10:15 AM - 10:30 AM
[T3-O-5] Antarctic Peninsula Ice Sheet fluctuations during the Holocene
Keywords:Antarctic Peninsula, ice sheet, Holocene, teleconnection, SAM
南極半島は地球上で最も温暖化が進んでいる地域の一つであり、過去50年間に南極氷床の融解が促進されている。しかし、このような衛星センサーなどからの記録は過去半世紀に限られており、地質学的な時間スケールでの気候変動や氷床融解の様子は解明されていない。2019年度に実施された白鳳丸30周年記念世界一周航海のうちの1つであるKH-19-6 Leg4航海において、南極半島北西の西ブランスフィールド海盆から良質の海底コアの採取に成功した。本研究では、KH-19-6-PC01の非破壊分析、堆積学、地球化学、珪藻群集解析などのデータを統合し、過去5000年間の南極半島氷床の変動を復元した。
約5000年前から3200年前のいわゆる完新世中期温暖期には、漂流岩屑(Iceberg rafted debris: IBRD)と黄金色藻シスト化石が多産する複数のイベントが検出され、脂肪酸バイオマーカー水素同位体比もこの地域における氷床融解水の流入量の増加を示した。これらの結果は、完新世中期に南極半島氷床が著しく融解したことを示唆している。また、有機炭素やBr含有量、珪藻の現存量から、この時期に海洋表層での生物生産が増加していたことが示された。完新世中期温暖期に相当する時代には、熱帯域ではラニーニャモードが発達していたことが報告されている。同時にアムンゼン海低気圧の強化と南極環状モード(SAM)の正偏差が示されることから、テレコネクションによって低緯度から南極半島周辺への暖気移流が促進されたことによって、南極半島氷床の融解が増加していた可能性がある。一方、約3200年前以降にはIBRDが減少し、生物生産も減少したことから、エルニーニョモードの発達に伴い氷床融解が減少したことが示唆された。
約5000年前から3200年前のいわゆる完新世中期温暖期には、漂流岩屑(Iceberg rafted debris: IBRD)と黄金色藻シスト化石が多産する複数のイベントが検出され、脂肪酸バイオマーカー水素同位体比もこの地域における氷床融解水の流入量の増加を示した。これらの結果は、完新世中期に南極半島氷床が著しく融解したことを示唆している。また、有機炭素やBr含有量、珪藻の現存量から、この時期に海洋表層での生物生産が増加していたことが示された。完新世中期温暖期に相当する時代には、熱帯域ではラニーニャモードが発達していたことが報告されている。同時にアムンゼン海低気圧の強化と南極環状モード(SAM)の正偏差が示されることから、テレコネクションによって低緯度から南極半島周辺への暖気移流が促進されたことによって、南極半島氷床の融解が増加していた可能性がある。一方、約3200年前以降にはIBRDが減少し、生物生産も減少したことから、エルニーニョモードの発達に伴い氷床融解が減少したことが示唆された。