[P1-26] 新型コロナウイルス感染症の流行下における都市空間の恐怖について
キーワード:新型コロナウイルス, 恐怖, 都市, 手書き地図, 質的GIS
本研究の目的は,コロナ禍における人々の都市空間に対する恐怖感情を明らかにすることである.新型コロナウイルスの世界的な流行は人々の場所感覚(sense of place)に大きな影響を与えたものの,その実態については依然不明である.そこで本研究は,質的GIS(qualitative GIS)の枠組みを援用しながら,80名の参加者によるコロナ禍での日常的行動範囲を描いた手書き地図と恐怖体験に関する言説を収集し,それらを統合することで,都市空間と恐怖の関係を検討した.質的GISとは,質的方法と量的方法の混合メソッドに特徴づけられる地理情報科学の方法論である.分析の結果,恐怖の空間パターンが検出される一方で,特定の地区においては矛盾した感情がみられること,その背景には参加者の価値観や空間体験が複雑に関わっていることが判明した.以上を踏まえると,コロナ禍における人々の都市空間に対する恐怖感情は,特定の状況に依存する動態的性質をもつと結論付けられる.