The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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全身管理・全身疾患

[P一般-098] 広島口腔保健センターにおける高齢患者の歯科治療時の薬物的行動調整法についての検討

○濵 陽子1、吉田 光由2、津賀 一弘2 (1. 一般社団法人広島県歯科医師会 広島口腔保健センター、2. 広島大学院医歯薬保健学研究科先端歯科補綴学)

【目的】

 高齢者は加齢に伴う機能低下に起因する合併症により,歯科治療時に心疾患や高血圧症などの循環器疾患をはじめ全身的な配慮を必要とすることが多くみられる.また,認知症などにより歯科治療に対して協力を得ることが困難でその対応に苦慮する症例もしばしば経験する.今回,広島口腔保健センターを受診した65歳以上の患者に対し,歯科治療にあたり実施した薬物的行動調整法について調査・検討を行ったので報告する.

【方法】

 2017年1月から2019年12月までに当センターを受診した65歳以上の患者を対象とし,診療録・麻酔記録をもとに,患者背景・処置内容・行動調整法・麻酔管理方法や偶発症などについて調査した.なお,診療録および麻酔記録の閲覧は診療室内で行い,匿名化した資料を用いて個人情報に配慮した.

【結果】

 調査対象とした症例は1133例(男性508例・女性625例),平均年齢は76.1±7.8歳であった.このうち薬物的行動調整法を要した患者は43例であり全体の3.8%を占めていた.選択した薬物的行動調整法はすべて静脈内鎮静法であった.性別は男性10例・女性43例,平均年齢は77.6±7.4歳,静脈内鎮静法選択理由は認知症による歯科治療困難が23例(53.5%),歯科治療恐怖症が13例(30.2%),外科的過侵襲による鎮静目的が7例(16.3%)であった.処置内容(重複あり)は外科処置32例,保存処置14例,補綴処置9例であった.偶発症は覚醒遅延1例であった.

【考察】

 今回の結果から,歯科治療時に協力性が得られない高齢者,あるいは歯科治療に対する恐怖心が強く循環動態にも影響を与える可能性のある患者に対して静脈内鎮静法の応用は有用であると考えられた.認知症患者は口腔内を触ることに対して拒否が強いものの,静脈路確保は比較的実施可能で,大きな問題点はなかった.偶発症に覚醒遅延がみられたことから,循環系への影響を十分に考慮し過剰鎮静にならないように投与量の調整に注意が必要と考えられた.

(COI開示:なし)

(日本歯科麻酔学会倫理審査委員会 1920‐2)