[P8-02] オーラルアプライアンスを用いた咬傷防止の2症例
【目的】
近年,8020運動の浸透や口腔衛生への関心の高さにより,高齢となっても歯が多く残っている傾向がある。しかし,要介護状態になった時の残存歯のケアと治療を継続することは困難なことが多い。その困難と思われる課題の一つとして咬傷がある。歯科診療のみならず,看護及び介護現場において咬傷に対する対応を求められているが,これといった決定打がなく,削合や抜歯といった歯科医療としては後退した処置を選ばざるをえない状況がある。今回,咬傷防止のためにオーラルアプライアンス(OA)を試みた症例を2例経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
症例1:78歳,女性。既往にアルツハイマー型認知症,うつ病,脳梗塞後遺症あり。X年4月消化管内視鏡検査時に上顎に歯牙脱臼と頬粘膜損傷ができた。当科にて抜歯し縫合を行った。その後,VEの結果から,経皮的胃ろう増設術を行う。退院時の看護総括にも継続的な歯科治療が必要とされたため,当科にて訪問歯科診療を継続した。X年5月,不随意運動により右上口唇に咬傷が新たにできたため,OAを作成する。装着後,裂傷がみられたので削合調整。外れやすいということでレジン添加し固定を試みた。8月に右上口唇の裂傷は寛解。その後は経過観察。
症例2:66歳,女性。既往にピック病,アルツハイマー型認知症,摂食障害,栄養障害,嚥下障害あり。X―4年前に経皮的胃ろう増設術を行う。X年8月,てんかん発作が起きた時に下口唇に咬傷ができることに対して,対策を求められたため,OAを作成し装着する。その後咬傷は軽快し, てんかんの発作が治まっているので, 経過観察。 なお,本報告の発表について双方の患者の代諾者から同意を得ている。
【結果と考察】
咬傷は様々な原因により発症し,また複合的な因子が複雑に絡むことから対応が難しいことが多い。特に間歇的に起こる過緊張や痙攣は予測が困難なので,常に発生に備えた咬傷予防が必要になる。 咬傷を早期に発見し, 治療し再発防止の手段を講じる。また介護においては,患者本人との意思疎通が難しい場合,介護者にもOAの装着や清掃方法を習得してもらう必要がある。また,O A作成に当たって,安全に印象採得を行える状況かどうかの見極めと,不随意運動に対してどこまで固定された装置が効果を発揮できるかが, 重要であることが示唆された。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)
近年,8020運動の浸透や口腔衛生への関心の高さにより,高齢となっても歯が多く残っている傾向がある。しかし,要介護状態になった時の残存歯のケアと治療を継続することは困難なことが多い。その困難と思われる課題の一つとして咬傷がある。歯科診療のみならず,看護及び介護現場において咬傷に対する対応を求められているが,これといった決定打がなく,削合や抜歯といった歯科医療としては後退した処置を選ばざるをえない状況がある。今回,咬傷防止のためにオーラルアプライアンス(OA)を試みた症例を2例経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
症例1:78歳,女性。既往にアルツハイマー型認知症,うつ病,脳梗塞後遺症あり。X年4月消化管内視鏡検査時に上顎に歯牙脱臼と頬粘膜損傷ができた。当科にて抜歯し縫合を行った。その後,VEの結果から,経皮的胃ろう増設術を行う。退院時の看護総括にも継続的な歯科治療が必要とされたため,当科にて訪問歯科診療を継続した。X年5月,不随意運動により右上口唇に咬傷が新たにできたため,OAを作成する。装着後,裂傷がみられたので削合調整。外れやすいということでレジン添加し固定を試みた。8月に右上口唇の裂傷は寛解。その後は経過観察。
症例2:66歳,女性。既往にピック病,アルツハイマー型認知症,摂食障害,栄養障害,嚥下障害あり。X―4年前に経皮的胃ろう増設術を行う。X年8月,てんかん発作が起きた時に下口唇に咬傷ができることに対して,対策を求められたため,OAを作成し装着する。その後咬傷は軽快し, てんかんの発作が治まっているので, 経過観察。 なお,本報告の発表について双方の患者の代諾者から同意を得ている。
【結果と考察】
咬傷は様々な原因により発症し,また複合的な因子が複雑に絡むことから対応が難しいことが多い。特に間歇的に起こる過緊張や痙攣は予測が困難なので,常に発生に備えた咬傷予防が必要になる。 咬傷を早期に発見し, 治療し再発防止の手段を講じる。また介護においては,患者本人との意思疎通が難しい場合,介護者にもOAの装着や清掃方法を習得してもらう必要がある。また,O A作成に当たって,安全に印象採得を行える状況かどうかの見極めと,不随意運動に対してどこまで固定された装置が効果を発揮できるかが, 重要であることが示唆された。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)