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[R1-O-7] (ハイライト)大崩山火山深成複合岩体の地質と形成過程の再検討
キーワード:中新世、火山深成複合岩体、花崗岩、U-Pb年代、貫入定置機構
世話人からのハイライト紹介:中新世の火山体の地下構造が大規模に露出している大崩山火山深成複合岩体の地質の再検討と,新たに得られたジルコンU-Pb年代(谷ほか,本学術大会講演),帯磁率異方性による定置メカニズムの検討(金丸ほか,本学術大会講演)から150万年間におよんで活動した火山深成複合岩体の形成過程が明らかとなった。参考:ハイライトについて
大崩山火山深成複合岩体(Takahashi,1986)の地質を再検討し,新たにジルコンのU-Pb年代を求め(谷ほか, 2021),貫入岩体に関する帯磁率異方性による貫入定置メカニズムの検討を行って(金丸ほか, 2021),時間軸を導入し解像度を上げた形でその形成過程を明らかにした。大崩山火山深成複合岩体を構成する火成岩は,祖母山・傾山コールドロンを形成したS-typeと,複成火山体や大崩山コールドロン・バソリス状花崗岩体などを形成したI-typeとに大きく区分される(高橋ほか,2014)。以下にその形成過程を示す。 (1)祖母山コールドロンの形成: 祖母山コールドロン(20×13km)は,総噴出量300km3以下の流紋岩~デイサイト質溶結火砕流堆積物および溶岩の噴出によって形成された。コールドロン外側では最大層厚150mの溶結火砕流堆積物がみられ,またコールドロン内は全層厚570m以上の溶結火砕流堆積物と溶岩からなり,下底部には花崗岩バソリスが直接貫入している。コールドロン外の溶結火砕流堆積物のジルコンU-Pb年代は14.77Maである。(2) 傾山コールドロンの形成: 傾山コールドロンに先行して,層厚250m,噴出量60km3に及ぶ大規模な無斑晶質流紋岩質溶岩が噴出した。傾山コールドロン(12×6km)は,全層厚500m,総噴出量350km3以下の流紋岩~デイサイト質溶結火砕流堆積物の噴出によって形成された。この溶結火砕流堆積物のジルコンU-Pb年代は14.51Maである。現在の傾山コールドロンの内部は,後から噴出した安山岩~デイサイト質溶岩・火砕流堆積物によって埋積されており,底部は花崗岩バソリスの直接の貫入を受けていて,その下部に存在したコールドロン形成に直接関係した火山岩類は失われている。(3)S-type花崗岩の貫入: 大崩山コールドロン内の南東部にS-typeの性質を示す直方輝石・黒雲母花崗閃緑岩の貫入があり,そのジルコンU-Pb年代は14.32Maである。(4)安山岩~デイサイト質複成火山の形成: S-type的なマグマ活動によって祖母山・傾山両コールドロンが形成された後,I-type安山岩~デイサイト質の厚い溶岩流および火砕流堆積物の噴出が繰り返され,最大層厚が1000mを超え、総噴出量が200km3余りの複成火山が形成された。また,複成火山の火道として,石英モンゾニ閃緑岩(安山岩質)~グラノファイア(デイサイト質)が貫入した。ジルコンのU-Pb年代として,安山岩質溶岩の14.09Ma(Shinjoe et al., 2019),グラノファイアの14.08Maが得られている。(5)大崩山コールドロンの形成: 全層厚400m以上,総噴出量370km3以下の結晶に富むI-type流紋岩質溶結火砕流堆積物の環状割れ目からの噴出により,沈降量が1000m余りの大崩山コールドロン(33×23km)が形成された。環状岩脈およびその分岐岩脈では,無斑晶質流紋岩(珪長岩)→凝灰岩・ラピリ凝灰岩(火砕流の噴出)→花崗斑岩の順に貫入が行われた。ジルコンのU-Pb年代は,流紋岩質溶結火砕流堆積物が13.91Ma,花崗斑岩が13.97-14.13Maであり,ほぼ同一の年代を示す。環状岩脈へのマグマの移動は複数の地点から始まり,それぞれの地点から水平方向にマグマが移動することによって行われた。(6)大崩山バソリス状花崗岩体の貫入: 野外での貫入関係では,最後にバソリス状花崗岩体(30×20km)が貫入した。I-typeバソリス状花崗岩は,ルーフ直下ではSiO270wt.%以上の黒雲母花崗岩であり,ルーフから1000mの断面が観察される大崩山岩体では,ルーフから300~400m以深では,SiO270wt.%未満の角閃石黒雲母花崗岩~花崗閃緑岩からなる。ジルコンのU-Pb年代では、ルーフから300~400mの岩体上部が14.25~13.85Maと古い年代を示し,それ以深および一部岩体が13.51~13.21Maといった若い年代を示していて,両者の間には数10万年以上の時間間隙が認められる。また,若い年代の花崗岩類に含まれるI-type安山岩~デイサイト質の苦鉄質マグマ性包有岩もホスト花崗岩とほぼ同じ年代を示しており,この時地下深部には安山岩~デイサイト質マグマが存在していた。バソリス状花崗岩マグマの貫入は,地下コールドロン・ブロックストーピングおよび漸増定置によって行われたらしい。 文献 Takahashi, M.,1986, JVGR, 29,33-70 谷ほか, 2021, 本学術大会講演要旨 金丸ほか, 2021, 本学術大会講演要旨 Shinjoe, H. et al., 2019, Geol.Mag,, http://doi.org/10.1017/S00167556819000785