9:15 AM - 9:30 AM
[T12-O-3] (entry) Middle Triassic radiolarian and conodont biostratigraphy and chemostratigraphy in the bedded chert of the Mino Belt
Keywords:Triassic, Radiolarian, Conodont, Ladinian, Anisian
三畳紀の気候は総じて乾燥から半乾燥の時代と考えられているが, 中期三畳紀の後期アニシアン(ペルソニアン)と後期ラディニアン(ロンゴバルディアン)では,それぞれ湿潤化イベントの存在が知られている. これら2回の湿潤化イベントの原因は不明であるが, これらが放散虫やコノドントといった中期三畳紀の主要な遠洋性・外洋性生物の多様化につながった可能性が示唆されている.そこで本研究では, 中期三畳紀の湿潤化イベントに対する放散虫およびコノドントの群集組成の変化を調べるために, 岐阜県坂祝町に分布する美濃帯の中部三畳系層状チャート(セクションO:Sugiyama, 1997)を対象に放散虫, コノドント化石層序と化学層序を検討した.セクションOの層状チャートは,パンサラッサ海赤道域の深海底堆積物と考えられている.セクション全体の層厚は,約21 mである.採取した試料は,層状チャートの珪質部(チャート)65試料と,頁岩部の43試料である.化学層序については,頁岩部の試料を用いて蛍光X線分析(XRF)を行い,主要・微量元素濃度について測定した. 本研究の結果,セクションOからはTR-2C帯(Triassocampe deweveri帯)からTR-5A帯(Capnuchosphaera帯)までの6つの放散虫化石帯が認められた.これらの放散虫化石帯が示す年代は,後期アニシアンから前期カーニアンに比較される.また, 前期ラディニアン(ファッサニアン)から後期ラディニアン(ロンゴバルディアン)にかけて,顕著な放散虫化石群集の変化が確認された.岩相層序からは,この放散虫群集の変化は, セクションOの基底から10.5 mに位置する厚い頁岩層(4 cm厚)付近で発生したと考えられる. この頁岩層を境にして, Muelleritortis noblisからMuelleritortis cochleataへの棘(spine)の形態変化および,Tritortis integritaからTritortis kretaensisへの形態変化が特徴的にみられた。 化学層序を検討した結果, 調査区間では顕著な海洋酸化還元状態の変化は見られなかった.一方, コノドントや魚類などの海洋性脊椎動物に由来すると考えられる生物起源アパタイトの濃度が, 前期ラディニアン/後期ラディニアン境界を越えて増加した. さらに, WやCIA(Chemical Index of Alteration)などの大陸風化指標(Nesbitt et al., 1982 ; Ohta et al., 2007)は, 後背地の化学風化が後期ラディニアンに強まったことを示唆する. 以上の結果は,後期ラディニアンの湿潤化イベントが,パンサラッサ海の海洋性脊椎動物の生産性の増加と放散虫の群集変化のきっかけとなった可能性を示唆する. 今後はそれらの因果関係について,詳細な検討を進める必要がある.
引用文献
・Nesbitt, H.W., Young, G.M., 1982, Nature, 299, 715-717
・Ohta, T., Arai, H., 2007, Chemical Geology, 240, 280-297
・Sugiyama, K., 1997, Bulletin of the Mizunami Fossil Mus., 24, 79-193
引用文献
・Nesbitt, H.W., Young, G.M., 1982, Nature, 299, 715-717
・Ohta, T., Arai, H., 2007, Chemical Geology, 240, 280-297
・Sugiyama, K., 1997, Bulletin of the Mizunami Fossil Mus., 24, 79-193