一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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実態調査-3(質疑応答)

2024年6月30日(日) 10:40 〜 11:40 ポスター会場 (大ホールC)

[P-99] 昭和大学病院 病院歯科における周術期等口腔機能管理の現状と課題

○山口 麻子1,2 (1. 昭和大学病院 病院歯科、2. 昭和大学歯学部 全身管理歯科学講座 医科歯科連携診療歯科学部部門)

【目的】
 急性期病院における医科疾患治療時の支持療法として,入院患者を対象に実施した周術期等口腔機能管理の現状と課題を検討したので報告する。
【方法】
 昭和大学病院,附属東病院にて2023年4月から2023年9月までの間に周術期等口腔機能管理の依頼があった入院患者755名を対象とした。診療録と周術期等口腔機能管理計画書を用い後方視的に調査した。
【結果と考察】
 周術期等口腔機能管理依頼患者は755名,周術期等専門的口腔衛生処置は,合計1504名(重複あり),術前:573名,術後:636名,化学療法:295名であった。気管挿管による歯の脱落・破折の有害事象予防として口腔内装置を必要とした患者は,心臓血管外科,循環器内科,泌尿器科,整形外科の患者が多く,体調不良や社会的背景により歯科受療が中断,口腔清掃状態不良を認めた。
 人工呼吸器関連肺炎,術中・術後の歯の脱落・破折の有害事象は0例であった。
 化学療法による口腔粘膜炎は,歯垢が付着しやすい歯列不正(叢生,舌側・頬側傾斜),半埋伏智歯周囲の歯肉,歯列不正・鋭利な歯質(咬頭・切縁)・不良補綴物と接する舌尖や舌縁,頬粘膜,顎堤粘膜,骨隆起の粘膜に認められた。
 入院の長期化に関与していたのは,術後せん妄,手術部位感染,反回神経麻痺,肺塞栓症,敗血症,感染性心内膜炎,造血幹細胞移植後の移植片対宿主病であり,重度の生活習慣病を有する患者,低栄養患者に重症化を認めた。
 急性期病院における周術期等口腔機能管理のおもな目的は,入院待期期間,入院中に主病に対する手術・化学療法・放射線療法の完遂と緩和ケアとして口腔の感染源を除去,医科疾患治療時の経口摂取を支援,良好な口腔衛生状態を確立,入院中の有害事象を予防することである。 
 良好な口腔衛生状態は,歯科医療者だけでは確立,維持できないと考える。喫緊の課題は,患者・介助者が日常的な口腔健康管理として口腔内の感染症や粘膜疾患のケア方法を獲得し,退院後も継続的な歯科受療の機会を得られる環境の整備である。口腔内の環境を整え,維持することは,有病高齢者,歯科医療者にとって容易ではないが,改善することで安全で良好な栄養管理,主病の再発予防,生活習慣病予防,しいては入院日数の減少や医療費削減につながると考える。
(COI開示:なし)
(昭和大学における人を対象とする研究等に関する倫理委員会 承認番号 2638)