日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R1[レギュラー]深成岩・火山岩とマグマプロセス

[3ch301-12] R1[レギュラー]深成岩・火山岩とマグマプロセス

2021年9月6日(月) 08:00 〜 11:45 第3 (第3)

座長:金丸 龍夫、道林 克禎、針金 由美子

10:00 〜 10:30

[R1-O-8] (招待講演)南モンゴルペルム紀-三畳紀火山岩類と中央ネパール古原生代花崗岩類の起源とテクトニクス

*今山 武志1 (1. 岡山理科大学)

キーワード:テクトニクス、南モンゴルペルム紀-三畳紀火山岩類、中央ネパール古原生代花崗岩類

造山帯の火成岩類の起源を特定することは、その地域のテクトニクスを議論する上で重要である。中央アジア造山帯は、原生代から三畳紀までの世界で最も大きな付加型造山帯の一つであり、シベリア地塊の南縁に徐々に発達し、北中国地塊が衝突して、最終的にSolonker衝突境界帯に沿って古アジア海が閉じたと考えられている。しかし、古アジア海の最終閉鎖のタイミングが、古生代初期なのか後期なのかは議論があった。Imayama et al. (2019a) によると、モンゴル南部に分布する火山岩類はアルカリ元素に富む玄武岩、粗面安山岩、粗面岩などから構成される。全岩化学組成やカリウムーアルゴン法による長石の年代測定からは、これらの火山岩類はペルム紀後期―三畳紀前期 (約270-240 Ma) の沈み込み帯の背弧側で生成されたことが推定される。また、火山岩体上部の陸源性砂岩からの砕屑性ジルコンの最小年代分布(約220-205 Ma)に基づくと、これらの火山堆積物は三畳紀後期以降に堆積したと推定される。これらのモンゴル南部火山岩類の岩石学的・年代学的研究結果は、最終衝突前のペルム紀後期―三畳紀前期まで海洋プレート沈み込み帯が続いていたことを示唆しており、古アジア海の最終閉鎖のタイミングはペルム紀後期―三畳紀前期頃であることを支持する。  
ヒマラヤ造山帯は、新生代の大陸衝突帯である一方で、その基盤は主に古原生代火成岩類(約1.92-1.74 Ga in Nepal)から構成される。これらの古原生代火成岩類の成因は、コロンビア超大陸の離合集散に関連するが、当時のインド大陸北縁が受動的大陸縁なのか活動的大陸縁なのか活発に議論されている。Imayama et al. (2019b) は、中央ネパールカトマンズ地域の古原生代花崗岩類の起源を、全岩・鉱物化学組成、Rb-Sr同位体比、ジルコン年代測定を用いて推定した。ジルコンの微量元素は、重希土類元素やTh/U比に富み、火成起源の特徴を示す。ウランー鉛年代とジルコンTi温度計は、これらの花崗岩類は約1.74 Gaに705-765 ℃で結晶したことを示す。全岩化学組成は、パーアルミナス、高Sr同位体比や高Th-U濃度で特徴づけられ、テクトニック判別図も踏まえると、研究地域の花崗岩類は地殻溶融で形成された可能性が高い。ネパール他地域を含む先行研究を合わせると、約1.92–1.90 Gaのリフト形成後に、thermal subsidenceに伴う約1.84–1.74 Gaの地殻溶融イベントが推定される。これらの結果は、古原生代におけるインド大陸北縁は、受動的大陸縁であったことを示唆する。
引用文献 Imayama, T., Koh, Y., Aoki, K., Saneyoshi, M., Yagi, K., Aoki, S., Terada, T., Sawada, Y., Ikawa, C., Ishigaki, S., Toyoda, S., Tsogtbaatar, Kh, Mainbayar, B., 2019a. Late Permian to Early Triassic back-arc type volcanism in the southern Mongolia volcano-plutonic belt of the Central Asian Orogenic Belt: Implication for timing of the final closure of the Palaeo-Asian Ocean, Journal of Geodynamics, 131, 101650. Imayama, T., Arita, K., Fukuyama, M., Yi, K., and R. Kawabata, 2019b. 1.74 Ga crustal melting after rifting at the northern Indian margin: investigation of mylonitic orthogneisses in the Kathmandu area, central Nepal. International Geology Review, v. 61, p. 1207-1221.