一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(ポスター)

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実態調査

[P一般-059] 歯科的介入のない特別養護老人ホーム入所者の口腔内状況に関する実態調査

○進藤 彩花1、草野 緑1、高野 梨沙2、矢尾 喜三郎1,3、上田 智也1、大岡 貴史1 (1. 明海大学歯学部機能保存回復学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 明海大学歯学部社会健康科学講座口腔衛生学分野、3. 矢尾歯科医院)

【目的】
本研究では,定期的な歯科診療がなされていない特別養護老人施設での口腔内の現状や問題点を把握することを目的とし,特別養護老人ホーム入所者の口腔衛生管理に関する実態調査を行ったので報告する.
【方法】
埼玉県の某特別養護老人施設での入居者88人を対象に,事前に施設の職員によるアンケートと歯科検診を行った.アンケートでは口腔清掃の自立性・口腔清掃への拒否・口腔ケアの自発性・義歯の脱着・含嗽可能であるかを調査し,歯科検診にて残存歯や口腔衛生状態など口腔内状況について調査した.また,歯科検診の結果から蝕歯,歯周病,抜歯,義歯新製,粘膜疾患の治療の必要性と今後の介入方針として「経過観察」「歯科衛生士による介入」「要治療」の3分類にわけ,それらの集計・検討を行った.
【結果と考察】
口腔清掃の自立性において,自立は31名,一部介助は28名,全介助は29名だった.拒否が「ない」が53名,「時々ある」が19名,「いつもある」が14名であった.口腔清掃の自発性では,「ない」が70名,「時々ある」が8名,「いつもある」が10名であった.義歯の脱着では,義歯を使用しているのが34名で,そのうち23名が「できる」,11名が「できない」であった.含嗽可能は,可能が60名,不可能が25名であった.歯科検診の結果から,齲蝕治療が必要な者が15名,歯周病の治療が必要な者が49名,抜歯が必要な者が18名,義歯新製が望ましい者が16名であり,粘膜疾患の治療が必要な者はいなかった.今後の介入方針では,「経過観察」が25名,「歯科衛生士による介入」が25名,「要治療」が38名であった.また,要治療の38名のうち,口腔清掃が自立している者は17名,一部介助は10名,全介助は11名だった. 今回の調査結果から,介護福祉施設の入居者の多くが歯科疾患を抱えており,歯科診療や専門的な口腔清掃指導の必要性が認められた.また,歯科診療とは別に日常の口腔清掃においては「自立」と分類される者でも職員の介助が必要な場合も多かった.そのため,高齢者施設入所者の口腔内を望ましい状態に保つためには,適切な歯科診療の供給や施設職員への保健指導などが必要であると推察された.
(COI開示:なし)(明海大学歯学部倫理委員会 A1710)