16:30 〜 19:00
[R10-P-5] 北中国山東省に分布する朱砂洞層 (カンブリア系第二統) で認められる石灰質微生物類礁の構築と石灰質微生物類の多様性
キーワード:カンブリア紀、石灰質微生物類、礁、北中国
顕生累代最初の造礁骨格生物である古杯類は,カンブリア紀テレヌーブ世後期にシベリアで出現した.古杯類は,その後,カンブリア紀第二世までに世界中の低緯度浅海域に古杯類礁を発達させ,第二世末に消滅した.北中国で顕生累代最古の礁は朱砂洞層 (カンブリア系第二統) に認められる.その礁は,石灰質微生物類を豊富に含むが古杯類を産出しない.朱砂洞層の微生物類礁は,古杯類の出現や消滅とは別に,石灰質微生物類自体の繁栄や衰退,地域的な環境変化の観点から,石灰質微生物類礁の変遷を知る手がかりを与える.本研究では北中国山東省の孫麻峪と金河セクションで認められる石灰質微生物類礁を対象に,その構築様式や石灰質微生物類の多様性を検討する.
孫麻峪セクション: 小規模なドーム状を示す礁 (直径数十センチメートル) がペロイドやウーイド石灰岩中に発達する.礁は斑状組織を示すスロンボライトが特徴的である.これらスロンボライトは,石灰質微生物類のEpiphytonやRenalcisなどの密集によって形成される.層理面で,石灰質微生物類が密集する核部とその周囲を内層と外層(約5 cm) が縁取る特異な産状を示すスロンボライトも認められる.核部では,EpiphytonやKordephytonなどの石灰質微生物類が密集し,斑点状スロンボライトを形成する.内層ではEpiphytonが,外層ではAmgainaが卓越する.
金河セクション: 直径数十センチメートルから1〜2メートル程度の小規模なドーム状を示す礁がノジュール状石灰岩中に発達する.礁は斑点状,網状,樹状組織を示すスロンボライトで特徴づけられる.スロンボライトの枠組み本体部は,大部分が再結晶しているため褐色を示す.しかし,部分的にKordephytonやRenalcisなどの痕跡が認められる.さらに,枠組み表面をチューブ状微生物類が被覆する.これら礁の枠組み間には,ペロイド状粒子や石灰泥が充填する.石灰泥充填部には,直径約0.5 mm のチューブ状を示す生痕がよく発達する.また,Renalcisを豊富に含む礁の枠組み間では,セメントで内部が充填された不規則な形状の窓状構造が多く観察される.
孫麻峪セクションと金河セクションでは,礁の特徴や卓越する石灰質微生物類の組み合わせに違いがある.孫麻峪セクションでは,縁取りのある特異な産状のスロンボライトが発達し,EpiphytonやKordephyton, Amgainaが豊富である.金河セクションでは,KordephytonやRenalcisが豊富である.孫麻峪セクションは金河セクションより浅海側に位置するため,この違いは両地域の堆積環境の違いを反映している可能性が高い.孫麻峪セクションのスロンボライトは,ウーイドやペロイド状粒子を含むグレインストーン中に発達し,層状ラミナの発達する微生物マットや鳥の目構造なども認められることから,潮下帯上部から潮上帯で,EpiphytonやKordephytonが群生することで形成されたと推定される.一方,金河セクションのスロンボライトは,ノジュール状石灰岩中に発達しており,潮下帯下部で,主要な構築者であるKordephytonやRenalcisが上方や側方へ成長することによって形成された.
朱砂洞層からは,同時代の古杯類礁で認められる石灰質微生物類と同程度の種類の石灰質微生物類が観察される.石灰質微生物類は,古杯類が創り出す多様なニッチの有無に関わらず多様化し,礁の構築に関与していた.しかし,朱砂洞層より上位の張夏層 (カンブリア系ミャオリン統) では石灰質微生物類の多様性は激減している.古杯類の消滅前後 (カンブリア紀第二世〜ミャオリン世) に石灰質微生物類の多様性はどのように変化したのだろうか.石灰質微生物類が,古杯類を消滅させた世界的な環境変化にどのような影響を受けたのかを検討していく必要がある.
孫麻峪セクション: 小規模なドーム状を示す礁 (直径数十センチメートル) がペロイドやウーイド石灰岩中に発達する.礁は斑状組織を示すスロンボライトが特徴的である.これらスロンボライトは,石灰質微生物類のEpiphytonやRenalcisなどの密集によって形成される.層理面で,石灰質微生物類が密集する核部とその周囲を内層と外層(約5 cm) が縁取る特異な産状を示すスロンボライトも認められる.核部では,EpiphytonやKordephytonなどの石灰質微生物類が密集し,斑点状スロンボライトを形成する.内層ではEpiphytonが,外層ではAmgainaが卓越する.
金河セクション: 直径数十センチメートルから1〜2メートル程度の小規模なドーム状を示す礁がノジュール状石灰岩中に発達する.礁は斑点状,網状,樹状組織を示すスロンボライトで特徴づけられる.スロンボライトの枠組み本体部は,大部分が再結晶しているため褐色を示す.しかし,部分的にKordephytonやRenalcisなどの痕跡が認められる.さらに,枠組み表面をチューブ状微生物類が被覆する.これら礁の枠組み間には,ペロイド状粒子や石灰泥が充填する.石灰泥充填部には,直径約0.5 mm のチューブ状を示す生痕がよく発達する.また,Renalcisを豊富に含む礁の枠組み間では,セメントで内部が充填された不規則な形状の窓状構造が多く観察される.
孫麻峪セクションと金河セクションでは,礁の特徴や卓越する石灰質微生物類の組み合わせに違いがある.孫麻峪セクションでは,縁取りのある特異な産状のスロンボライトが発達し,EpiphytonやKordephyton, Amgainaが豊富である.金河セクションでは,KordephytonやRenalcisが豊富である.孫麻峪セクションは金河セクションより浅海側に位置するため,この違いは両地域の堆積環境の違いを反映している可能性が高い.孫麻峪セクションのスロンボライトは,ウーイドやペロイド状粒子を含むグレインストーン中に発達し,層状ラミナの発達する微生物マットや鳥の目構造なども認められることから,潮下帯上部から潮上帯で,EpiphytonやKordephytonが群生することで形成されたと推定される.一方,金河セクションのスロンボライトは,ノジュール状石灰岩中に発達しており,潮下帯下部で,主要な構築者であるKordephytonやRenalcisが上方や側方へ成長することによって形成された.
朱砂洞層からは,同時代の古杯類礁で認められる石灰質微生物類と同程度の種類の石灰質微生物類が観察される.石灰質微生物類は,古杯類が創り出す多様なニッチの有無に関わらず多様化し,礁の構築に関与していた.しかし,朱砂洞層より上位の張夏層 (カンブリア系ミャオリン統) では石灰質微生物類の多様性は激減している.古杯類の消滅前後 (カンブリア紀第二世〜ミャオリン世) に石灰質微生物類の多様性はどのように変化したのだろうか.石灰質微生物類が,古杯類を消滅させた世界的な環境変化にどのような影響を受けたのかを検討していく必要がある.