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[R8-P-4] (エントリー)トカラ列島南西海域の底質分布
キーワード:トカラ列島、表層堆積図
日本周辺海域における20万分の1海洋地質図の網羅的な作成を目的とした海域地質図プロジェクトの一環として、2021年3月に東海大学の調査実習船「望星丸」を使用してトカラ列島周辺海域において海底地質調査航海(GB21-1)を実施した。本航海で表層堆積図作成のため採取された堆積物試料に関して予察的な分析結果を報告する。
<グラブ採泥>トカラ列島南部に位置する宝島、横当島周辺および西方海域と、諏訪之瀬島周辺海域において、木下式グラブ採泥器による表層採泥を61地点で実施した。採泥器には海底カメラ、CTD、方位傾斜計、音速度計(一部地点)を装備し、海底面撮影や水質データ取得を行った。採取した試料は船上で写真撮影や肉眼記載、生物遺骸等の採取を行った。砂質・泥質堆積物が採取できた地点では有田式サブコアを分取し、軟X線像の撮影と、医療用X線CTスキャナー(CT)による三次元構造の取得を行った。 調査海域では、島嶼部及び地形的な高まりの周辺では火成岩質の礫、砂が卓越し、トカラ峡谷および沖縄トラフ底部には泥質堆積物が卓越する。本海域の底質粒径は水深(陸域からの距離)だけでなく、海底に多数分布する海底火山など周辺地形の起伏や傾斜にも制約されていると考えられる。礫、砂の粒子組成は地点により大きく異なり、基本的には周辺の火山岩体の有無やその組成、周辺海域の生物相を反映しているとみられる。ただし、リップルが確認される地点では翼足類などの生物遺骸や鉱物組成の異なる砂粒子が互層を成す様子も観察され、局地的には流れの影響が底質組成を力学的に規定している場合も多いと考えられる。砂質堆積物には、海底写真上で認識できる数十cmスケールのリップルや、海底地形データで認識できる数百mスケールの波長を持つサンドウェーブ、堆積物断面にみられる斜交層理など、流れの影響を受けた地形や構造が多く見られた。こうした構造はとくにトカラ峡谷の南側斜面で卓越し、トカラ列島周辺で蛇行する黒潮が影響していると考えられる。泥質堆積物からは、CT像、軟X線像において生痕が発達する様子が海域全体で観察された。 諏訪之瀬島西方のサイトg197からは、砂サイズの火山灰層の中に級化構造を示す泥質堆積物が挟在する様子が観察された。このサイトは海底面のリップルの存在から底層流の影響が示唆されるため、この泥質堆積物は斜面崩壊などのイベントを起源として短時間で堆積した可能性が高い。本地点周辺でより長尺の柱状試料を採取すればこうしたイベントの履歴を復元できる可能性がある。
<柱状試料採泥>本海域での典型的な堆積速度や堆積物供給源の時代変化を把握するため、沖縄トラフ東縁のサイトc11と宝島西方の海盆に位置するサイトc05において大口径グラビティコアラーでの柱状試料採泥を行い、それぞれ389cm、227cmの試料を採取した。採取時に欠落するコア最上部を擾乱なく採取するため、パイロットとしてアシュラ式採泥器を用いた。試料は船上で半割し、2.2cm間隔でのキューブ、スライス試料の分取と分光測色計による1cm間隔での色測定を行った。またスラブ試料を用いた軟X線像の撮影と、半割試料を用いたCT像の取得を行った。 得られたコア試料はいずれも火山灰や有孔虫を多く含む極細粒砂からシルト質の堆積物で構成されている。両サイトにおいて、コア上部1.8~2mまでは強い生物擾乱を受けている。深度約2mより下位では生物擾乱は少なく、とくにc11では数十cm間隔で火山灰質のパッチや薄層が見られた。
今後はグラブ試料について粒度分析、粒子組成解析、生物群集解析などの定量分析、柱状試料に関しては放射性炭素年代測定や火山灰層の同定を行い、表層堆積図作成のための情報を整備していく予定である。
<グラブ採泥>トカラ列島南部に位置する宝島、横当島周辺および西方海域と、諏訪之瀬島周辺海域において、木下式グラブ採泥器による表層採泥を61地点で実施した。採泥器には海底カメラ、CTD、方位傾斜計、音速度計(一部地点)を装備し、海底面撮影や水質データ取得を行った。採取した試料は船上で写真撮影や肉眼記載、生物遺骸等の採取を行った。砂質・泥質堆積物が採取できた地点では有田式サブコアを分取し、軟X線像の撮影と、医療用X線CTスキャナー(CT)による三次元構造の取得を行った。 調査海域では、島嶼部及び地形的な高まりの周辺では火成岩質の礫、砂が卓越し、トカラ峡谷および沖縄トラフ底部には泥質堆積物が卓越する。本海域の底質粒径は水深(陸域からの距離)だけでなく、海底に多数分布する海底火山など周辺地形の起伏や傾斜にも制約されていると考えられる。礫、砂の粒子組成は地点により大きく異なり、基本的には周辺の火山岩体の有無やその組成、周辺海域の生物相を反映しているとみられる。ただし、リップルが確認される地点では翼足類などの生物遺骸や鉱物組成の異なる砂粒子が互層を成す様子も観察され、局地的には流れの影響が底質組成を力学的に規定している場合も多いと考えられる。砂質堆積物には、海底写真上で認識できる数十cmスケールのリップルや、海底地形データで認識できる数百mスケールの波長を持つサンドウェーブ、堆積物断面にみられる斜交層理など、流れの影響を受けた地形や構造が多く見られた。こうした構造はとくにトカラ峡谷の南側斜面で卓越し、トカラ列島周辺で蛇行する黒潮が影響していると考えられる。泥質堆積物からは、CT像、軟X線像において生痕が発達する様子が海域全体で観察された。 諏訪之瀬島西方のサイトg197からは、砂サイズの火山灰層の中に級化構造を示す泥質堆積物が挟在する様子が観察された。このサイトは海底面のリップルの存在から底層流の影響が示唆されるため、この泥質堆積物は斜面崩壊などのイベントを起源として短時間で堆積した可能性が高い。本地点周辺でより長尺の柱状試料を採取すればこうしたイベントの履歴を復元できる可能性がある。
<柱状試料採泥>本海域での典型的な堆積速度や堆積物供給源の時代変化を把握するため、沖縄トラフ東縁のサイトc11と宝島西方の海盆に位置するサイトc05において大口径グラビティコアラーでの柱状試料採泥を行い、それぞれ389cm、227cmの試料を採取した。採取時に欠落するコア最上部を擾乱なく採取するため、パイロットとしてアシュラ式採泥器を用いた。試料は船上で半割し、2.2cm間隔でのキューブ、スライス試料の分取と分光測色計による1cm間隔での色測定を行った。またスラブ試料を用いた軟X線像の撮影と、半割試料を用いたCT像の取得を行った。 得られたコア試料はいずれも火山灰や有孔虫を多く含む極細粒砂からシルト質の堆積物で構成されている。両サイトにおいて、コア上部1.8~2mまでは強い生物擾乱を受けている。深度約2mより下位では生物擾乱は少なく、とくにc11では数十cm間隔で火山灰質のパッチや薄層が見られた。
今後はグラブ試料について粒度分析、粒子組成解析、生物群集解析などの定量分析、柱状試料に関しては放射性炭素年代測定や火山灰層の同定を行い、表層堆積図作成のための情報を整備していく予定である。