日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R22[レギュラー]地球史

[3ch201-10] R22[レギュラー]地球史

2021年9月6日(月) 08:00 〜 11:30 第2 (第2)

座長:元村 健人、冨松 由希、佐久間 杏樹

10:30 〜 10:45

[R22-O-8] GIAモデルと堆積物試料分析による最終間氷期以降の東南極氷床変動史の復元

*石輪 健樹1、菅沼 悠介1、奥野 淳一1、徳田 悠希2、香月 興太3、田村 亨4、板木 拓也4、佐々木 聡史3 (1. 国立極地研究所、2. 鳥取環境大学、3. 島根大学、4. 産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:完新世、最終氷期、南極、GIAモデル、海水準変動

将来の地球温暖化が危惧されている現在,全球的な気候変動に対する南極氷床の応答を理解することは学術的にも社会的にも喫緊の課題である.東南極氷床は数十メートルの海水準上昇に寄与する淡水を保持しており,地質データからは過去の温暖期において部分的に融解していた可能性が示唆されている(Wilson et al., 2018).一方,衛星をはじめとする観測データは過去数十年に限られるため,数万〜数百年の時間スケールの氷床変動を理解するには,モデルシミュレーションおよび地質データから過去の南極氷床変動史を復元することが不可欠である.
過去の南極氷床変動の復元には海水準データが重要な役割を果たす.南極域の海水準データは氷床変動に伴う全球的な海水量変化と氷床・海水をはじめとする表層荷重による固体地球変形の効果(GIA: Glacial Isostatic Adjustments)を含んでおり,GIAモデルと地質データの比較により氷床変動史に制約が可能である.しかし,最終間氷期から現在における東南極氷床変動史は,時空間的な氷床変動記録の欠如により十分に復元されていない.したがって,本研究はGIAモデルと堆積物試料分析により最終間氷期以降の東南極氷床変動を復元し,その変動メカニズムの解明につなげることを目的とした.
第61次日本南極地域観測隊では,東南極・リュッツォ・ホルム湾の露岩域であるラングホブデとオングル島での地形調査を実施し,陸上・湖沼・海洋堆積物をはじめとする地質試料を採取した.これらの試料は過去の海水準・氷床変動を記録していると期待され,GIAモデルを組み合わせることで過去の東南極氷床変動史の制約が可能である.本発表では,採取した堆積物試料分析の予察的結果を報告する.また,リュッツォ・ホルム湾で既に報告されている海水準変動記録(Miura et al., 1998)を再評価し,GIAモデルにより氷期の東南極氷床変動史を制約した研究成果についても発表する(Ishiwa et al., 2021).