129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

[2oral201-12] T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

Mon. Sep 5, 2022 8:45 AM - 12:15 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Reishi Takashima, Yuji Orihashi(Hirosaki Univ.), Hiroyuki HOSHI

9:15 AM - 9:45 AM

[T5-O-2] (Invited)Paleoseawater osmium isotopic record and its implication for the paleoenvironment

【ハイライト講演】

*Hironao Matsumoto1 (1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

世話人よりハイライトの紹介:オスミウム同位体比は,大規模火山活動と海洋無酸素事変の詳細なリンケージを層序学的に実証した新しい化学層序の手法である.本講演ではオスミウム同位体比を用いた古環境変動や層序対比の研究手法・応用例について解説する.※ハイライトとは

Keywords:Osmium isotope ratio, Mid-Cretaceous, Cenozoic, Large Igneous Provinces

顕生代には大規模な生物絶滅、温暖化、海洋無酸素事変といった大規模な環境変動が多発しており、その原因究明のため多くのプロキシ研究がおこなわれてきた。近年特に注目を集めている手法が古海洋のOs同位体比(187Os/188Os)記録である。海洋のオスミウム同位体比は大陸からの高い同位体比(~1–1.5)を持つOsとマントル・宇宙由来の低い同位体比(~0.1)を持つOsのバランスで決定されている(Levasseur et al., 1999)。海洋でのOsの滞留時間は数万年ほどで海洋循環のタイムスケールよりも長い。そのため、海水のOs同位体比は海域によらずほぼ一定で、現在の海洋では~1と比較的高い値をとっている。これまでの研究では新生代を中心に、古海洋Os同位体比のコンパイルが進んでおり、大陸風化、熱水活動、そして宇宙起源物質流入に伴うダイナミックな変動が存在することが明らかになってきた(Peucker-Ehrenbrink and Ravizza, 2020)。また堆積岩に記録されたOs同位体比は強力な層序対比ツールとしても知られており、これまで化学層序がほとんど入れられなかった遠洋性深海チャートなどでも盛んに研究がおこなわれている(例えばNozaki et al., 2019)。
しかしながら、Os同位体比測定には時間がかかり、分析を行える施設が限られていることから、これまで白亜紀以前のOs同位体比のデータは大規模な海洋無酸素事変の周辺などに限られていた。そんな中、近年白亜紀中期における古海洋のOs同位体比データの蓄積が進み、連続的で高解像度なOs同位体比変動が明らかになってきている(例えば Matsumoto et al., 2022)。その結果、白亜紀中期の海洋のOs同位体比にはグラジュアルで小さい変動に加えて、海洋火成活動に由来すると考えられる短期的で大規模な変動が存在することが判明した。本発表では、現在の海洋でのOs同位体システムを説明した後に、堆積岩を用いたOs同位体比分析手法についてご紹介する。その後、これまで明らかになっている、新生代~白亜紀のOs同位体比変動をコンパイルし、それぞれのOs同位体比変動の特徴とその変動を引き起こした原因について議論したいと思う。また最後にこれまで報告されている、大規模火山活動発生時におけるOs同位体比変動パターンを比較し、火山活動の発生場所と海洋Os同位体比変動の関連についてついて議論を行う。
文献: Levasseur, S., Birck, J. L., & Allegre, C. J., 1999, Earth and Planetary Science Letters, 174(1-2), 7-23. Nozaki, T. et al., 2019, Journal of Asian Earth Sciences: X, 1, 100004. Peucker-Ehrenbrink, B., & Ravizza, G. E., 2020, Osmium isotope stratigraphy. In Geologic Time Scale 2020 (pp. 239-257). Elsevier. Matsumoto, H. et al., 2022, Nature communications, 13, 239.