一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

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一般演題口演

実態調査

実態調査

2018年6月22日(金) 14:10 〜 14:40 第3会場 (6F 大会議室)

座長:羽村 章(日本歯科大学生命歯学部高齢者歯科学)

[O1-20] 在宅嚥下障害患者の服薬状況調査
―歯科からのポリファーマシー対策―

○松村 えりか1、野原 幹司2、深津 ひかり1、阪井 丘芳2 (1. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部、2. 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室)

【目的】
 高齢者におけるポリファーマシー対策は病院では一定の成果を上げているものの,在宅や施設では十分でないのが現状である。嚥下臨床では薬剤性嚥下障害が問題となっており,在宅医師や薬剤師だけでなく嚥下に関わる歯科も服薬状況に注目する必要がある。しかしながら現時点での在宅嚥下障害患者の服薬状況は明らかでない。本研究では歯科によるポリファーマシー対策を実施する前段階として,訪問嚥下診察の依頼があった在宅および施設における嚥下障害患者の服薬状況を調査した。
【方法】
 対象は平成28年1月~平成29年12月の2年間に訪問嚥下診療を行った65歳以上の在宅および施設居住者47名(男性18名,女性29名,平均年齢:81.0±7.0歳)とした。初診時の服薬数,高齢者の安全な薬物療法ガイドライン上の「特に慎重な投与を要する薬剤」の服用の有無,その中で嚥下機能を低下させる薬剤として報告されているドパミン拮抗薬(抗精神病薬,制吐剤など)の服用の有無を調査した。
【結果と考察】
 47名のうち服薬内容が明らかな43名の一人あたりの服薬数は6.2±3.0種類(最多:14種類,最少:0)であり,ポリファーマシー(6種類以上の服薬)であったのは21名(48.8%)であった。「特に慎重な投与を要する薬剤」を1剤以上服用している者は18名(41.9%)であり,そのうちドパミン拮抗薬を1剤以上服用しているのは6名(12.8%)であった。今回の調査から在宅および施設における嚥下障害患者の服薬状況が明らかとなり,嚥下臨床の視点からも,歯科が嚥下障害患者の服薬状況に注目する必要が示された。また,嚥下機能の面から歯科がポリファーマシー対策を実施できる可能性が示唆された。