第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O7] 看護教育・看護倫理

[O7-7] わが国におけるクリティカルケア看護師のMoral Distress-質的研究のメタ統合-

○松田 麗子1、明石 惠子2 (1. 名古屋女子大学健康科学部、2. 名古屋市立大学大学院看護学研究科)

Keywords:Moral Distress、クリティカルケア看護師、メタ統合

【目的】Moral Distressとは看護師が倫理的に適切な行動が必要であるのに、様々な制約により信念や価値観を妥協しなければならず、適切な行動ができないときに起こる心理的苦悩である。Moral Distressは看護師の陰性感情を引き起こし、仕事における達成感や患者ケアの質、および職務満足を低下させ離職への影響が問題となっている。そこで本研究は、わが国におけるクリティカルケア看護師のMoral Distressの様相を質的研究のメタ統合により明らかにすることを目的とした。
【方法】クリティカルケア領域における看護師のMoral Distressについて、医学中央雑誌web版を用いて検索した。検索対象の年代を限定せず、キーワードは「集中治療」「救急」「クリティカルケア」「ICU」「Moral Distress」「モラルディストレス」とした。しかし、クリティカルケア看護師のMoral Distressに焦点を当てた文献がなかったため、「困難」「道徳」「倫理」「苦痛」を加え再検索した。その中から倫理的問題について記述されていないものや量的研究を除外し、研究の焦点や研究成果より看護実践や体験について詳細に記述されている文献を選定した。分析方法は、Patersonらのメタ統合の手法に準拠した。対象文献を精読して、①倫理的な状況において看護師が適切だと考える行動や出来事の記述、②適切な行動ができなくなった時に看護師が感じた制約の記述、③①と②によって生じた心理的苦悩の記述、を抜き出し表にした。①②については、それぞれの記述から読み取れる現象を一文にしてコードとし、意味内容の類似性に着目してカテゴリ化した。③については、文脈の意味を損なわないよう苦しい気持ちを一言にして抽出した。そして、①②③の関係を検討し、Moral Distressの様相を図解で示した。なお、倫理的配慮として公表された文献のみを対象とした。また、カテゴリ化のプロセスでは共同研究者間で一致をみるまで討議を繰り返すことにより、信頼性・妥当性の確保に努めた。
【結果】対象となった文献は8文献であった。それぞれの文献を分析し統合した結果、クリティカルケア看護師のMoral Distressの様相が明らかになった(図1)。
【考察】クリティカルケア看護師のMoral Distressは、患者の生命維持と患者・家族の尊厳、看護の質の向上などの看護師が考える適切な行動が、クリティカルケアを必要とする患者、看護師自身、医療従事者、医療体制の状況による制約によって妨げられた時に生じていた。
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