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[R18-O-6] 堤体と隣接した道路の大変形の主な原因について:東京湾岸埋立地北部での2011年東北地方太平洋沖地震時に液状化-流動化した部分の地質調査から
キーワード:人工地層、液状化-流動化、2011年東北地方太平洋沖地震、東京湾岸、埋立地
はじめに:2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とその余震の際,東京湾岸埋立地の北部では,直径百~数百mの斑状に,液状化-流動化に伴う地盤の沈下部分が多数発生した(千葉県環境研究センター,2011).今回は,埋立地外周の護岸に沿う舗装道路の内陸側に隣接した比高約2mの堤体の一部で最大約1m沈下し,道路の一部が最大約0.8mマウンド状に膨れ上がった部分で調査した.
オールコアボーリングは堤体が最も沈下した付近の法面下部(北緯35度39分31秒,東経140度0分27秒,標高4.09m)で深度12mまで行なわれた.これに補足し,堤体の頂部から隣接道路までの堤体斜面にて,斜面に平行に2m間隔で調査測線を設け,各測線の変形部分~非変形部分を4~8m間隔で斜面調査用簡易貫入試験を深度約9mまで行い,人工地層から沖積層上部までの地層を調べた.
地層構成:標高-4.08mに人自不整合があり,これより上位は人工地層,下位は沖積層である.
沖積層は,標高-5.25mを境に,上位が生物擾乱構造がみられ貝化石を含む泥質分が少なく粒径の揃った灰色の細粒砂層,下位がサンドパイプ状の生痕化石や貝化石を含み生物擾乱構造が発達する暗オリーブ灰色の極細粒砂質シルト層である.沖積層の砂層は生痕化石や生物擾乱構造がみられ,液状化-流動化の痕跡はみられない.また簡易貫入試験値(以下簡易貫入試験値を「Nc=」と略す)は30~50と中位の硬さをなす.
人工地層は,標高3.17mを境にこの上位が盛土アソシエーション(以下「アソシエーション(Nirei et al., 2012)」を「As」と略す.),下位が埋立Asである.
埋立Asは,シルト層主体の最下部,中粒砂層主体の下部,貝殻混じり中粒砂層と貝殻片密集層主体の上部,シルト層主体の最上部の各バンドル(以下「バンドル(Nirei et al., 2012)」を「Bd」と略す)からなる.
最下部Bdは,標高-4.08~-3.35mにみられ,数mmの厚さの粗粒シルトのラミナをしばしば挟む暗オリーブ灰色のシルト層からなる.硬さはNc=5~10とやわらかい.
下部Bdは,標高-3.35~0.16mにみられ,泥質分の少ない浅黄~灰黄色の中粒砂層を主体とし,基底付近に泥質分の少ない細粒砂層を挟む.下半部は葉理や層理が不明瞭である.上半部は頂部を除き葉理や層理は消失し塊状である.硬さはNc=10~15とゆるい.
上部Bdは,標高0.16~2.52mにみられ,貝殻片混じりの浅黄~灰黄色の中粒砂層やシルト礫が混じる細礫~中礫大の貝殻片密集層からなり,厚さ約10cmのシルト層を数枚挟む.下半部の中粒砂層には葉理が不明瞭な部分がごく一部みられる.硬さはNc=10~30とゆるい~中位である.地下水面は本層中の標高1.1~1.2mである.
最上部Bdは,標高2.52~3.17mにみられ,浅黄色のシルト層からなり,厚さ1~15cmの細粒~中粒砂層を挟む.
盛土Asは,関東ローム層や黒ボク土壌層の亜角~亜円礫の密集層からなり,硬さはNc=2~10とゆるいが,基底部の厚さ20~40cmはNc=20~40と中位である.
液状化-流動化に関して:液状化-流動化の判定は,地層断面において,初生的な堆積構造の状態により可能である(風岡,2003).埋立アソシエーションの下部の砂層の大部分では,葉理や層理が不明瞭ないし消失しており,この部分が液状化及び流動化したものと考えられる.
また,簡易貫入試験より,埋立As最上部Bdの泥層は,堤体頂部の沈下部分において,地表変形が見られない部分と比較すると0.1~0.5m低くなっている.人自不整合面は調査部分においてはほぼ水平である.また最上部Bdの泥層はほぼ水平に堆積したものであるので,この泥層よりも下位の埋立Asの一部が流出したため沈下したと考えられる.法面下端付近の盛り上がった付近では,地表変形が見られない部分と比較すると同泥層は0.6~1.0m高くなっているものの,人自不整合面はほぼ水平である.よって,この泥層よりも下位の埋立As内において地層の厚さが増加していると考えられる.これらを総合すると,埋立As下部Bdの砂層の多くの部分が液状化-流動化し,堤体頂部付近ではその自重により液状化部分に上載圧が加わる一方,堤体の法面下端部では上載圧が減少しているため,堤体頂部付近の埋立As下部Bdの液状化部分が法面下端方向の同層準へ側方に流入し,これによって堤体頂部付近が沈下し,堤体法面の下端付近が隆起したものと推定される.
