日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R8[レギュラー]海洋地質

[3ch313-21] R8[レギュラー]海洋地質

2021年9月6日(月) 13:00 〜 15:30 第3 (第3)

座長:鈴木 克明、小原 泰彦

14:30 〜 14:45

[R8-O-6] 東南極リュツォホルム湾海底堆積物から復元した最終氷期以降の氷床後退過程

*菅沼 悠介1,2、羽田 裕貴3、板木 拓也3、石輪 健樹1、藤井 昌和1,2、加藤 悠爾9、大森 貴之7、天野 敦子3、岩井 雅夫9、西田 尚央10、草原 和弥8、平野 大輔1,2、関 宰4、香月 興太5、川又 基人1,11、松井 浩紀6、奥野 淳一1,2、池原 実9、三浦 英樹1,2 (1. 国立極地研究所、2. 総合研究大学院大学、3. 産業技術総合研究所、4. 北海道大学、5. 島根大学、6. 秋田大学、7. 東京大学、8. 海洋研究開発機構、9. 高知大学海洋コア研究センター、10. 東京学芸大学、11. 寒地土木研究所)

キーワード:南大洋・南極氷床、新学術、海底堆積物

近年,衛星観測などによって南極氷床の融解や流出の加速が相次いで報告され,近い将来の急激な海水準上昇が社会的に強く懸念されている.最近の気候・氷床モデルシミュレーションによると,近年融解が加速している西南極氷床のみならず,西南極氷床より1桁大きな体積をもつ東南極氷床の一部も温暖化に敏感であることが指摘されている.しかし,南極氷床の質量収支は,氷床表面での涵養と消耗のみでなく,氷床沿岸でおきる棚氷の底面融解や氷床からの分離も含むため,そのメカニズムの理解と定量的な観測は容易ではなく,気候変動予測精度向上における課題となっている.一方,南極大陸やその周辺の海底堆積物は採取が困難であり,また断片的ではあるとはいえ,過去の南極氷床変動を復元するために極めて貴重な情報を提供する.こういった情報を集積・解析することで過去の気候変動に対する南極氷床の応答の復元できれば,南極氷床融解メカニズムの理解だけでなく,その知見を将来の気候変動の予測に利用することもできる.そこで我々は,砕氷船しらせによって東南極リュツォホルム湾から新たに採取された海底堆積物試料と,既存レガシーコアを解析・分析し,最終氷期における最大氷床拡大域と完新世におきた急激な東南極氷床融解過程の復元と,そのメカニズムについての考察を進めている.現状では海底堆積物の年代制約に課題があるものの,当該地域における氷床融解過程とそのメカニズムについて得られた新たな知見について報告する.