The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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学術シンポジウム

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口腔機能低下症の「疑問」に応える

座長:水口 俊介(東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野)、池邉 一典(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野)

[SY6-4] 口腔機能低下への早期対応の検討

○津賀 一弘1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)

【略歴】
1985年:
広島大学歯学部卒業
1989年:
広島大学大学院歯学研究科修了、歯学博士
1989年:
広島大学歯学部助手(歯科補綴学第一講座)
1991年:
国家公務員等共済組合連合会広島記念病院広島合同庁舎診療所歯科医師
1994年:
広島大学歯学部附属病院講師(第一補綴科)
1995年:
文部省在外研究員(スウェーデン王国・イエテボリ大学)出張
2002年:
広島大学大学院医歯薬学総合研究科助教授(顎口腔頚部医科学講座)
2014年:
広島大学大学院医歯薬保健学研究院教授
2017年4月~2019年4月:
広島大学病院主席副病院長併任
2019年4月~:
広島大学副学長(医系科学研究担当)併任

オーラルフレイルとは、口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下に繫がる負の連鎖が生じることに対して警鐘を鳴らした概念であり、「第1レベル:口の健康リテラシーの低下」「第2レベル:口のささいなトラブル」「第3レベル:口の機能低下」「第 4レベル:食べる機能の障がい」の4つのフェーズで捉えられている。 この第3レベルの中に、口腔機能低下症が位置していると定義付けられている。今日、オーライフレイルは国民への啓発のキャッチフレーズであり、口腔機能低下症は検査診断による疾患名であることから、オーラルフレイルの周知を口腔機能低下の早期発見に繋げることが重要といえる。

そこで日本老年歯科医学会では厚生労働省委託事業として、口腔機能低下をより早期に発見し、歯科受診をすすめるための指標となるような検査項目の設定を検討した。2018年度ならびに2019年度に全国の大学病院等14の施設において、欠損補綴等の治療を終え、メインテナンスのために歯科受診をしている人々181名(男性78名、女性103名)を対象として、口腔機能低下症に関する7項目の検査(代替法も一部含めて)ならびにその他の現時点で利用可能な口腔機能検査(口唇閉鎖力、開口力、色変わりガムを用いた混和力検査、咀嚼可能食品調査)を行った。

検査結果の分布、検査項目間の相関関係や口腔機能低下症の発現率等を分析検討し、口腔機能低下症の診断基準にまったく当てはまらない人々を選択できる検査項目の選定を試みたところ、この人々はオーラルディアドコキネシス「カ」が6.4回以上であることが明らかとなった。すなわち、5秒間に「カ」が32回以上発音できない場合、何かの口腔機能低下がある可能性があり、歯科での口腔機能低下症の検査を受けてみるよう勧めても良いものと考えられた。

 口腔機能低下を早期に発見し、早期に介入することが口腔機能を維持・向上させるためには重要と言われている。今後、オーラルフレイルに関わるチェックシート等を用いたちょっとした気づき、簡単な検査を通じた地域での歯科専門職以外からの声かけといったことを通じて、口腔機能低下症の恐れのある者をスクリーニングできる方法を確立していければと考えている。