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[R5-P-9] 中新統, 師崎層群の凝灰質砂岩と瑞浪層群の軽石火山礫凝灰岩の地層対比
キーワード:師崎層群、瑞浪層群、中新統
はじめに
本州における中期中新世の地層は、背弧海盆の拡大テクトニクスを明らかにする上で重要な鍵を握っている。そのため、それらの詳細な年代や堆積環境、地層の対比関係を明確にすることが求められる。中部地方には、中新統が広く分布しており、これまで多くの研究が行われてきた。しかし、地層間の対比についての検討は進んでいない。そこで本研究では、中新統、師崎層群の軽石を多く含む凝灰質砂岩と、年代的に近い瑞浪層群狭間層に分布する軽石火山礫凝灰岩の対比を火山ガラス組成、斜長石組成、U-Pb年代、古地磁気極性から試みた。
地質概略
愛知県、知多半島に分布する中新統の海成層である師崎層群は、下部より、日間賀層、豊浜層、山海層、内海層に分けられる (近藤・木村, 1987)。師崎層群はこれまで、凝灰岩中のジルコンのFT (土井, 1983)や珪藻化石 (伊藤ほか, 1999)により概ね16-18 Maの年代が得られている。本研究では、日間賀層と山海層下部から確認された軽石を多く含む凝灰質砂岩を対象とした。瑞浪層群狭間層は層厚10m以上の軽石火山礫凝灰岩で構成されており、17.8±0.4 MaのジルコンU-Pb年代が得られている (笹尾ほか, 2018)。これら3試料の斑晶は主に斜長石、石英、わずかに直方輝石、普通角閃石、黒雲母、Fe-Ti酸化鉱物、ジルコンから構成され、山海層下部ではガーネットも含まれる。またこれら3試料には炭化木が含まれる。
火山ガラスおよび斜長石の組成分析結果
EPMA分析には日本大学文理学部付設のEPMA(JXA-8800)を用いた。日間賀層の火山ガラスは変質により分析することができなかった。山海層下部と狭間層については、SiO2量は72-78 wt.% (分析値100wt.%換算)の範囲を示し、各主要元素のハーカー図では両層準は概ね単一の組成変化トレンドを形成する。斜長石斑晶組成については、日間賀層、山海層下部、狭間層の全てにおいてAn値が概ね25-65の間で変化する。またAn-FeO*図とAn-MgO図において、これら3試料は同じ組成範囲に含まれる。
ジルコンのU-Pb年代
ジルコンのU-Pb年代の分析には国立科学博物館付設のICPMS (Agilent 7700x)を用いた。日間賀層では4粒、山海層下部では7粒のジルコン粒子から17-18 Maの中期中新世の年代値が得られた。また後期白亜紀を示す年代が日間賀層では29粒、山海層下部では43粒のジルコン粒子から得られた。
古地磁気極性
狭間層および山海層下部ついては、古地磁気分析により逆帯磁を示すことが報告されている (Hayashida, 1986; Hiroki and Matsumoto, 1999)。本研究では、古地磁気極性が明らかでない日間賀層の古地磁気分析を高知コアセンターの超伝導磁力計により行った。その結果、日間賀島内の3サイトで逆帯磁を示すことが明らかとなった。
議論
以上の結果および先行研究から、これら3つの層準は全て古地磁気層序のC5Dr (18.007–17.533 Ma; Ogg, 2020)に対比されると考えられる。また3層準の火山ガラスおよび斜長石の組成範囲や鉱物組合せの類似から、瑞浪層群狭間層が師崎層群の後背地であったと考えられる。山海層のガーネットは、後期白亜紀の領家深成岩類から取り込まれたと解釈される。
引用文献
土井 (1983) 大阪微化石研究会誌, 10, 14-21. Hayashida (1986) Jour. Geomag. Geoelectr., 38, 295-310. Hiroki and Matsumoto (1999) Jour. Geol. Soc. Japan, 105, 87-107. 伊藤ほか (1999) 地質学雑誌, 105, 152-155. 近藤・木村(1987) 師崎地域の地質. Ogg (2020) Geologic Time Scale, Elsevier. 笹尾ほか (2018) 地質学雑誌, 124, 141-150
