一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会

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[P一般-004] パーキンソン病患者における運動機能障害と咀嚼運動との関連性

○佐野 大成1、岩下 由樹1、道津 友里子2、梅本 丈二1、溝江 千花1、梅田 愛理1 (1. 福岡大学病院 摂食嚥下センター、2. 高良台リハビリテーション病院)

【目的】
パーキンソン病患者は疾患の進行に伴い摂食嚥下障害を来し、食品窒息のリスクがあることが知られている。今回パーキンソン病(PD)患者の運動機能と咀嚼運動の関係について調査したので報告する。
【方法】
2019年9月から2020年8月の間に福岡大学病院脳神経内科に入院し、意思疎通及び食事の自己摂取可能で、Eichner分類を参考に天然歯または義歯によって咬合支持が4つ維持できているPD患者24名(男性12名、女性12名、平均年齢68.8±9歳)を対象とした。疾患の重症度(Hoehn&Yahr分類)、運動機能(MDS-UPDRS partⅢ)、認知機能(MMSE)、罹病期間、食形態スコア(FOIS)、栄養状態(Alb)、舌圧(JMS)、咀嚼計(SHARP)を用いた咀嚼運動(咀嚼回数、食事時間、咀嚼速度)について調査を行った。またUPDRS partⅢスコア32をカットオフポイントとし、運動機能障害軽度/中等度の2群へ分類後に群間比較、咀嚼運動と相関のある項目について検討した。
【結果と考察】
24名の平均値は、H&Y分類3.1、UPDRS partⅢ29.6±14、MMSE27.1±2、罹病期間10.3±5年、FOIS6.6±0.5、Alb4.0±0.3g/dl、舌圧30.5±9kPa、咀嚼回数1018±563回、食事時間19.5±9分、咀嚼速度52.4±19回/分であった。
運動機能障害軽度及び中等度群のUPDRS partⅢスコアの平均はそれぞれ17±6、42±6であった。2群比較では、咀嚼速度のみに有意差を認めた(p=0.04)。軽度群において咀嚼速度は舌圧と有意な相関関係を示した(r=0.7、p<0.01)。中等度群において咀嚼速度は、Alb(r=0.78、p<0.01)、罹病期間(r=-0.6、p=0.04)と有意な相関関係を示したが、舌圧とは有意な相関関係を示さなかった。両群ともに咀嚼速度はMMSE、UPDRS partⅢ、FOISと有意な相関関係を示さなかった。
運動機能障害が軽度の場合、舌圧が高いほど咀嚼速度は上昇した。中等度の場合は、栄養状態が維持されているほど咀嚼速度は上昇し、罹病期間が長くなるほど低下する傾向にあった。以上の結果から、PD患者の運動機能障害は、舌運動よりも咀嚼運動に影響しやすいことが示唆された。
(福岡大学 倫理審査委員会承認番号 H20-03-005)