の地層に変位を与えるものが見出された.とくに,上田盆地東縁部では,中新統が河床礫に衝上する逆断層露頭のガウジ帯に含まれる木片から,156±21yrBPのきわめて若い14C年代値(暦年較正)が得られた.この年代値を踏まえると,1791年7月23日の地震(松本で被害),1791年9月13日の地震(信濃国で被害)が該当し,歴史地震の際に活動した可能性がある(渡邉ほか 2020).
これらの地質構造は,東信地域の地形形成に関与する第四紀以降の構造運動が存在したこと,さらに後期更新世から完新世にかけての最新期の断層運動があったことを示している.本研究の結果は広域的かつ詳細な地質図の作成とともに,東信地域において従来不明とされてきた地震に直結する活断層の存在が明らかとなった.
【引用(図表内も含む)】
(1)新井房夫 1993, 火山灰考古学.古今書院,264p.
(2)本間不二男 1931, 信濃中部地質誌. 古今書院,331p.
(3)飯島南海夫・石和一夫・甲三男・田口 朝男 1956, いわゆる“塩川層”の地質.地質学雑誌, 62, 734, 622-635.
(4)飯島南海夫・山辺邦彦・甲田三男・石和一夫・小宮山孝一 1969, 千曲川上流地方の第四紀地質(その3)―とくに上小湖成層について―. 地球科学, 23, 3.
(5)岩崎敏典・指田勝男・猪郷久義 1989, 関東山地北西部,長野県南佐久郡北相木-川上地域の中生界.地質学雑誌,95,10,733-753.
(6)河内晋平 1974, 蓼科山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,128p.
(7)河内晋平・荒牧重雄 1979, 小諸地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,39p.
(8)北八ヶ岳サブグループ 1988,八ヶ岳山麓の鮮新・下部更新統―特に八千穂層群について―.地団研専報, 34, 15-52.
(9)宮坂晃・狩野謙一 2015, 北部フォッサマグナ南東部,小諸盆地の鮮新世~中期更新世のテクトニクス.静岡大学地球科学研究報告, 42, 63-83.
(10)長野県地学会 1957,1/20万長野県地質図説明書.
(11)西来邦章・高橋康・松本哲一 2013, 浅間・烏帽子火山群の火山活動場の変遷. 地質学雑誌, 119, 474-487.
(12)野村哲・海老原充 1988,群馬県西部新生代火山類のK-Ar年代と古地磁気.群馬大学紀要,22,65-78.
(13)八ヶ岳団体研究グループ 1988, 八ヶ岳山麓の中部更新統,地団研専報,34, 53-89.
(14)渡邉和輝・大塚勉 2019, 長野県上田盆地における第四紀の構造運動. 信州大学環境科学年報, 41, 14-32.
(15)渡邉和輝・大塚勉 2020, 長野県東信地域における第四紀の地質構造. 信州大学環境科学年報, 42, 54-84.
(16)渡邉和輝・大塚勉 2020, 長野県上田盆地神川河床に露出する完新統に変位を与える断層. 信州大学環境科学年報, 42, 85-91
研究地域には,中生界および新第三系以降の地質体が存在する.研究地域の基盤岩として,中生界の秩父帯付加体および中新統の火山岩・火砕岩・堆積岩・貫入岩が分布し,それらを第四系が覆う.第四系は,陸成層および火山砕屑物からなる小諸層群,周囲の第四紀火山が起源の火山岩・火山砕屑物・山体崩壊堆積物などによって構成される.また,平野部には上記地質体を覆う上小湖成層および段丘堆積物などの上部更新統以降の地層が分布する.
研究地域において第四系に変位を与える18例の断層および断層群,2例の褶曲,1例の撓曲について構造を検討した.見出された第四紀断層の多くは盆地や台地の縁辺部に沿って見出され,現在の地形が第四紀の構造運動を強く反映していることが浮き彫りになった. さらに,第四紀断層のなかには,段丘堆積物などの後期更新世以降の地層に変位を与えるものが見出された.とくに,上田盆地東縁部では,中新統が河床礫に衝上する逆断層露頭のガウジ帯に含まれる木片から,156±21yrBPのきわめて若い14C年代値(暦年較正)が得られた.この年代値を踏まえると,1791年7月23日の地震(松本で被害),1791年9月13日の地震(信濃国で被害)が該当し,歴史地震の際に活動した可能性がある(渡邉ほか 2020).
これらの地質構造は,東信地域の地形形成に関与する第四紀以降の構造運動が存在したこと,さらに後期更新世から完新世にかけての最新期の断層運動があったことを示している.本研究の結果は広域的かつ詳細な地質図の作成とともに,東信地域において従来不明とされてきた地震に直結する活断層の存在が明らかとなった.
【引用(図表内も含む)】
(1)新井房夫 1993, 火山灰考古学.古今書院,264p.
(2)本間不二男 1931, 信濃中部地質誌. 古今書院,331p.
(3)飯島南海夫・石和一夫・甲三男・田口 朝男 1956, いわゆる“塩川層”の地質.地質学雑誌, 62, 734, 622-635.
(4)飯島南海夫・山辺邦彦・甲田三男・石和一夫・小宮山孝一 1969, 千曲川上流地方の第四紀地質(その3)―とくに上小湖成層について―. 地球科学, 23, 3.
(5)岩崎敏典・指田勝男・猪郷久義 1989, 関東山地北西部,長野県南佐久郡北相木-川上地域の中生界.地質学雑誌,95,10,733-753.
(6)河内晋平 1974, 蓼科山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,128p.
(7)河内晋平・荒牧重雄 1979, 小諸地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,39p.
(8)北八ヶ岳サブグループ 1988,八ヶ岳山麓の鮮新・下部更新統―特に八千穂層群について―.地団研専報, 34, 15-52.
(9)宮坂晃・狩野謙一 2015, 北部フォッサマグナ南東部,小諸盆地の鮮新世~中期更新世のテクトニクス.静岡大学地球科学研究報告, 42, 63-83.
(10)長野県地学会 1957,1/20万長野県地質図説明書.
(11)西来邦章・高橋康・松本哲一 2013, 浅間・烏帽子火山群の火山活動場の変遷. 地質学雑誌, 119, 474-487.
(12)野村哲・海老原充 1988,群馬県西部新生代火山類のK-Ar年代と古地磁気.群馬大学紀要,22,65-78.
(13)八ヶ岳団体研究グループ 1988, 八ヶ岳山麓の中部更新統,地団研専報,34, 53-89.
(14)渡邉和輝・大塚勉 2019, 長野県上田盆地における第四紀の構造運動. 信州大学環境科学年報, 41, 14-32.
(15)渡邉和輝・大塚勉 2020, 長野県東信地域における第四紀の地質構造. 信州大学環境科学年報, 42, 54-84.
(16)渡邉和輝・大塚勉 2020, 長野県上田盆地神川河床に露出する完新統に変位を与える断層. 信州大学環境科学年報, 42, 85-91