一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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実態調査

[P一般-056] 高齢者医療センターにおける認知症患者の残存歯数と義歯の使用に関する疫学的検討

○平場 晴斗1、石井 隆哉2、小泉 寛恭3、野川 博史1、篠原 光代4、松村 英雄1 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第III講座、2. 順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター、3. 日本大学歯学部歯科理工学講座、4. 順天堂大学医学部歯科口腔外科学研究室)

【目的】
 急速に高齢化が進展するわが国において,認知症患者の増加が重大な社会問題となっている。今回,高齢者医療センターに来院した初診患者の口腔内に対し,横断的調査を行い,認知症と診断された患者の残存歯数や義歯の使用状況について疫学的検討を行ったので報告する。
【方法】
 調査期間を2015年1月から2019年1月までの間とし,初診来院した患者(661名)を対象に,性別,年齢,現在歯,義歯使用の有無,認知症罹患の有無を集計した。集計結果に対して,Mann-Whitney U検定,ロジスティック回帰分析を用いて解析した。(順天堂東京江東高齢者医療センター倫理委員会 承認番号0304号)
【結果と考察】
 初診患者661名(平均年齢:72.1歳)における認知症患者群(DE群)の患者数は109名(平均年齢:81.2歳)であり,そのうち義歯を使用している患者は67名(61.5%)であった。また,平均残存歯数(平均±SD)は13.2±9.3本であった。対象群(non-DE群)552名(平均年齢:70.4歳)のうち義歯を使用している患者は229名(41.5%)であった。non-DE群の平均残存歯数(平均±SD)は19.5±9.2本であり,DE群よりも有意に高かった(P < 0.05)。認知症患者のリスク要因に関してロジスティック回帰分析の結果,上下残存歯数が20本未満の群は,20本以上の群と比較して認知症発症リスクが高いことがわかった。認知症の要因として残存歯数や義歯使用との相関については,先行研究と同様の傾向が認められた。現在歯や咬合接触などの減少は,筋力や栄養摂取量の低下などにも影響してくる。今後も残存歯の状態や,義歯の使用状況,口腔衛生状態を含めさらに継続的な調査を進めていく必要があると思われる。
(COI 開示:なし)
(順天堂東京江東高齢者医療センター倫理委員会 承認番号0304号)