10:00 AM - 10:15 AM
[T5-O-4] Reexamination of time-stratigraphic situation for the Neogene felsic volcanics, distributed in western Shimokita Peninsula, Aomori Prefecture : A proposal of “Hotokegaura Caldera”
Keywords:Neogene, Shimokita Peninsula, Hotokegaura Caldera, U-Pb age, Hinokigawa Formation, Ohata Formation
下北半島には新第三紀火山岩類が広範囲に分布している (例えば, 周藤ほか, 1988) . これら放射年代の研究については90年代までにK-Ar年代法を中心に若干行われ, 同層序は踏査を基軸とした岩相・地層分布により構築されていた (例えば, 上村・斎藤, 1957 ; 上村, 1975) . また, 2019年度大間原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合で示された研究結果 (以下, 2019年度審査会合研究結果) では下北半島においてジルコンFT・U-Pb年代が新たに報告され, 大畑層を構成する火山岩・火砕岩類が鮮新世 - 後期更新世 (約5 – 2 Ma) であることが示された. その結果, 同半島西部においても上村 (1975) が中期中新世とした檜川層の大部分は大畑層として一括された. また, 最近, 下北ジオパークの名勝地の1つである仏ヶ浦の緑色軽石凝灰岩から約4 MaのジルコンU-Pb年代が報告された (植田ほか, 印刷中) . しかし, 上村 (1975) は檜川層のデイサイト〜流紋岩質火山砕屑岩は檜川および男川流域, 牛滝地域に見られる盆状構造に対応して岩相が異なることを指摘しており, 放射年代学的研究を含めた岩相・地層分布のさらなる検討が必要である. そこで本研究では檜川層の模式地である檜川流域およびその周辺域と西岸域 (仏ヶ浦を含む福浦〜牛滝地域) に分布する珪長質火山岩および火砕岩について地質調査を行うとともに, ジルコンU-Pb年代測定を新たに5試料実施し, 新第三紀珪長質火山岩類年代層序の再検討を行った. 同年代測定は東京大学地殻化学実験施設設置のレーザーアブレーションICP質量分析装置を用いて行った.
檜川層の模式地である檜川流域に分布する岩相は無斑晶質流紋岩および黒曜岩 (ジルコンU-Pb年代 : 13.3 ± 0.2 Ma, 2σ) からなる溶岩および角礫岩が主体であり, これに石英斑岩が貫入している. 一方, 西岸域の岩相は流紋岩質結晶質凝灰岩(牛滝南岸 : 7.55 ± 0.06 Ma)や斑晶質デイサイト (丸山デイサイト) , 石英斑岩 (縫道石山 : 4.70 ± 0.08 Ma) , 緑色軽石凝灰岩 (牛滝北岸 : 4.35 ± 0.04 Ma) , 斑晶質デイサイト (福浦デイサイト) (福浦南岸 : 4.36 ± 0.06 Ma) からなる. 丸山デイサイトは風化が著しく, 下位の流紋岩質結晶質凝灰岩に整合的に覆っているため同結晶質凝灰岩と同様に後期中新統と考えられる. 石英斑岩は流紋岩質結晶質凝灰岩または基盤岩(長浜層)に貫入している. 仏ヶ浦〜牛滝地域に分布する緑色軽石凝灰岩は上位の福浦デイサイトに整合的に覆われており, 牛滝地域においてWNW-ESE方向の断層を境に流紋岩質結晶凝灰岩となる. 福浦地域において, 福浦デイサイトは基盤岩と高角度不整合で境されることが地形と産状から確認できる. また, 踏査による緑色軽石凝灰岩の分布から下位の流紋岩質結晶質凝灰岩とは高角度不整合で境される. 以上のことから, 緑色軽石凝灰岩およびその上位の福浦デイサイトはカルデラ形成時もしくはその直後の噴出物であると考えられ, 今回新たに「仏ヶ浦カルデラ」を提唱する. これは同分布域において明瞭な負の重力異常を示す (広島ほか, 1989) ことからも示唆される. 「仏ヶ浦カルデラ」およびその周辺域の火成活動史をまとめると以下のようになる ; 4.7 Maに珪長質マグマの活動が起こる (先カルデラ活動期) . 4.4 Maにカルデラ形成を伴う大規模噴火が起こり, カルデラ内に緑色軽石凝灰岩が充填する (カルデラ活動期) . その後, カルデラ内にデイサイト溶岩が噴出し, 溶岩ドームを形成した (後カルデラ活動期) .
