一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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歯科衛生士シンポジウム

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老年歯科における歯科衛生士のこれまでの10年、これからの10年を考える

座長:石黒 幸枝(米原市地域包括医療福祉センターふくしあ)、菅野 亜紀(東京歯科大学短期大学 歯科衛生学科)

[SY5-5] 老年歯科分野の将来に向けた認定歯科衛生士の展望

○渡邉 理沙1 (1. 医療法人静心会 桶狭間病院藤田こころケアセンター)

【略歴】
2006年:
専門学校 宮城高等歯科衛生士学院 卒業
2006年:
藤田保健衛生大学病院(現 藤田医科大学病院)歯科口腔外科 常勤
2017年:
東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野 入学
2017年:
前田デンタルクリニック 非常勤
2019年:
医療法人静心会 桶狭間病院藤田こころケアセンター歯科 常勤
2019年:
朝日大学歯学部口腔病態医学講座 障害者歯科学分野 非常勤助教

一般社団法人 日本老年歯科医学会 代議員
公益社団法人 日本歯科衛生士会 認定分野B老年歯科認定歯科衛生士
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 評議員・認定士

歯科衛生士の国家資格を取得して14年になる。歯科衛生士を目指した当時、すでに少子高齢化は社会問題として提起されており、超高齢社会へと進展した。この間、医療・介護・福祉など多岐に役割が見出され、歯科医療は多様に変化を重ねてきた。それらは歯科衛生士の需要の広がりにも結びついていると感じている。

歯科衛生士を志望し、1年でも多く学生生活を送りたいという単純な動機で、当時は少数だった3年制の養成校を選択したが、そこでの教育内容は国家試験合格へ向けたものに加えて、超高齢社会で適応する人材になるためのカリキュラムが編成されており、それらの講義をきっかけに摂食嚥下障害に興味を持った。その興味は、“今後間違いなく増加する摂食嚥下障害患者に対応できる歯科衛生士になる!”という想いに発展し、研鑽できる環境を就職先に選択した。結果的に摂食嚥下障害に限定せず、急性期医療に関連する全身疾患の病態や治療・薬剤などの知識を得て、医療機関における疾患発症時から終末期に至る対応を経験した。日常臨床が、疾患や障害を有する老年期に該当する患者への対応が多く、その専門性と特化した知識を、指導的に発信する根拠となるものが必要だと考え、本学会の認定歯科衛生士を取得するに至った。

認定取得によって就業先の評価に反映されたことや、自信がついたことは個人的なメリットであった。しかし実状は、認定取得の有無による明瞭な境界がないため、認定歯科衛生士の質の担保が急務なのではないかと思う。自らの存在効果を打ち出していくことは、老年歯科分野の歯科衛生士の専門性の構築に直結するだろうし、そのためには診療だけに留めず研究レベルで見出すことが必要になる。それらを先導切って行う立場が、すでに認定を取得している我々であると思う。また、この分野に関する、より多くの知識を有しているのならば、指導者としての役割を担う必要もあり、卒前・後いずれにも教育的に還元することが、10年先への希望を作り出すことに直結するのだろうと考える。
本シンポジウムでは、演者の認定取得後の役割や日常のやりがいを提示し、一方で課題の先にある展望について、共有する場にしたいと考えている。
(COI開示:なし)