日本地質学会第128年学術大会

講演情報

ポスター発表

R18[レギュラー]環境地質

[1poster61-62] R18[レギュラー]環境地質

2021年9月4日(土) 16:30 〜 19:00 ポスター会場 (ポスター会場)

16:30 〜 19:00

[R18-P-2] (エントリー)姶良カルデラ周辺の温泉定期観測によるラドン成分変動について

*北村 有迅1、立岡 大和、田町 勇気4、川端 訓代3、石谷 祐昌1、松尾 翔一朗1、伊藤 大吾2、寺澤 瞭2 (1. 鹿児島大学大学院理工学研究科、2. 熊本大学大学院自然科学研究科、3. 鹿児島大学総合教育機構共通教育センター、4. 気象庁福岡管区気象台)

キーワード:温泉水、ラドン濃度、桜島、地殻流体

温泉水中には多くのイオン,ガスが溶存しておりそれらを基に流体の起源や流路,地下の地質構造,地殻変動について等様々な考察がなされてきた.本研究では,2019年7月から行われている姶良カルデラ周辺温泉定期観測のデータを用い,以前行われた田町(2020)の研究も踏まえ,流体の起源や観測値の変動に関して観測データの増分を含めて考察することが目的である.
 本研究では温泉水の定期観測を2019年7月から月1回間隔で行った.桜島島内 (St.1, St.2), 垂水市(St.3), 鹿児島市街(St.4, St.5)2020年4月から霧島市福山(St.6)で試料水のサンプリングを行った.試料の222Rn 濃度は研究室 にて静電式ラドン測定器(RTM1688-2; SARAD)を用いて即日分析を行った.
 水中222Rn濃度は数十Bq/m3〜数十万Bq/m3とかなり幅広い値を検出した.また水中222Rn濃度はサンプリングポイントや採取した時期によりかなり大きな違いが認められる.特にSt.3では常にほかのサンプリングポイントよりも大きい水中222Rn濃度を検出しており,St.4やSt.5では安定した水中222Rn濃度が検出されていおり,その大小は2019年7月を除いてSt.5のほうがSt.4より高い水中222Rn濃度が検出された.St.3の高濃度の222Rn濃度は,多孔質を含む地層を流路としている,もしくはSiO2を多量に含む岩を流路とする可能性が考えられる。 また,水中222Rn濃度と溶存イオンや水素同位体比,酸素同位体比,炭素同位体比,ヘリウム,ネオン(未公表データ)とは相関関係が認められないことから,水中222Rn濃度は強い独立性をもつ成分であることが言える.
 温泉水中に含まれるイオンや溶存ガスの値から姶良カルデラにおける地球化学的シグナルを検出し,軽元素同位体比や222Rn濃度から姶良カルデラ周辺の地質構造や桜島火山との関係を推定した.垂水市(St.3)において,高222Rn濃度から,近傍に存在する高隈山の花崗岩由来の可能性が考えられ,また222RnとNa+,Cl-の変動の同期から,古海水を帯水層とする新たな裂罅から流体が断続的に供給されているのではないかと考えられる.今後も,定期観測による新たなデータを追加していくことで,考察の信頼性を向上させていく事が望まれる.

引用文献
田町勇気(2020MS)姶良カルデラ周辺域における温泉水の地球科学的シグナル時空間分布, 鹿児島大学卒業論文, 85 pp.