一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題ポスター

連携医療・地域医療

連携医療・地域医療

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-039] 当会高齢者専門外来における歯科技工士の役割
―第5報 舌炎,口角炎を考慮した総義歯―

○中島 康人1、手塚 雅順1、松田 永智1、石川 敦之1、鈴木 裕美子1、坂上 美奈子1、小濱 晴湖1、杉浦 里美1、鈴木 貴子1、佐々木 幹1、渡辺 真人1、鈴木 聡行1 (1. 公益社団法人藤沢市歯科医師会)

【目的】
 当会要介護高齢者専門外来では開設当初より早期の形態・機能回復目的に診療所内に歯科技工士を配置しチームの一員として要介護高齢者歯科診療に従事している。今回模型上では判断できない軟組織の性状および患者行動観察から技工作業に反映できた症例を経験したので報告する。
【症例及び経過】
 87歳女性。主訴:口内炎,口角炎,舌の痛み。
 既往歴:腰椎圧迫骨折,脳梗塞,膵炎。食事は軟食。嚥下に問題はないがむせは時々あり。認知症はない。
 局所所見:口腔乾燥気味,口腔粘膜の爛れ,両側舌縁に発赤,舌苔を認めた。上下総義歯ともに古い粘膜調整剤が劣化し不適合,下顎左側小臼歯部破折。
 初診時処置:口腔清掃,含嗽目的にアズノール処方。下顎破折部修理,上下義歯裏層材の劣化部研磨。義歯新製で進めた.旧義歯調整とともに旧義歯を参考に義歯新製を進めていると症状も軽快。排列位置は上顎臼歯部を少し口蓋側に並べ咬合の安定を試みた。口腔内新製義歯装着時に上下正中が合わず顎位の偏位があり咬合採得の誤りを疑ったが,蝶番運動内の確認では正中が合うため,咬合時のズレと判断し正中が合うように咬合調整を行った。咬合に問題はないが下顎舌側の疼痛が残存し,輪番制で診療している新製装着時とは別の歯科医師により下顎舌小帯付近に唾石を確認。義歯調整を行い症状緩解した。
【結果と考察】
 古い粘膜調整材による衛生状態不良が引き金となり舌・口角の痛みを引き起こし,摂食・咬合に影響を及ぼし全身状態を悪化させる症例を経験した。輪番で勤務する歯科医師と連携することで模型上では知りえない軟組織の性状および患者行動観察から痛みの原因を明確にし,技工作業に反映することで患者に診療提供できたと考える。