日本地質学会第128年学術大会

講演情報

ポスター発表

R12[レギュラー]岩石・鉱物の変形と反応

[1poster56-60] R12[レギュラー]岩石・鉱物の変形と反応

2021年9月4日(土) 16:30 〜 19:00 ポスター会場 (ポスター会場)

16:30 〜 19:00

[R12-P-2] スメクタイト分散液のチキソトロピー性とスティックスリップ挙動

*亀田 純1、濱田 洋平2 (1. 北海道大学、2. JAMSTEC高知コア研究所)

キーワード:断層、スメクタイト、チキソトロピー

一般に粘土鉱物の濃厚分散液は、粒子同士の相互作用によって凝集分散が起こるため複雑なレオロジー挙動を示す。粘土分散液の多くは撹拌・振動により凝集構造が破壊されて流動性を獲得す場合があり、この性質をチキソトロピーと呼ぶ。Coussot et al(2002)らのレオロジー実験によると、チキソトロピー流体の流動特性はある応力値を境として大きく異なり、それ以上の応力を与えると流れとともに粘性度は次第に低下していずれ定常流に至るのに対し、閾値以下の応力では粘性度が急激に上昇して最終的に流動は停止することになる。Coussot et al(2002)らは、凝集体・ネットワーク構造の破壊―再生競合モデル(次式)を導入することで、定性的ではあるもののチキソトロピー流体の流動挙動を予測できることを示した: dλ/dt=1/τ-αλγ。ここでλは状態を表す変数、α は定数、τ は構造再生にかかる時定数、γ はひずみ速度である。 このように表現されるチキソトロピー性は、急激に流動を開始する地すべりなどの現象をよく説明できることもあわせて指摘している。
 最近われわれは、日本海溝先端のスメクタイトを含むプレート境界断層が塑性流動変形する可能性について検討しており(Kameda and Hamada 2020)、本研究ではさらに断層のチキソトロピー性についても検討したので報告する。断層の模擬物質として、smectite(クニミネ工業) と quartz の粉末を7:3の割合で混合し、0.6 M のNaCl 溶液に分散させたスラリーを使用した(固相分率はおよそ0.1)。レオロジー実験にはレオメータ(HR-2, TA Instruments)を使用し、25度の条件で一定応力を作用させたときの粘性度変化を調べた。結果を図1に示す。
 実験の結果、応力値34Paを境に粘性度の挙動が大きく変化することが分かった。 この応力値は、定常ずり流動測定で得られる降伏応力とよく一致する(32.4Pa; Kameda and Hamada, 2020)。また得られたデータは、Coussotモデルにより良く説明されることも分かった(図1の実線)。さらにこのモデルを組み込んだバネスライダー系の挙動について調べたところ、パラメータの条件によって定常流からスティックスリップに類似するものまで、多様な振る舞いを示すことが分かってきた。こうした挙動は、プレート境界断層の多様な断層すべりプロセスに対応している可能性がある。
引用文献
Coussot P, QD Nguyen, HT Huynh and D Bonn (2002) J. Rheol. 46, 573.
Kameda J and Hamada Y (2020) Geophys. Res. Lett. 47, e2020GL088395