一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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実態調査

[P一般-054] 歯科衛生士の就業状況と高齢者への口腔管理業務への意欲に関する分析

○三浦 宏子1、大島 克郎2 (1. 国立保健医療科学院 国際協力研究部、2. 日本歯科大学東京短期大学)

【目的】

 歯科衛生士による歯科保健サービスの提供体制の強化を図るためには、その就業状況を把握する必要がある。超高齢社会の歯科保健サービスとして、さらに重要性が増す口腔管理業務に対する意欲も含めて、本研究では関連要因を分析した。

【方法】

 対象は、3校の歯科衛生士養成校の同窓会員を対象に実施した。同窓会の選択は、50歳代の同窓生を輩出している旧設校とし、異なる3地域(九州、都内、北海道)に設置されている養成校同窓会会員とした。これらの対象者に就業状況に関する自記式質問紙調査を行い、537名の有効回答を得た(有効回答率:37.2%)。就業率や高齢者への口腔管理業務に対する意欲等に関する記述統計量を求めるとともに、高齢者への口腔管理業務に対する歯科衛生士の意欲に関する関連要因について調べた。

【結果と考察】

 就業率は全体で68.3%であり、年代間で有意差が認められたが(p<0.05)、年代ごとの女性の労働力状況では、通常女性の就業において観察されることの多いM字カーブとは異なる分布を示した。転職経験については、20歳代で40.7%の者が有しており、早期離職傾向が顕在化していた。希望業務内容については、歯科予防業務と歯周病管理を挙げたものが共に67%台と高率であった。一方、高齢者への口腔管理業務を希望した者は39.3%であった。年代別の業務希望状況を調べたところ、高齢者の口腔管理に関しては、年代の上昇とともに希望者割合が有意に高くなり、歯科予防業務や歯周病管理業務と年代との関係とは大きく異なった。また、現在の就労の有無に関連する要因について、多重ロジスティック回帰分析を用いて調べたところ、最も高いオッズ比9.91を示したのは「研修会参加状況」であった。これらの結果より、高齢者の口腔管理業務を支える歯科衛生士の拡充のためには、養成校での教育カリキュラムにおいてキャリア教育の提供など、早期離職防止の強化を図るとともに、40歳代以上の歯科衛生士に対する口腔管理に関する研修の提供機会の増加等を検討する必要性が示唆された。

(COI開示:なし)
(日本歯科大学東京短期大学 倫理審査委員会 承認番号 東短倫-218)