一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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口腔機能-1(質疑応答)

2024年6月29日(土) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-10] 咀嚼プロセスシミュレータを用いたグミの食塊形成に及ぼす人工唾液添加速度と圧縮力の影響

○神田 玲奈1、柿沼 祐亮2 (1. 株式会社 明治 、2. 株式会社ジーシー)

【目的】
 グミは,咀嚼による破断・唾液との混和・体温による融解によって粉砕が進行する。食塊形成に寄与する要因はグミの物性により変化すると推察するが,その要因の特定は困難である。咀嚼プロセスシミュレータORAL-MAPS\オーラルマップス🄬(以下,ORAL-MAPS)は,食塊形成の過程を模擬する装置で,圧縮回数,圧縮速度,圧縮力,人工唾液添加速度等の設定値を自由に設定できる。本研究では,咀嚼能力検査用グミゼリー(以下,グルコラム)の開発に資する基礎的知見の獲得を目的に, 物性の異なる市販のグミ4種を粉砕処理し,取得した物性を比較・解析することで,圧縮力と人工唾液添加速度の食塊形成への影響の推定を試みた。
【方法】
 市販のグミ4種を試料とし,圧縮速度1回/秒,圧縮回数90回に固定し,4種のグミ全てが処理可能な圧縮力(100,200,400,600N),人工唾液添加速度(1.0, 2.0, 4.0, 6.0 mL/min)を設定し,ORAL-MAPSで粉砕処理した。全ての試料で,開始から規定の圧縮回数までの総力積,“噛み応え”を先行研究に基づいて算出した。“噛み応え”と,圧縮力ならびに人工唾液添加速度の2つの要因との関係性を重回帰分析により解析した(α=0.05)。
【結果と考察】
 “噛み応え”に対する,圧縮力ならびに人工唾液添加速度の2つの要因の関連性は試料の物性に依存し,やわらかい試料は圧縮力が“噛み応え”と有意な正の相関を示し,かたい試料は人工唾液添加速度が“噛み応え”と有意な負の相関を示した(P<0.05)。
 この結果は,グミの粉砕処理に影響を与える要因が,グミの物性によって異なることを示唆する。供する試料の物性範囲や設定条件をさらに検討することで,グミの物性制御による,特定の咀嚼能力を検査するためのグミの開発や,咀嚼能力検査から得られる患者の口腔機能に関する考察の深耕への貢献が期待できる。本研究では市販のグミを用いたが,グルコラムは市販グミに比べて非常にやわらかく,本研究で得られた傾向と一致するか,設定条件を最適化したうえで確認する必要がある。
(COI開示:共同研究 株式会社ジーシー)
(倫理審査対象外)