本州における中期中新世の地層は、背弧海盆の拡大テクトニクスを明らかにする上で重要な鍵を握っている。そのため、それらの詳細な年代や堆積環境、地層の対比関係を明確にすることが求められる。中部地方には、中新統が広く分布しており、これまで多くの研究が行われてきた。しかし、地層間の対比についての検討は進んでいない。そこで本研究では、中新統、師崎層群の軽石を多く含む凝灰質砂岩と、年代的に近い瑞浪層群狭間層に分布する軽石火山礫凝灰岩の対比を火山ガラス組成、斜長石組成、U-Pb年代、古地磁気極性から試みた。
地質概略
愛知県、知多半島に分布する中新統の海成層である師崎層群は、下部より、日間賀層、豊浜層、山海層、内海層に分けられる (近藤・木村, 1987)。師崎層群はこれまで、凝灰岩中のジルコンのFT (土井, 1983)や珪藻化石 (伊藤ほか, 1999)により概ね16-18 Maの年代が得られている。本研究では、日間賀層と山海層下部から確認された軽石を多く含む凝灰質砂岩を対象とした。瑞浪層群狭間層は層厚10m以上の軽石火山礫凝灰岩で構成されており、17.8±0.4 MaのジルコンU-Pb年代が得られている (笹尾ほか, 2018)。これら3試料の斑晶は主に斜長石、石英、わずかに直方輝石、普通角閃石、黒雲母、Fe-Ti酸化鉱物、ジルコンから構成され、山海層下部ではガーネットも含まれる。またこれら3試料には炭化木が含まれる。
火山ガラスおよび斜長石の組成分析結果
EPMA分析には日本大学文理学部付設のEPMA(JXA-8800)を用いた。日間賀層の火山ガラスは変質により分析することができなかった。山海層下部と狭間層については、SiO2量は72-78 wt.% (分析値100wt.%換算)の範囲を示し、各主要元素のハーカー図では両層準は概ね単一の組成変化トレンドを形成する。斜長石斑晶組成については、日間賀層、山海層下部、狭間層の全てにおいてAn値が概ね25-65の間で変化する。またAn-FeO*図とAn-MgO図において、これら3試料は同じ組成範囲に含まれる。
ジルコンのU-Pb年代
ジルコンのU-Pb年代の分析には国立科学博物館付設のICPMS (Agilent 7700x)を用いた。日間賀層では4粒、山海層下部では7粒のジルコン粒子から17-18 Maの中期中新世の年代値が得られた。また後期白亜紀を示す年代が日間賀層では29粒、山海層下部では43粒のジルコン粒子から得られた。
古地磁気極性
狭間層および山海層下部ついては、古地磁気分析により逆帯磁を示すことが報告されている (Hayashida, 1986; Hiroki and Matsumoto, 1999)。本研究では、古地磁気極性が明らかでない日間賀層の古地磁気分析を高知コアセンターの超伝導磁力計により行った。その結果、日間賀島内の3サイトで逆帯磁を示すことが明らかとなった。
議論
以上の結果および先行研究から、これら3つの層準は全て古地磁気層序のC5Dr (18.007–17.533 Ma; Ogg, 2020)に対比されると考えられる。また3層準の火山ガラスおよび斜長石の組成範囲や鉱物組合せの類似から、瑞浪層群狭間層が師崎層群の後背地であったと考えられる。山海層のガーネットは、後期白亜紀の領家深成岩類から取り込まれたと解釈される。
引用文献
土井 (1983) 大阪微化石研究会誌, 10, 14-21. Hayashida (1986) Jour. Geomag. Geoelectr., 38, 295-310. Hiroki and Matsumoto (1999) Jour. Geol. Soc. Japan, 105, 87-107. 伊藤ほか (1999) 地質学雑誌, 105, 152-155. 近藤・木村(1987) 師崎地域の地質. Ogg (2020) Geologic Time Scale, Elsevier. 笹尾ほか (2018) 地質学雑誌, 124, 141-150