一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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歯科衛生士シンポジウム

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老年歯科における歯科衛生士のこれまでの10年、これからの10年を考える

座長:石黒 幸枝(米原市地域包括医療福祉センターふくしあ)、菅野 亜紀(東京歯科大学短期大学 歯科衛生学科)

[SY5-3] 地域包括ケアにおける認定歯科衛生士の役割 -途切れない歯科支援を-

○加藤 真莉1 (1. 杉並区歯科保健医療センター)

【略歴】
日本医歯薬専門学校歯科衛生士科 卒業
2012年:
杉並区歯科保健医療センター勤務
2014年:
杉並区歯科保健医療センター主任歯科衛生士
2016年:
老年歯科医学会認定歯科衛生士 取得
2018年:
障害者歯科学会認定歯科衛生士 取得

勤務地である杉並区歯科保健医療センターは、杉並区歯科医師会立の医療機関として一般の歯科受診が困難な障害者・高齢者・有病者を対象に外来・訪問診療を行っている。歯科医師会との知識や技術、診療情報の共有及び、行政との連携も重要な役割である。そのため、従事する歯科衛生士には、障害・疾病・老年期等に関する専門知識、対応技術に加え、連携を円滑に進めるためのコーディネート力も求められる。

 訪問診療開始から9年が経過し、在宅訪問は月平均213件、さらに施設訪問、病院連携、歯科衛生士による居宅療養管理指導を行う拠点「口腔ケアステーション」の設置など、老年分野における業務拡大は著しい。また口腔ケア・機能への関心の深化、ニーズの増加を受け、区民・多職種向け講演会の実施等、歯科衛生士が主体となる活動の場も増加した。

 そのような環境下において感じた「自信をもって患者さんと向き合いたい」という思いが認定歯科衛生士を目指したきっかけである。認定資格の取得は、患者対応だけでなく多職種連携や講演など対外的な活動においても、自らの専門性を示す客観的評価として自信につながった。また、学び続けるモチベーションの基盤となっている点も有意義であったと考える。

 要介護高齢者を支えるためには各職種と分野を超え連携することが大切であり、口腔にとどまらず全身、生活へと見通せる広い視野が求められる。そして歯科衛生士は患者、家族の身近な支援者として、歯科と多職種をつなぐ役割を果たす。しかし介護現場の専門職として働く歯科衛生士の数は増えつつあるものの、その知名度は未だ十分でない。

 また介護現場では、う蝕や歯周病が重症化し汚染された口腔や、摂食嚥下機能が著しく低下した状況を目にする機会も多く、何らかの理由により歯科の介入が途切れてしまう要介護高齢者の現状が窺える。歯科衛生士が役割を果たすことにより、高齢化、疾病の進行、生活動態に合わせた途切れない支援をしていくことが、これからの10年に抱く展望である。

 本シンポジウムでは、歯科衛生士が口腔健康管理の専門職として周知され、地域包括ケアの重要な職種として活躍できるように、認定歯科衛生士取得の意義とともに考えてみたい。また歯科衛生士が各々の立場で察知したニーズを継続した支援につなげていくためには何が必要であるか、歯科医師会立の診療機関で働く認定歯科衛生士の役割を再考する機会としたい。

(COI開示なし)