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[R1-O-10] 鹿児島県北西部中期中新世甑島花崗岩体の岩石学的特徴とジルコンU-Pb年代
キーワード:中期中新世、ウラン・鉛年代、ジルコン、花崗岩、西南日本外帯
中央構造線・仏像構造線を挟んで太平洋側地域を西南日本外帯と呼び,この外帯においては様々な規模で花崗岩類が露出する.これらのほとんどは中期中新世のごく短い間に形成されたものであり,放射年代はc.a.10-15Maと報告されている.南九州地域に分布する花崗岩のほとんどが外帯花崗岩の一部であり,c.a.12~15MaのK-Ar年代及びフィッショントラック年代が報告されている(Miyachi,1985; 柴田,1978).この中でも鹿児島県北西部の甑島列島は臼杵―八代構造線の延長上にあり,西南日本弧と琉球弧の会合部に位置するため日本海・沖縄トラフ拡大を考える上で重要な地域と言える.甑島列島は主に上甑島,中甑島および下甑島の3島からなる離島である.甑島列島には後期白亜紀の姫浦層群の堆積岩が広く分布しており、下甑島と一部上甑島に甑島には花崗岩が露出している(田代・野田,1973).これらの花崗岩から分離した黒雲母KーAr年代は13±4Ma(Miller et al., 1962)と報告されている.また,近年では琉球弧拡大との関連性についても議論が行われている(Ishihara et al., 1984; 新正・折橋,2019).しかし甑島の花崗岩類の成因ついて詳細な研究はなされていない.したがって, 本稿では甑島花崗岩のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いたU-Pb放射年代測定およびその形成成因の推定を目的に研究を行ったことを報告する. 調査地域の露頭において下甑島では比較的優白色で粗粒のの花崗閃緑岩,上甑島では灰白色から青白色細粒の花崗閃緑岩から閃緑岩が観察された.また,上甑島では白色花崗岩脈や石英脈もよく観察された.花崗岩と基盤岩の境界付近では接触熱変成作用によりホルンフェルスが形成されている.偏光顕微鏡下では,ほとんどの岩石は斜長石に富んだ角閃石黒雲母花崗閃緑岩であった.岩石内の主要構成鉱物は石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・角閃石類,副成分鉱物はジルコン・アパタイト・イルミナイトが見られた.採取した岩石のうち下甑花崗閃緑岩帯南部と中部で2試料,上甑島花崗閃緑岩で1試料,これに接触するホルンフェルスより1試料からジルコンを抽出し,電子顕微鏡及びカソード像などで内部構造を把握した後、LA-ICP-MSによってU-Pb放射年代測定を行った.これにより下甑島の花崗岩南部(Kos-2)から10.38±0.50 Ma(MSWD=0.94, n=14), 同じく,下甑島花崗岩中部(Kos-11)から11.17±0.53Ma(MSWD=1.4,n=8),上甑島花崗閃緑岩(Kos-19)から10.03±0.44Ma(MSWD=1.3,n=12),と周りのホルンフェルス(Kos-17)からは14-87Ma (n=5)の値が得られた. 甑島花崗岩は10Maと近辺に見られる西南日本外帯の紫尾山花崗閃緑岩 (c.a.13 Ma),大隈花崗岩(c.a. 15 Ma)よりやや若い年代を示した.甑島花崗岩から分離したジルコンはオシラトリーゾーニングがよく見られ,中心部と周縁部で年代差はほとんどなかった.鹿児島地域の外帯花崗岩と全岩組成を比較したところ甑島花崗岩はややMeta-aluminousかつ苦鉄岩質なことから,玄武岩質マグマ成分を含む地殻の部分溶融から形成された花崗岩類だと考えられ,他の外帯花崗岩とは異なる火成活動に関連したものと推測される. したがって甑島花崗岩は他の外帯花崗岩と異なる火成活動によって形成されたことが示唆されたが,琉球弧背弧海盆との関連を議論するためにはより詳細な検討が必要である.
引用文献
Ishihara S., et al. (1984) Mining Geol., 34, 45-50.
Miller, J.A., et al (1962) Bull Geol. Surv. Japan, 13, 712-714.
Miyachi M.(1985) 岩石鉱物鉱床学会誌 80(9),406-409
柴田賢 (1978) 地質調査所月報 29 (8), 551-554
新正 裕尚 他(2019) 第126年地質学会学術大会(2019 山口)要旨集
田代正之,野田雅之(1972)地質学雑誌, 79巻7号, 465-480
引用文献
Ishihara S., et al. (1984) Mining Geol., 34, 45-50.
Miller, J.A., et al (1962) Bull Geol. Surv. Japan, 13, 712-714.
Miyachi M.(1985) 岩石鉱物鉱床学会誌 80(9),406-409
柴田賢 (1978) 地質調査所月報 29 (8), 551-554
新正 裕尚 他(2019) 第126年地質学会学術大会(2019 山口)要旨集
田代正之,野田雅之(1972)地質学雑誌, 79巻7号, 465-480