日本地質学会第128年学術大会

講演情報

ポスター発表

R17[レギュラー]情報地質とその利活用

[3poster66-68] R17[レギュラー]情報地質とその利活用

2021年9月6日(月) 16:00 〜 18:30 ポスター会場 (ポスター会場)

16:00 〜 18:30

[R17-P-2] 改訂版岡山県地質図の発行と今後の改訂作業について

*能美 洋介1、田邉 信男2、野瀬 重人3、定金 司郎、水野 正行2、田中 元2、大嶋 優斗2、清水 英二2 (1. 岡山理科大学、2. 西部技術コンサルタント株式会社、3. NPO法人地球年代ネットワーク)

キーワード:岡山県、地質図、改訂版

2003年(平成15年)に,“岡山県内地質図5万分の1および同説明書”が公開された.この地質図は,故光野千春岡山大学名誉教授と彼の研究室の卒業生たちが岡山県内地質図作成プロジェクトチームを組織して,西部技術コンサルタント株式会社のサポートを得ながら,卒業研究等の資料を再調査・再構成して完成させたもので,PDFファイル化したものが公開された.一つの都道府県で,その県内全域の地質を5万分の1の縮尺でまとめた例は無く,岡山県内地質図は公開後多くの人に利用されてきた.
 岡山県内地質図の公開後,吉備高原地域の各所に分布していた時代未詳の”山砂利層”の年代が明らかにされ,古第三系吉備層群として再記載されるに至ったこと(田中他,2003)や,県西南部の金光町で道路工事中に,古第三系吉備層群にペルム系超丹波層群の泥質岩が衝上している断層が発見されたこと(西部技術コンサルタント,2020)など,当地に関する地質学上の重要な知見の追加があった.また,利用者から地質図の記載事項についての指摘が寄せられた.これらを受けて岡山県内地質図の改訂作業が岡山大学の鈴木茂之教授の監修で進められ,2020年(令和2年)7月に“改訂版岡山県地質図”が完成し,西部技術コンサルタントのホームページで公表され現在に至っている.
 インターネットを媒介として地質図を公開している例としては,産業技術総合研究所の”20万分の1日本シームレス地質図”があり現在V2版が公開されている.改訂版岡山県地質図や日本シームレス地質図は,原図の作成時からCADが使用され,記載変更・修正などの改訂作業はもとより,公開用に作成するPDFへの変換や,サーバーへのアップロードなどの作業が発生するものの,従来の紙ベースの地質図と比べると公開に至るまでの作業が容易である.このため,改訂版岡山県地質図は,新たな露頭の発見情報や利用者からの指摘事項などを元に,現地調査を加えながら今後も加筆・修正を重ね,より高い精度の地質図を目指して公開していく予定である.そのためには,利用者からの意見を収集するための仕組みつくりが重要である.また,公開した地質図の利用に関する権利・制限事項の検討,改訂LOGの公開,GISでの利用を前提としたファイル形式での提供などの作業が必要であり,筆者らによってこれらの作業が進められている.

文献・URL
田中元,鈴木茂之,室谷周,山本裕雄,檀原徹(2003)吉備高原周辺の古第三系に関する最近の知見とその古地理学的意義.岡山大学地球科学研究報告,10,1,pp.15-22.
西部技術コンサルタント(2020)改訂版岡山県地質図(5万分の1・岡山県全域/21図幅)説明書.西部技術コンサルタント,124p.
20万分の1日本シームレス地質図.https://gbank.gsj.jp/seamless/,産業技術総合研究所.
岡山県地質図,http://seibuct.co.jp/chishitsuzu/index.html,西部技術コンサルタント.