日本地質学会第128年学術大会

講演情報

ポスター発表

R5[レギュラー]地域地質・地域層序・年代層序

[1poster30-37] R5[レギュラー]地域地質・地域層序・年代層序

2021年9月4日(土) 16:30 〜 19:00 ポスター会場 (ポスター会場)

16:30 〜 19:00

[R5-P-5] 足尾帯南部葛生地域海山相に挟在する砕屑岩相から産出したジュラ紀中世の放散虫化石

*鎌田 祥仁1、上迫 彬岳2 (1. 筑波大学 生命環境系、2. 筑波大学 地球学類)

キーワード:ジュラ紀付加体、放散虫、足尾帯

栃木県佐野市周辺はジュラ紀付加体の構成岩類が分布し足尾帯南部に相当する.当地域は馬蹄形に分布するペルム系玄武岩類−石灰岩を特徴とし,周辺には三畳系―ジュラ系のチャートー砕屑岩相が分布する.これらはユニット1〜3に区分され,ユニット1および3はチャートー砕屑岩相から,ユニット2はペルム系玄武岩−石灰岩からなり(鎌田,1997),後者のペルム系玄武岩類−石灰岩は海山相に相当する(例えば, Muto et al., 2021).ユニット2の最上部では石灰岩の裂罅を埋めるように,また石灰岩を覆うように重なる珪質頁岩が知られ,中期ジュラ紀放散虫が報告されている(指田ほか,1982など).最近演者らの調査において,ユニット2の中部で石灰岩および玄武岩類に挟まれた珪質頁岩および砂岩頁岩互層が確認され,珪質頁岩から放散虫化石を得られた.本発表ではその年代と産出意義について検討する.   調査地域は佐野市会沢町の住友大阪セメント(株)栃木工場唐沢鉱山で,鉱内には層序的下位から①苦灰岩質石灰岩(層厚50m以上)−②珪質頁岩(層厚約1m)−③砂岩泥岩互層(層約厚20m)−④凝灰岩(層約厚20m)−⑤層状石灰岩(層厚60m以上)が露出する.⑤層状石灰岩は④凝灰岩に整合に重なる.②珪質頁岩はやや凹凸のある面を覆うように重なり,粒径数cm〜10cm程度のレンズ状岩塊を含む.②−③,③−④は断層で接する.  最下位の苦灰岩質石灰岩は塊状,一部結晶質で化石片をほとんど含まない.珪質頁岩は暗緑色〜黒色で弱いへき開が発達する.薄片観察では細粒の石英や黒雲母片が極細粒の粘土鉱物の基質に含まれ,後述する放散虫化石を含んでいる.砂岩頁岩互層は破断し,泥質部にへき開面が発達する.砂質部は細粒で淘汰の良い石英アレナイトで,その岩相はユニット1の砂岩頁岩互層に類似している.凝灰岩は赤色・赤紫色の固結度の低い基質中に,様々な粒径(直径数cm〜数m)の玄武岩岩塊および少量の石灰岩岩塊も含む.最上位の層状石灰岩は単層の厚さ5〜20cm程度で成層した薄褐色・灰褐色石灰岩で,化石片を多数含む.  挟在する珪質頁岩からは,保存良好の放散虫化石が多数産出した.主要なものはStriatojaponocapsa plicarum Yao, Striatojaponocapsa synconexa O'Dogherty, Goričan and Dumitrica, Japonocapsa fusiformis Yaoなどで,Matsuoka and Ito (2019)によれば,ジュラ紀中世のStriatojaponocapsa plicarum 帯 (JR4)に相当し,その堆積年代はBajocian〜early Bathonianと推定される.  前述の各岩相の特徴から,①苦灰岩質石灰岩は羽鶴苦灰岩部層(藤本,1961)に,⑤層状石灰岩は山菅石灰岩部層(藤本,1961)に比較される.③砂岩泥岩互層の特徴は,ユニット1の砂岩泥岩互層(会沢層)に類似する.従ってペルム系石灰岩の間にジュラ系珪質頁岩および砂岩泥岩互層が挟在する.これまで羽鳥(1965)を始め,柳本(1973),猪郷ほか(1976),およびAono (1985)などでペルム系石灰岩に挟在する砕屑岩相が地質図に図示されている.しかしその層序関係や年代論は十分ではない.本研究で明らかになったジュラ系中部の珪質頁岩は,これまで石灰岩層の最上位に報告されていた放散虫を含む珪質頁岩に対比されるものであり,玄武岩類(出流層)-石灰岩層(鍋山層)-中部ジュラ系珪質頁岩から構成される海山相が構造的に重複していることを示すと考えられ,挟在する砕屑岩相と海山相の層序関係を明らかにすることは,ジュラ紀付加体における海山付加の様子を検討する上で重要と考えられる. 文献:Aono, H., 1985, Sci. Rep. Univ. Tsukuba, Sec. B (Geological Sciences), 6, 21-57. 藤本治義, 1961, 5万分の1地質図幅「栃木」同説明書, 地質調査所, 62p. 羽鳥晴文, 1965, 地質雑, 71, 247-256. 猪郷久治・青木利枝子・細井さちゑ, 1976), 東京学芸大学紀要,第4部門, 数学・自然科学, 28, 226-236. 鎌田祥仁, 1997, 地質雑, 103, 343-356. Matsuoka, A. and Ito, T., 2019, Sci. Rep., Niigata Univ. (Geology), no.34, 49‒57. Muto, S., Okumura, Y. and Mizuhara, T., 2021, Paleontological Research, 25, 105-119. 指田勝男・猪郷久治・猪郷久義ほか, 1982, 大阪微化石研究会誌, 特別号, 5, 51-66. 柳本 裕, 1973, 地質雑, 79, 441-451.