一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(ポスター)

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加齢変化・基礎研究

[P一般-082] 口腔と下気道の炎症性疾患との関連
F. nucleatumによる呼吸器からの炎症性サイトカイン誘導-

○髙橋 佑和1,2、今井 健一2、飯沼 利光1 (1. 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座、2. 日本大学歯学部細菌学講座)

【目的】
 歯周病原菌と誤嚥性肺炎との関連は以前から知られているが、最近、歯周病が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪因子であることが欧米のみならず我が国でも報告されている。COPDは肺胞が破壊された肺気腫と慢性気管支炎の総称で、世界の死因第3位となっている。このCOPDは加齢とともに徐々に進行し、増悪することにより、それによる死亡率は高まる。これに関し、口腔ケアが肺炎のみならずCOPDの予防に有効との報告がある。このことから、歯周病は下気道の炎症惹起に深く関与していると考えられているが、その機序については不明である。そのため、この問題解決に向け歯科医師が医療連携により携わるべき領域の拡大には、分子レベルでのエビデンスの発信が不可欠と考える。
 そこで演者らは、誤嚥した口腔細菌が下気道において肺炎の発症とCOPDの増悪に重要な役割を演じる炎症性サイトカインを誘導すると考え本研究を行った。

【方法】
 種々の呼吸器上皮細胞に歯周病原菌と肺炎レンサ球菌を添加し、PCR及びELISA解析を行った。さらに、マウスに口腔細菌及び肺炎起因菌を誤嚥させた後、呼吸器等を摘出し炎症性サイトカイン量を測定した。

【結果と考察】
 種々の歯周病原菌および唾液中に多く含まれる常在菌を気管支上皮細胞に添加した結果、F. nucleatumが最も強く好中球浸潤や組織破壊等に関わるIL-8とIL-6の産生を誘導した。その作用は誤嚥後、菌が最初に作用する咽頭、さらに呼吸器の末端である肺胞の上皮細胞においても認められた。さらに、F. nucleatumにより誘導されたサイトカイン量は、肺炎球菌によるものと比較し数倍以上高かった。同様の結果は、プライマリー呼吸器上皮細胞においても認められた。また、F. nucleatumはマウスの下気道のみならず血中においてもサイトカイン産生を強力に誘導することが明らかとなった。
 肺炎とCOPDは共に高齢になるほど罹患率が高まるとの報告があり、これは口腔機能が低下している高齢者が、慢性的に唾液を誤嚥することにより、歯周病原菌がIL-8等の誘導を介して下気道の炎症に直接的に関与しているためと考えられる。演者らは前報にて、歯周病原菌が肺炎起因菌のレセプターの発現を誘導することを報告しており、これらのことから下気道の炎症抑制には口腔細菌のコントロールが重要であると考える。(COI開示:なし)