The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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一般部門

[P一般-021] 多系統萎縮症患者の経口摂取を支援し看取りまでQOLの維持できた症例

○長瀬 麻樹1、郷田 瑛1、木下 有文1、徳永 淳二1、松原 ちあき2、古屋 純一3 (1. 逗子メディスタイルクリニック、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野、3. 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座)

【目的】
 多系統萎縮症は小脳性運動失調、パーキンソンニズム、自律神経症状を呈する進行性の疾患である。中でも摂食嚥下障害は高頻度に見られ、症状が進行すると経管栄養が必要となることも多い。本症例では、経管栄養を希望しない高齢の多系統萎縮症患者に対して、訪問診療によって看取りまで経口摂取を支援した経過を報告する。
【症例の概要と処置】
 81歳の女性。多系統萎縮症と74歳の時に診断され、その後、徐々に小脳機能障害が目立つようになり、食事量の減少と食事中のむせをきっかけに訪問診療にて受診した。初診時、日常生活自立度はB−1、食事は常食を自力摂取。初回診察時には水分摂取でむせが見られ、口腔の食塊保持不良、嚥下反射惹起遅延が疑われた。短期目標は、安全な水分摂取の確立、口腔衛生状態の改善、長期目標は可及的な経口摂取の維持とし、水分のトロミ付与、VE検査に基づく嚥下代償法と食形態の指導、月2回の口腔衛生管理を開始した。
【結果と考察】
 介入開始1年後には運動機能の低下が著しくなり、準備期、口腔期障害によるさらなる食事時間の延長が問題となった。一方、VE検査では嚥下反射の遅延を認めるものの、咽頭クリアランスは保たれていた。食事に時間がかかったとしても食形態は下げたくないという本人の強い希望があり、引き続き代償法として交互嚥下を用いた食事を継続した。介入2年後には咽頭期障害が顕著になり、ミキサー食へ変更となった。介入4年後には終末期となったが、本人は経管栄養を希望されず、家族の献身的な介護により2時間かけて濃厚流動食を経口摂取されており、ご逝去の直前まで経口摂取を継続した。約4年間の関わりを通して、長期の入院はなく自宅で家族と穏やかに過ごすことができた。高齢者は、終末期をどのように過ごしたいか考えている方が多い。本人や家族との対話のもとで口腔管理と食事支援を長期的計画をもって行うことで、最後まで経口摂取を維持し、患者のQOLの維持に貢献できたと考える。(COI開示:なし)