第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会

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一般演題(口演)

[O7] 看護教育・看護倫理

[O7-8] 倫理的問題に対処・行動するために医師・看護師に期待すること

○平井 美恵子1 (1. 東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)

Keywords:倫理的問題、救命救急センター、医師と看護師

【はじめに】A病院ER-ICUでは、看護師の倫理チームが中心となり、カンファレンス開催などを通じ、倫理的問題を語る機会を設けてきた。その中で、患者や医師からの情報不足や患者自身の意思確認の困難さから、治療内容や患者のQOLに関連し「医師と看護師間で認識にずれを感じる」という意見が挙がっていた。患者にとって最善の医療を提供するためには、医師・看護師それぞれに期待することを知り、連携・協働することが重要であると考える。

【目的】医療チームとして倫理的問題に対処・行動するために医師・看護師に期待することを明らかにすることを目的とした。

【方法】対象者は、2018年〜2019年3月31日までにA病院救急科に所属し、医局長より推薦され同意の得られた医師5名とER-ICUに所属し、2017年ラダーⅠ〜Ⅴから各2名の同意の得られた看護師10名が本研究に参加した。調査内容は「倫理について」「チーム医療」「医師・看護師の協働・連携」とし、半構成面接を実施した。同意を得て、録音されたデータから逐語録を作成し、「期待すること」について抽出し、コードを作成した。誰が、誰に対し期待することかでコードを分類し、その後内容の類似性に基づきカテゴリ化を行った。本研究は、所属大学倫理委員会の承認を得た上で実施した。

【結果】「期待すること」について、以下、[分類]《カテゴリ》<コード>を用いて示す。[医師が医師へ][医師が看護師へ][看護師が医師へ][看護師が看護師へ][チームとして]の5つに分類された。医師、看護師は互いにコミュニケーションの充実を期待していた。医師は看護師に対し<患者背景を知っているため連携をして欲しい><患者本人の言葉を拾って欲しい>など《患者・家族の情報発信やサポートをして欲しい》と期待していた。看護師は看護師に対し、《患者・家族の仲介役》となり《インフォームド・コンセント(以下、I.C)の調整や共有をすると良い》と答えていたが、看護師は医師に対し<中立的なI.C>や<わかりやすいI.C>を期待し、《患者・家族の対応をして欲しい》答えていた。チームとして、《情報共有をする》や、《同じ思い、同じ方向を向いて役割分担をする》と良いと答えていた。

【考察】救急領域では、突然の発症や刻々と変化する患者を前に動揺し、時間的猶予がないために、医療者主導のI.Cになりやすい。看護師は、医師に対し<中立的なI.C><わかりやすいI.C>を期待しており、医師と患者・家族間の病状理解や治療内容についての認識のずれを感じていると思われる。医師は看護師に対し、患者のQOLや意思についての情報発信を期待していた。医師・看護師ともにチームとして連携・協働するために、情報共有を期待しており、コミュニケーションに改善の余地があると感じる。意思決定支援においてチームでの判断や話し合いのプロセスが重要であるとされている。カンファレンスなどで医師は、《情報共有》や《同じ思い、同じ方向を向いて役割分担をする》ことを期待し、看護師は他職種との連携を期待していた。医師はチーム医療のリーダー、看護師はコーディネーターの役割を担うと言われている。他職種と関わる機会が多い看護師は《患者・家族の仲介役》だけでなく、チーム医療の調整役として役割を果たすことが期待される。他職種とともにカンファレンスの目的や目標を共有することは重要であり、倫理的問題に対処・行動するための方策であると考える。患者の入退室の多さ、時間やマンパワー不足の中で、医師・看護師が期待する役割を互いに発揮するための環境を整えることが今後の課題である。