引用文献:風岡 修,2003,アーバンクボタ40号,5-13.千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 2-1~2-69.Nirei et al.,2012,Episod, vol.35, 333-336.
オールコアボーリングは堤体が最も沈下した付近の法面下部(北緯35度39分31秒,東経140度0分27秒,標高4.09m)で深度12mまで行なわれた.これに補足し,堤体の頂部から隣接道路までの堤体斜面にて,斜面に平行に2m間隔で調査測線を設け,各測線の変形部分~非変形部分を4~8m間隔で斜面調査用簡易貫入試験を深度約9mまで行い,人工地層から沖積層上部までの地層を調べた.
地層構成:標高-4.08mに人自不整合があり,これより上位は人工地層,下位は沖積層である.
沖積層は,標高-5.25mを境に,上位が生物擾乱構造がみられ貝化石を含む泥質分が少なく粒径の揃った灰色の細粒砂層,下位がサンドパイプ状の生痕化石や貝化石を含み生物擾乱構造が発達する暗オリーブ灰色の極細粒砂質シルト層である.沖積層の砂層は生痕化石や生物擾乱構造がみられ,液状化-流動化の痕跡はみられない.また簡易貫入試験値(以下簡易貫入試験値を「Nc=」と略す)は30~50と中位の硬さをなす.
人工地層は,標高3.17mを境にこの上位が盛土アソシエーション(以下「アソシエーション(Nirei et al., 2012)」を「As」と略す.),下位が埋立Asである.
埋立Asは,シルト層主体の最下部,中粒砂層主体の下部,貝殻混じり中粒砂層と貝殻片密集層主体の上部,シルト層主体の最上部の各バンドル(以下「バンドル(Nirei et al., 2012)」を「Bd」と略す)からなる.
最下部Bdは,標高-4.08~-3.35mにみられ,数mmの厚さの粗粒シルトのラミナをしばしば挟む暗オリーブ灰色のシルト層からなる.硬さはNc=5~10とやわらかい.
下部Bdは,標高-3.35~0.16mにみられ,泥質分の少ない浅黄~灰黄色の中粒砂層を主体とし,基底付近に泥質分の少ない細粒砂層を挟む.下半部は葉理や層理が不明瞭である.上半部は頂部を除き葉理や層理は消失し塊状である.硬さはNc=10~15とゆるい.
上部Bdは,標高0.16~2.52mにみられ,貝殻片混じりの浅黄~灰黄色の中粒砂層やシルト礫が混じる細礫~中礫大の貝殻片密集層からなり,厚さ約10cmのシルト層を数枚挟む.下半部の中粒砂層には葉理が不明瞭な部分がごく一部みられる.硬さはNc=10~30とゆるい~中位である.地下水面は本層中の標高1.1~1.2mである.
最上部Bdは,標高2.52~3.17mにみられ,浅黄色のシルト層からなり,厚さ1~15cmの細粒~中粒砂層を挟む.
盛土Asは,関東ローム層や黒ボク土壌層の亜角~亜円礫の密集層からなり,硬さはNc=2~10とゆるいが,基底部の厚さ20~40cmはNc=20~40と中位である.
液状化-流動化に関して:液状化-流動化の判定は,地層断面において,初生的な堆積構造の状態により可能である(風岡,2003).埋立アソシエーションの下部の砂層の大部分では,葉理や層理が不明瞭ないし消失しており,この部分が液状化及び流動化したものと考えられる.
また,簡易貫入試験より,埋立As最上部Bdの泥層は,堤体頂部の沈下部分において,地表変形が見られない部分と比較すると0.1~0.5m低くなっている.人自不整合面は調査部分においてはほぼ水平である.また最上部Bdの泥層はほぼ水平に堆積したものであるので,この泥層よりも下位の埋立Asの一部が流出したため沈下したと考えられる.法面下端付近の盛り上がった付近では,地表変形が見られない部分と比較すると同泥層は0.6~1.0m高くなっているものの,人自不整合面はほぼ水平である.よって,この泥層よりも下位の埋立As内において地層の厚さが増加していると考えられる.これらを総合すると,埋立As下部Bdの砂層の多くの部分が液状化-流動化し,堤体頂部付近ではその自重により液状化部分に上載圧が加わる一方,堤体の法面下端部では上載圧が減少しているため,堤体頂部付近の埋立As下部Bdの液状化部分が法面下端方向の同層準へ側方に流入し,これによって堤体頂部付近が沈下し,堤体法面の下端付近が隆起したものと推定される.
引用文献:風岡 修,2003,アーバンクボタ40号,5-13.千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 2-1~2-69.Nirei et al.,2012,Episod, vol.35, 333-336.