一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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症例・施設-2(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-102] 終末期の在宅がん患者に対し多職種連携による口腔健康管理を行った症例

○関 麻衣子1、古屋 裕康2、福井 智子1、加藤 真莉1、水野 利恵1、深山 治久1、真砂 功1,3 (1. 杉並区歯科保健医療センター、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、3. 一般社団法人東京都杉並区歯科医師会)

【緒言・目的】終末期における口腔健康管理には課題が多い。終末期の在宅がん患者に対してICT(Information and Communication Technology)を活用し多職種連携を図り,口腔健康管理を行った1例を通して,その意義を検討する。本症例報告に対し代諾者の同意を得た。【症例および経過】 60歳代の男性。X年5月下咽頭がんのため放射線治療と化学療法が開始された。X+3年12月,誤嚥性肺炎発症を契機に経口摂取が中止され、胃瘻造設となった。粘性唾液の不快感と歯肉腫脹を訴えとともに,少量の経口摂取希望に基づき、X+4年1月より訪問診療を開始した。初診時,外出は困難であったが日常生活の多くは自立していた。口腔内には欠損歯,う蝕の所見はなく放射線治療の後遺症によるものと思われる口腔乾燥が認められた。訪問頻度は月1回とし,口腔健康管理を開始した。X+4年5月よりADL低下に伴い医科訪問診療,訪問看護,介護サービスを利用し,ICTを活用した多職種連携を開始した。X+4年8月,本人による口腔清掃が困難となり訪問頻度を月2回とした。X+4年9月,がんの再発がみられ、余命数か月と宣告された。病状悪化に伴いICTによる多職種連携の頻度を増やした。X+4年10月より疼痛治療剤(ヒドロモルフォン)の使用を契機に寝たきりの状態となり,主として口腔衛生管理での介入へと切り替えた。酸素吸入による口腔乾燥や不快感が強く,また家族の不安や負担軽減のため訪問頻度を週2回に増加させた。日々の口腔状態や口腔衛生管理の方法を,ICTを利用して周知し,看護師や介護ヘルパーも口腔衛生管理を行った。X+4年11月,死亡確認後,看護師と死後のケアを行った。 ADLが維持されていた期間(254日間)の訪問回数は13回(1.5回/月),ADLが低下した期間(54日間)の訪問回数は14回(7.8回/月)であった。【考察・結論】 終末期における身体機能の変化は著しい。訪問診療の限られた時間だけでなくICTによる多職種連携を図ることは,患者の状態以外にも家族の困りごとや心情の変化の情報収集に有効であり,患者や家族に寄り添った診療を可能にするのに有用と考える。また状態変化に合わせた口腔健康管理を行うことで不快感や苦痛を軽減し,最後まで患者の生活の質の向上に貢献できた。(COI開示:なし,倫理審査対象外)