カルデラ活動期に噴出した緑色軽石凝灰岩の岩相の大部分は塊状であるが, 同層上部では急冷縁を持つ軽石が卓越する. また, 同層中部ではマッドパッチや砂質凝灰岩からなる偽礫を含み, 下部ではやや北落ちの明瞭な層理を呈する. このことから, 「仏ヶ浦カルデラ」は浅海域で噴出した海底カルデラであると考えられる.
本研究においても「仏ヶ浦カルデラ」噴出物は2019年度審査会合研究結果で指摘されたように鮮新世の大畑層に対比されることが確認された. 一方で, 大畑層に対比された珪長質火砕岩類中には後期中新統のものが含まれていることが新たに見出された. この分布域や, 同層準と考えられる脇野沢安山岩類との層序関係については今後の課題である.
文献 周藤ほか (1988) 地質雑94, 155, 広島ほか (1989) 青森地域重力図(ブーゲー異常) 1:200,000, 植田ほか (印刷中, 2022) 地質雑, 上村・斎藤 (1957) 5万分の1地質図幅「大畑」, 上村 (1975) 5万分の1地質図幅「陸奥川内」.
檜川層の模式地である檜川流域に分布する岩相は無斑晶質流紋岩および黒曜岩 (ジルコンU-Pb年代 : 13.3 ± 0.2 Ma, 2σ) からなる溶岩および角礫岩が主体であり, これに石英斑岩が貫入している. 一方, 西岸域の岩相は流紋岩質結晶質凝灰岩(牛滝南岸 : 7.55 ± 0.06 Ma)や斑晶質デイサイト (丸山デイサイト) , 石英斑岩 (縫道石山 : 4.70 ± 0.08 Ma) , 緑色軽石凝灰岩 (牛滝北岸 : 4.35 ± 0.04 Ma) , 斑晶質デイサイト (福浦デイサイト) (福浦南岸 : 4.36 ± 0.06 Ma) からなる. 丸山デイサイトは風化が著しく, 下位の流紋岩質結晶質凝灰岩に整合的に覆っているため同結晶質凝灰岩と同様に後期中新統と考えられる. 石英斑岩は流紋岩質結晶質凝灰岩または基盤岩(長浜層)に貫入している. 仏ヶ浦〜牛滝地域に分布する緑色軽石凝灰岩は上位の福浦デイサイトに整合的に覆われており, 牛滝地域においてWNW-ESE方向の断層を境に流紋岩質結晶凝灰岩となる. 福浦地域において, 福浦デイサイトは基盤岩と高角度不整合で境されることが地形と産状から確認できる. また, 踏査による緑色軽石凝灰岩の分布から下位の流紋岩質結晶質凝灰岩とは高角度不整合で境される. 以上のことから, 緑色軽石凝灰岩およびその上位の福浦デイサイトはカルデラ形成時もしくはその直後の噴出物であると考えられ, 今回新たに「仏ヶ浦カルデラ」を提唱する. これは同分布域において明瞭な負の重力異常を示す (広島ほか, 1989) ことからも示唆される. 「仏ヶ浦カルデラ」およびその周辺域の火成活動史をまとめると以下のようになる ; 4.7 Maに珪長質マグマの活動が起こる (先カルデラ活動期) . 4.4 Maにカルデラ形成を伴う大規模噴火が起こり, カルデラ内に緑色軽石凝灰岩が充填する (カルデラ活動期) . その後, カルデラ内にデイサイト溶岩が噴出し, 溶岩ドームを形成した (後カルデラ活動期) .
カルデラ活動期に噴出した緑色軽石凝灰岩の岩相の大部分は塊状であるが, 同層上部では急冷縁を持つ軽石が卓越する. また, 同層中部ではマッドパッチや砂質凝灰岩からなる偽礫を含み, 下部ではやや北落ちの明瞭な層理を呈する. このことから, 「仏ヶ浦カルデラ」は浅海域で噴出した海底カルデラであると考えられる.
本研究においても「仏ヶ浦カルデラ」噴出物は2019年度審査会合研究結果で指摘されたように鮮新世の大畑層に対比されることが確認された. 一方で, 大畑層に対比された珪長質火砕岩類中には後期中新統のものが含まれていることが新たに見出された. この分布域や, 同層準と考えられる脇野沢安山岩類との層序関係については今後の課題である.
文献 周藤ほか (1988) 地質雑94, 155, 広島ほか (1989) 青森地域重力図(ブーゲー異常) 1:200,000, 植田ほか (印刷中, 2022) 地質雑, 上村・斎藤 (1957) 5万分の1地質図幅「大畑」, 上村 (1975) 5万分の1地質図幅「陸奥川内」.