一般社団法人日本老年歯科医学会 第33回学術大会

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ポスター発表4 実態調査

[P4-14] 当院における歯科訪問診療の実態調査と新型コロナウイルス感染症の影響

○煙山 修平1、尾立 光1、末永 智美2,3、金本 路2、三重野 花菜1、吉野 夕香4、川上 智史1,5、會田 英紀1 (1. 北海道医療大学歯学部高齢者・有病者歯科学分野、2. 北海道医療大学病院在宅歯科診療所、3. 北海道医療大学病院歯科衛生部、4. 北海道医療大学病院地域連携室、5. 北海道医療大学歯学部高度先進保存学分野)

【目的】
当院では、平成17年から地域の保健医療機関や介護事業所などと連携を図りながら歯科訪問診療を行っている。 今回、新型コロナウイルス感染症の流行が当院で歯科訪問診療を実施している患者の欠損歯列の病態の推移にあたえる影響を調べることを目的とした。
【方法】
令和1年4月~令和3年9月までの2年半に歯科訪問診療を実施した全ての患者を対象として、後ろ向き調査を行い、 当院における歯科訪問診療の実態を調査した。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行が歯科訪問診療におよぼす影響を調べるために、口腔衛生管理の中断前後にそれぞれ6カ月以上歯科的介入を行った高齢者を調査対象とした。歯科衛生士による口腔衛生管理が中断した期間はさまざまであったが、今回は2カ月中断した高齢者施設と4カ月中断した高齢者施設に着目した。
【結果と考察】
令和1、2年度ならびに令和3年度の半年間の患者総数はそれぞれ280名(平均85.9±8.7歳、男性/女性: 96/184名)、 263名(平均85.6±10.4歳、男性/女性:86/177名)、195名(平均86.6±10.8歳、男性/女性:56/139名)であった。また、延べ診療件数はそれぞれ4,177件、2,903件、1,884件であった。令和2年度は新型コロナウイルス感染症の流行による歯科訪問診療の制限があり、延べ診療件数は令和1年度と比較して約30%減少していた。一方、令和3年度の延べ診療件数は回復傾向が認められた。
口腔衛生管理の中断期間が4カ月の患者33名のうち、治療再開後6カ月以内に残存歯数が減少した患者は5名であった。抜歯に至った原因は、重度歯周疾患と歯肉縁下におよぶ齲蝕であり、口腔衛生状態不良が主な原因の一つであると考えられる。一方、口腔衛生管理の中断期間が2カ月の患者6名では残存歯数の変化はみられなかった。 本研究での限られた症例数ではあるが、4カ月間の口腔衛生管理の中断は、歯列欠損拡大のリスクになることが示唆され、定期的かつ継続した口腔衛生管理を行うことは、口腔環境の維持・向上を行うとともに、歯科疾患の早期発見・早期治療につながり、欠損歯列の拡大を防止する期待ができると考える。
(COI開示:なし)
(北海道医療大学 臨床研究倫理審査承認番号 第2021_014号)