[SY6-2] 地域歯科診療所における、口腔機能低下症と診断された人に対する管理の具体例
【略歴】
2005年:
東京医科歯科大学歯学部 卒業
2009年:
東京医科歯科大学大学院 顎顔面補綴学分野 修了
2010年:
日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 非常勤医員
2010~2011年:
カナダ・アルバータ大学リハビリテーション学部 Visiting Professorとして留学
2012年:
医療法人社団 敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科 副院長(現職)
2015年:
社会医療法人 祥和会 脳神経センター大田記念病院 歯科非常勤医(現職)
2019年:
グロービス経営大学院 経営研究科 専門職修士課程(MBA)大学院生
2005年:
東京医科歯科大学歯学部 卒業
2009年:
東京医科歯科大学大学院 顎顔面補綴学分野 修了
2010年:
日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 非常勤医員
2010~2011年:
カナダ・アルバータ大学リハビリテーション学部 Visiting Professorとして留学
2012年:
医療法人社団 敬崇会 猪原歯科・リハビリテーション科 副院長(現職)
2015年:
社会医療法人 祥和会 脳神経センター大田記念病院 歯科非常勤医(現職)
2019年:
グロービス経営大学院 経営研究科 専門職修士課程(MBA)大学院生
口腔機能低下症についての診断方法や有病率などについては、様々な報告がなされているが、具体的な管理方法などは、まだほとんど報告がなされていない。
当院では、原則として全ての初診患者に対しEAT-10を含む9枚の問診票を使用している。その際、問診票の記入がスムーズに行えないケースや、聞き取りが必要と思われる場合には、ケアマネジャー資格を持つ歯科衛生士が帯同し、できる限り日常の生活に関する情報を得るようにしている。その後、必要と判断される場合に口腔機能精密検査を実施し、口腔機能低下症該当者やその予備群には、日常生活の注意事項を記載した文書を使用して複数回にわたり説明を行い、情報の提供と行動変容を促している。さらにケースによっては医科主治医や、独居高齢者などの場合は地域包括支援センターなどに情報提供を行う場合もある。
(ケース1)73歳女性:骨粗鬆症によるBP製剤服用以外に大きな疾患はないが、生活歴としては独居で生活保護受給者であった。検査項目の中ではオーラルディアドコキネシスと舌圧、残存歯数、EAT-10が該当した。また問診より、ムセやすく、食事に偏りが認められ、炭水化物中心の柔らかいものを食べていたこともわかった。下顎に両側遊離端義歯を新製し装着すると同時に、食事の指導と、ペコパンダによる自主訓練の指導を行ったところ、食事にバラエティーが広がり、舌圧も大幅に向上、ムセも改善し、大変感謝された。
(ケース2)88歳男性:かかりつけ歯科医の閉院に伴い、上顎小臼歯の痛みを主訴に当院へ転院した。上顎の両側臼歯部が欠損していたが、当初は主訴部位のみの治療を希望され、義歯作製は希望されなかった。主訴への治療が終了したのち、口腔機能精密検査を実施し、該当項目に対する説明を行ったところ、「せっかくだったら作ってみようかな」と考えを変えられ、義歯治療を実施した。治療後、デンタルプレスケールのデータが明らかに向上していることを画面を見て実感されると同時に、食事内容もバラエティーに富むようになり、義歯治療を受けてよかったとの感想を得ることができた。
【結果と考察】
口腔機能低下症の対応とは、決して機能訓練を行うことだけではない。患者の生活面の情報を把握し、そこにアプローチする一つの手段として、口腔機能精密検査のデータを活用し、場合によっては義歯作製に繋げることも、大切な口腔機能低下症への対応であると考える。